第2章 鬼ノ国
窓から飛び出すとすぐに空気を操り、宙に浮く。
そのまま振り返ることなく国の端に向かって動く。
見たことの無い景色だった。
家の形や灯りも今まで見たことの無いものだった。
こんな状況じゃなければゆっくり観光したかったのに。
「…っ2度と来ないわ…こんなとこ。」
唇を噛み締め宙を飛び続ける。
また知らない所に行くのは怖いが仕方ない。
あの鬼に見つからない所へ。できるだけ遠くへ。
暫くすると国の端だろうか門のような物が見えてきた。
恐らくそこが国境になるのだろうと思いそのまま飛ぶ。
ー もう少し。
門番であろう鬼が空を見て声を上げた時にはもう門を超えているとそう確信していた。
「帰す訳には行かない。」
いつの間にか目の前にあの男の鬼が立っていた。
「どうして!」
氷を溶かしてそれから追ってくるにしても早すぎる。
そんな事を考えていると鬼がゆっくりと近づいてきた。
すぐに飛ぶのをやめて地上に降りる。
ざわざわと周りがうるさい。
いつの間にこんなに集まっていたのか。
見せ物じゃないんだからどこかへ行って欲しい。
鬼が同じように地上に立ち、また近付いてきた。
まっすぐにこちらを見ている。
「逃がしてやれない。お前でないとダメだ。」
距離を取りながら、鬼を睨みつける。
「私の血が、魔力がそんなにお気に召したの?屈辱だわ
。」
私はまた選択を間違えたんだ。
鬼が倒れていた。助けるか悩んだ。
助けないことだってできた。こうなる可能性があったから。
また子どもの時と同じだ。
たまたま魔力持ちに生まれて、それを見せてしまった。
今回だってそう。
たまたま倒れているのを見つけて、血を飲ませて、
それが魔女だった。
私はいつもそうだ。
偶然が重なって全て崩れていく。
何にも流されたくないのに。
自分の意思で動いて、生きていたいのに。
いつも、自分の行動が全てを壊す。




