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訣別の壁
ハルバードによって死地を逃れたラジックはガブリエラたちが乗っている浮遊物体を見上げていた。
「聞こえるか!魔法王の弟、ラジック・リスティークよ!」
その声に、ラジックは体を震わせた。この声は、ガブリエラのものである。
「我が名はガブリエラ・スチュワート。その気があるなら、私を殺しに来い」
声の方向を見て、ラジックは言葉を失った。
そこには、光る壁とでも言おうか、真っ白な壁ができていた。
「貴様の復讐の道は長く険しいものになるだろう。今日ここで死んだ方がマシと思えるほどにな」
5人を乗せた浮遊物体は、さらに高く昇っていく。それに伴い、白き壁もどんどんと高さを重ねていく。
「我々は、今ここに、ミラセア魔法王国を国とは認めずに、永久に不干渉とすることをここに宣言する。ミラセアの四方を囲むこの白き壁を『訣別の壁』とし、ミラセアとの完全別離の象徴とする」
ガブリエラの声は、ミラセア全土に、そして世界各国へと響いた。人類の脅威となる魔法の力は、今ここに、この大陸のみに封印された。
ラジックはその声を、その壁を前にしながら、茫然としていた。