エピローグ 〜ウルフギャング杯〜
「オーディエンスの諸君!
ついに!ついに!
マスターブレード、ウルフギャング杯・決勝戦の幕開けだぁぁぁぁ!!」
バトルレフリーのひと言で、会場皆ボルテージマックスとなる。
いまや、中高生に爆発的な支持を得ており、圧倒的な人気を博している対戦型コマ遊戯、通称マスターブレード。
マスターブレード(以下ブレード)とは、簡単に言うとお正月に回すコマ遊びを、令和バージョンに改良したものである。
性能は、昭和のコマとは比べ物にならず。
相手のブレードに衝突しなければゆうに10分は回り続けるし、きらびやかなLEDで煌めき、所有プレイヤーの声に合わせて相手を迎撃する。中には空中を駆け巡る機体もある。
その決勝の舞台に、俺こと、たくは立っている。
右手の人差し指、第一関節の力は抜けているか?
いつものルーティンの入口に立つ。
「両者準備はいいかい!?」
レフリーの目配せを受け、右手にもつ相棒にぐっと力が入る。人差し指と中指のバンテージに血が滲んでいるが、不思議と痛くはない。
眼前の対戦相手。
すなわち、司の顔をぐっと見つめる。
浅黒い肌、意志の強い眼差し、薄い唇、高い鼻。
その薄い唇の端を上げて、ニヤリと笑う。
中学三年生で、俺よりも年下というのに、迫力を感じさせる。
後ろから、雑音・騒音よりも聞くに値しない、雑言が投げかけられている。
「たくもういい!棄権しちまえ!」
「たく戦うのはもう辞めて!
私、貴方のことが好きなの」
もちろん二人の言葉には耳を貸さず、立ち位置に着いた。負けることは許されねえ。
そして、やっと、終われるのだ。。。。。
おやっさんは、嘆き。
優子は、目に涙を浮かべている。
「両者ブレードを構えろっ!
そして3カウント数えた後に、互いの相棒を射出し てくれっ!!」
少しだけキーンとマイクがハウリングする。
全国大会ということもあり、ホビー大会でありながらカメラが数台入ってる。観客は300人程入っているらしい。
ドローンカメラが、俺と司の顔の周りを、グルグル回る。
「さんっ!」
大丈夫いつも通りシュートすればいい。と自分に言い聞かす。
会場の照明は、暑いほど眩しく、手汗がジンワリと浮いてくる。辺が無音になる。自分が集中に入りつつあることを実感する。
「にーっ!」
司と目が合う。
「たくさん、覚悟は出来たかい?」
冷ややかに言ってくる。
「お前こそ」
俺は吐き捨てるように返した。
「いちっ!」
両者はコロッセオへ意識を下ろす。
「たく貴方は、貴方は、、、」
優子が、コロッセオの下から、もどかしそうに言葉にを詰まらせている。
「GOOOO!!」
司・たく「「うおおおおおおおおおっ!」」
「貴方は今年30歳なの!!!!!!」
戦いの火蓋は切って落とされた。儚くも健気に。