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浮遊大陸

ガブリエラの言葉を自分の中で反芻するうちに、ラジックの中で引っ掛かりが芽生えた。


「待て……。国を守るって、この国はどこかから攻撃を受ける可能性があるのか?」


「大いにある」


「なぜだ?ミラセア以外の国で、魔法を敵視し、滅ぼそうとしてきたんだろ?だとしたら、ミラセア以外は全員仲間じゃないのか……?それに、魔法を防ぐためにあんな壁まで作ったのに、魔法が欲しいなんておかしいところばかりじゃないか」


「復讐者相手によくそこまで口が利けるな」


ガブリエラは面白そうにラジックを見る。


「……俺は、ミラセア王国の長だ。外の世界について情報を持って帰ってくるのも、俺の仕事だ」


「そうか。ならば教えてやろう。最初にミラセアを隔絶したのは、無論、魔法の流出を防ぐためだ。世の理から外れた力だからな。当然だ。このミラセア隔絶というのは、世界各国の意志だった。しかし、それはミラセアを隔絶するまでの話。次に世界の標的になったのは、ミラセア隔絶計画の最前線に立った5つの国」


「パスクワラ・ノアの率いる『永久楽園』ナピス共和国

 ヴラジミル・グーバレフ率いる『鉄血要塞』ソリザ基地国

 レーライ・ウン率いる『未来都市』ニーチェイ

 ジューベー・オニヅカ率いる『監獄冥界』パンジュ帝国

 そして、我、ガブリエラ・スチュワート率いる『浮遊大陸』デナルグ連邦の5つの国だ」


ラジックは、直接相まみえていないものの、今発せられた5人の名前が、自分の国を陥れた、復讐するべき人物らだと感じた。


「……え?浮遊大陸?」


ガブリエラの言葉に、ラジックは引っかかった。


「いかにも。我々デナルグ連邦は、貴様らミラセアから奪った『飛行結晶』により、島の浮遊を実現させた。浮遊している分、他国からの攻撃は少ないが、それでも、この飛行結晶を狙って他国はやってくるのだ」


ラジックは窓を開けた。が、もちろん、ここから見える景色で、浮いているかの判断など、できやしなかった。


「本当に、浮いているのか、この国は?」


「ああ。浮いているさ」


同じく窓の外に目をやるガブリエラ。


「そうか、ここに飛行結晶があるのか」


ラジックは再び、ガブリエラを向く。


「この際だ。お前の首は堪忍してやる。代わりに、飛行結晶を返せ」


「断る。と言ったら?」


「お前の首を切ってから奪い返すまでだ」


「ならば答えは一つだ。断る」


瞬間、ラジックはガブリエラの手元をはじき、杖を奪い返した。そして杖を、ガブリエラの喉元へ突きつける。


「俺が呪文を唱えればお前の首はなくなる」


「貴様が呪文を唱えた瞬間、我が眷属エフェメラル・ドリームが貴様を焼き尽くす」


浮遊する物体の名前は、『儚き(エフェメラル・)(ドリーム)』といった。二人に膠着状態が続く。


先に態勢を解いたのは、ラジックの方だった。


「まだ聞きたいことが多く残っている。それを全て聞いてから、お前を殺す」


「奇遇だな。私も、貴様から魔法の使い方を聞かないと殺すに殺しきれん。もっとも、今この場で四肢だけ焼き尽くすというのも悪くないがな」


ガブリエラも『儚き(エフェメラル・)(ドリーム)』を待機させた。


「貴様は、今日より我が下僕として、この城への滞在を許そう。仕事内容は先のカラムとファララに聞け。以上だ」


「下僕だと⁉ふざけるのも大概にしろ!」


「ふざけているのは貴様だ。忌むべき民、ミラセア人がこのデナルグ連邦で生きていけるのか?貴様は、私の命令一つで首が吹き飛ぶ身だ。身の程を知れ!」


ガブリエラはそう言うと、部屋を出て行った。代わりに、外で待機していたカラムとファララが入ってきた。


「そういうことだ。貴様は生かされているということを胸に刻め」


カラムという名の男は、浅黒い肌をしており、眼は黄色く光っていた。ラジックの拳を止める屈強な力こそあるものの、その体躯は引き締められて、むしろ痩せている印象を醸し出している。


「王女様への数々なる無礼。本来なら極刑となるべき行為です。王女様の寛大なお心に感謝してください」


ファララという名の女は、ガブリエラに劣らないほどの美貌の持ち主だ。洗練された動きは無駄がなく、さらには、彼女の視線は、凍てつく氷とでもいうように、見た者の背筋を凍らせるほどの鋭さだった。


「俺はお前たちに恨みはない。だから、殺す理由もない。しかし、慣れ合う理由もない」


ラジックはカラムとファララに対し、線引きの目線を送った。


「奇遇だな。私たちとて、貴様と慣れ合う気など毛頭ない。だが――」

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