襲撃
ラジックは、自室の窓から、赤い閃光が走るのを見た。その赤い閃光の後に、大きな轟音と、揺れが始まった。
「何⁉地震⁉」
揺れはさらに大きくなるが、それは地震ではなかった。窓の外に目を向けると、街が炎に覆われていた。
「火事⁉何がどうなってるの⁉」
ラジックは部屋を走り出る。今の状況が全く理解できなかった。
「ラジック!」
「兄さん!父さん」
城内を走っていると、地下牢から上がってきたハルバードとカーリアンと鉢合わせした。
「何がどうなっているの⁉」
ラジックはパニックになり、目に涙を浮かべていた。
「大丈夫だ、ラジック。落ち着け。お前は城外へ避難しろ」
「待ってよ!説明してよ!何が起こってるの?何で兄さんが不審者背負ってるの?わかんない、わかんないよ」
ラジックはその場にうずくまった。城の外からは叫び声も聞こえ始めた。ハルバードは背負っていた男をカーリアンに渡し、うずくまるラジックに視点を合わせた。
「聞け。ラジック」
泣きながら、ラジックはハルバードを見た。
「この騒動は、魔法王ハルバードの名において、私が治める。だからお前は、安心して外で待っていろ。お前の兄は、最強なんだから」
ラジックの頭に、ハルバードは手を乗せた。
「魔法王様……先代様……坊ちゃま……」
声の主は、ホーマだった。しかし、その姿に三人は目を丸くした。
「ホーマ……お前、そのケガは……!」
ハルバードはホーマに近寄る。その顔は、半分焼けただれ、痛々しい状況だった。ハルバードは杖を取り出し、唱える。
「エルフ!リカバリー!……応急処置にしかならないから、後でちゃんと治療しろ……」
「ありがとうございます……。いえ、魔法王、聞いてください。屋上に、不審な人物たちが……」
そう言って、ホーマは意識を失った。
「ラジック。ホーマを連れて早く城の外へ。父さんは街の火を消すのに全力を注いで。助けられる人は、全員助けるんだ」
「ダメだよ、兄さんも一緒に……」
「私は上に行く」
「そうだ、ハルバードよ。お前は魔法王になったばかり。ここは私が……」
カーリアンも止めに入る。
「ダメだ。魔法王の加護がなくなった父さんに何とかできる相手じゃないだろう。それに、父さんの方が街の形態をよく知っている。消火活動は父さんに軍配が上がる」
カーリアンはしばし沈黙し、意を決する。
「必ず帰ってこい」
「もちろんです」
ハルバードは屋上へと走り出した。