第1章 変化1
その日、私はいつものように薬を作っていた。
まずは傷薬の調合、風邪薬、湿布薬などを作っていく。
この時間が1番幸福だった。
一日の中で最も充実していると言える。
何も考えなくてもいい。
黙々と薬が積み上がっていく。
いつもならこの間に何人かお客が来ることが多いが、
この日はさっぱりだった。
近頃、人間の国同士で領土争いをしているらしい。
そのせいでこの町からも人が減ってしまったらしい。
特に男手がなくなってしまったらしく、女性や老人たちが嘆いていた。
この町は冒険者の男たちで成り立っているから。
人と人で殺し合いをするなんて…と思う。
でも私たち魔女も同じように争いを起こすことがある。
自分の力を示すため。
もっと力が欲しい。
いつだって生物は自分の欲に忠実なのだ。
人の形をとっていれば魔女も人間も同じだろう。
私は大きくため息をついた。
そしてまた何も考えなくていいように薬作りに没頭した。
昼過ぎになって1度、休憩しようと立ち上がる。
その時、店の前にふらりと人影が見えた。
力なく見えた人影はすぐにぐらりと傾いて、
ドンッ
という音と共にその人影が地面に倒れ伏した。
ー 全てはここから始まった。