第1章 追憶2
ー とは言っても、魔女として生きると決めた私が魔女の世界で受け入れて貰えるのかと言われればそうではなかった。
けど、この時の私は覚悟を決めなければまた逃げてしまいそうだったから。
だから私は“水の魔女”と名乗るようになった。
人間達からは受け入れられられず、魔女達からは半端者と言われた。それでも私は、どこの世界の誰にも認められなくてもこれから生き続けていく。
1人でも、老婆に教わった術と薬で生きていけると思ったのだ。
あの日、追い出された時の私は何もなかった。
ただ魔力を持ち、その魔力で水を少し操る程度だった。
だが、老婆に出会い魔法を教わり生きる術を学んだ。
昔の私とは違う。
誰にも認められなくても、味方がどこにもいなくても、今の私なら生きていけると思った。
魔女の世界を抜け、人間の世界に戻った私は少し大きい町を探した。
小さな村では余所者は受け入れられず、人と違うことを認められない。
だから、余所者でも受け入れてくれ、店を開くことを許してくれるような所を探した。数は少なかったが冒険者が多い町『サーリ』という所は私のような余所者に薬屋を開く事を許してくれるような町だった。
魔女だと言うことはもちろん伏せた。万が一がある。
育った村で薬の作り方を教わったと言えば信じて貰えた。
冒険者が尋ねて来ることがあれば出来るだけ優先して薬を販売する事を約束し、私はサーリで薬屋を開いた。
初めは信用もないため人は来なかった。
だが、たまたま店前で転んだ子どもに傷薬を渡し、その評判を聞きつけた近くの人が来てくれるようになった。
今では、冒険者も通うそこそこ有名な薬屋になった。
薬を作る事も好きな私は傷薬だけでなく風邪薬、頼まれれば狩り用の毒薬や惚れ薬を作ることもあった。
平和で穏やかな日々だった。
日常を壊したのは、人間でも魔女でもない存在だった。
ここまで1日ペースで来れていますが、次は少し遅くなりそうです…