旅立ち。そして…
6年後――。
「本当に行ってしまわれるのですか?」
火傷の跡がいまだに残るホーマが言う。
「ああ。俺はあいつに、ガブリエラ・スチュワートに復讐しなければならないんだ。そして、王冠と、奪われた宝具を取り戻して、ミラセアを国家として復活させる」
ラジックは魔法で強化した飛行艇に乗り込んだ。この飛行艇は、皮肉にも自分たちを襲った6年前の出来事から着想を得たものだった。
「どうか、お気をつけて」
「大丈夫。優秀な騎士団の選抜メンバーも一緒だ」
ラジックの背後には、頼れる屈強な男たちがいた。
「ちょっと!私も連れて行きなさいよ!」
現れたのは、ヨハネだった。
「ヨハネ……!お前も来るのか?」
「そうよ?悪い?」
「辛いだけかもしれないんだぞ……?」
「6年前から辛いわよ。それに、この先の辛さを、私も一緒に背負っていきたい」
ヨハネの目には、覚悟が映っていた。
「そうか。じゃあ、乗り込め!」
「ええ!」
ヨハネとラジックが乗り込む。
「目標、ガブリエラ・スチュワートが治める、デナルグ連邦!行くぞ!」
「おう!」
ラジックたちは、『訣別の壁』を超え、ついに、国外へと旅立つのだった。
「……魔法王!何か、来ます!」
「何だ⁉」
「これは……ロボット⁉」
突如、爆発音がする。
「罠を仕掛けてあったのか……。避けられるか?」
「魔法障壁で何とかなりますよ……!」
しかし、再び爆発音と揺れが起こる。
「まずいです!飛行艇左翼破損!機体バランスが歪んでいます!どなたか、魔法で修正を!」
「俺がやる!」
ラジックが自らに強化魔法を掛け、左翼の修正に向かう。
「な、なんだこれは……⁉」
機体の外に出たラジックの目に映ったのは、無数のロボットの姿だった。
「これが、外の国の力だってのか……⁉」
ロボットは次から次へと光線を放つ。
「右翼破損!だめです!墜落します!」
「全員!身体強化と防御、加護の魔法を!死ななければ問題ない。各自、生きることを最優先に!」
「了解!」
しかし、魔法を唱える時間もないまま、凄まじい轟音とともに、飛行艇は爆発した。
●
知らない天井が、そこにあった。
(どこだ、ここは……)
あたりを見回す。自分が寝ていることに気付いた。
(城か……?いや、城にこんな部屋はない。いや、待て。俺は確か、飛行艇で外の世界に出て、墜落して……)
「起きたか、復讐者」
そこには、長い金髪をまとめ上げ、白いワンピースに身を包んだ、美しい女性の姿があった。
「久しいな。6年振りか?」
ラジックを見て、笑いかける。
「ガブリエラ・スチュワート……!」
6年間恨み続けた女の姿が、そこにあった。
これにてプロローグ終了となります。次話からが本章です。




