〜双子姉妹の前世〜
(プロローグ)
私たちは生まれてからずっと一緒に生きてきた。
双子の姉妹として生まれてから15年間
お互いに助け合いながら暮らしていた。
そう、2人のうちの片方が倒れるまでは・・・
〜姉の場合〜
私は長女の如月亜莉奈。
年齢は15歳で、今年から高校1年生。妹と同じで、
家から近い公立の学校に進学したんだけど、
最近とても忙しい。なんでかというと、
両親が仕事で出張していて、家にいないから、
私と妹で家事を分担しているのが理由だ。
それに加えて私は運動部に入っているから、
毎日ほとんど休む時間がない。でも、
だからといって妹に負担をかけるわけにはいかない。
実は、妹は生まれつき心臓の病気を患っていて、
身体が弱い。そのためもし妹に家事を
全て任せようものなら、妹が倒れてしまう。
それは嫌だ。それに妹は身体は弱いが、
それ以外の面で私を助けてくれている。例えば、
勉強面などだ。私は理系科目はそこそこ出来るが、
文系科目が全くできない。とにかく覚えるのが
苦手なのだ。そんな私のために妹は、覚えるポイント
を最小限に絞ったノートを作ってくれる。
そのおかげで、テストでもどうにか
赤点を回避することが出来ている。
他にも、美術や家庭科などの器用さを
必要とする科目が苦手なのだが、
妹が手伝ってくれるお陰で、なんとかなっている。
このように、私は、
いつも妹に助けられているのだ。そんなある日、
ついに妹が倒れてしまった。私は、急いで病院に
駆け付けたが、状態はかなり悪く、まだ意識が戻って
いなかった。医者からは、「意識が戻ったとしても、
これからずっと、病院で過ごさなければいけない
かもしれない」と言われた。
そこで問題になってくるのは、高額な治療費だ。
もちろん両親は働いているが、稼ぎがいいとは
いえない。加えて夫婦仲が悪いため、
出張という名目を使って、あまり家に帰ってこない。
だから、こうなったら私が頑張る他ない。
そう思った私は、いくつものバイトを掛け持ち
して働いた。学校から帰ったらバイト。
夜遅くまでバイトして、家に帰り、
少し寝たら早朝バイトに向かう。
そんな生活を続けていたら、私も倒れてしまった。
すぐに発見されれば、過労だけで済んだのだが、
一人で家にいた時に倒れてしまったため、
発見されるのに時間がかかり、
近所の人が発見した時には餓死していたらしい。
それを聞いた妹も、精神的に大きなダメージを負い、
心臓に負担がかかり、ショック死してしまった
みたいだ。こうして私達の人生は
終わりを迎えたはずだった。
〜妹の場合〜
私は次女の如月渚。
年齢は15歳で、今年から高校1年生。
お姉ちゃんと同じで、家から近い公立の学校に
進学したんだけど、あまり学校に通えていない。
その理由は、私は先天性心疾患を患っている
からなんだ。だから体調が悪い日は学校に
いけなくて、家でリモート授業を受けたり、
病院に受診している。そんな私は、
いつもお姉ちゃんに助けられてばかりだ。
まず、学校にあまり行けてないからクラスメイトに
ほとんど覚えられていない。だから、
学校に行っても話せる友達がいなくて、
居場所がなくて辛かった。でも、
お姉ちゃんが率先してグループの輪に
引き入れてくれた。もちろん最初は、
他の子たちは嫌がっていたけど、お姉ちゃんが
「私の大切な妹なの、だからお願い!」
といって説得してくれた。それがきっかけで、
私はクラスメイト達と打ち解けられた。
体調が悪くて学校に行けない日も、必ず連絡が
来るようになった。その内容は、
私の体調を心配するもの。
他には、今日クラスであった面白い出来事や恋バナ、
ちょっとした悩み相談など様々だった。
正直内容はどんな事であれ、連絡してくれる事
が嬉しくて、私は学校が、今のクラスが
好きになっていった。でも、そんな私の思いとは
裏腹に、私の体調は徐々に悪くなっていった。
そのため段々と学校へ行ける頻度が減っていた。
3日に1回、1週間に1回、10日に1回と少しずつ、
でも確実に・・・しかし、そんな生活も
長くは続かなかった。理由は私が倒れて入院して
しまったから。そして、目が覚めた時にお医者さん
にこう言われた。 「状態がかなり悪いので、
今後は病院で入院生活を送ってもらう事に
なるでしょう。」その一言は私の心に深く刻まれた。
もう学校に行けない、もうクラスメイトに会えない、
そう思った瞬間涙が溢れ出した。加えて、
心の声も抑えきれなくなって、
「もう学校に行けないなんて嫌だよ!」
「もっとみんなと一緒にいたいよ。」
と叫び続けていた。でも、その時に病室のドアから
ノック音がして、次の瞬間には、学校のクラスメイト
達が花束を持っている姿が見えた。その中には、
お姉ちゃんもいて、「渚、早く良くなってね。」
と言って花束と寄せ書きをプレゼントしてくれた。
私はその事がとても嬉しくて、きっとすぐに
退院出来る、そしてまた学校に通えると
信じることにした。しかし、その時の私は
自分達の置かれている状態を理解できていなかった。
その事に気づいた時には、もう手遅れだった。
それから数ヶ月後のある日、
いつもお世話になっている看護師の方から、
信じられない言葉を聞いた。
「あなたのお姉さんの遺体が先程発見されたそうよ。
家の中に倒れていて、救急車が到着した時には
もう・・・」
それを聞いて私は、「え?嘘でしょ、
お姉ちゃんが死んだなんて嘘だ。」
そう思いたかったが、実は思い当たる節があった。
お姉ちゃんは、ここ10日くらい、
私のお見舞いに来ていなかった。それも
不自然だったし、最近のお姉ちゃんはとても
やつれていた。顔色はわるく、とても疲れ
きっていた。「もしかして、私のせいなんじゃ?」
きっとそうだ。疲れきっていたのは、
学校が忙しかったからじゃなくて、働いていたんだ。
私の治療費を稼ぐために。
そう気づいた瞬間、胸が抉れるような痛みが
襲ってきた。涙が止まらない、後悔しても
しきれない。呼吸が、動悸が乱れて
どうにかなってしまいそう。
「くるしっ、視界がぼやけて意識が・・・」
そう感じた時にはすでに私は生死の境を
彷徨っていた。懸命に呼びかける医師の
声は聞こえていたが、私の心を繋ぎ止め
られはしなかった。
「お姉ちゃんがいないなら、
私が生きてる意味なんてないよ。」
そう考えたのを最後に私は命を落とした。
こうして私達双子は人生を終えたはずだった。
今回の話はここまで。次回をお楽しみに!