第2章 鬼ノ国
名前を呼ばれた気がして、ゆっくり目を開ける。
「…っどこ…ここ…。」
知らない天井に知らない景色だった。
そして、服も見たことないものに着替えさせられていた。
自分の置かれた状況を思い出す。
私は…あの鬼に…
「!!」
ぶわりと嫌な汗が流れ落ちる。
ここは、恐らく… ー
「目が覚めたのか。」
ガラリと扉が開いて、見知った姿が目に映る。
あの、赤い瞳の鬼だった。
思わず、感情が爆発した。
「あなた!…っどういうつもりなの!?」
「無礼な!!この方をどなたと心得る!!」
私の言葉を遮ったのは女の鬼だった。
赤い瞳の鬼の前に出てきて私をじっと睨む。
「知りません。知りたくもありません。」
ヒヤリと空気が凍った。
“水の魔女”と女の鬼との間に火花が散る。
急に意識を奪われ、目が覚めたら知らない場所にいて
今どんな思いでいると思っているのか。
久しぶりに感情が揺さぶられていた。
「やめろ。これは俺に非がある。」
“水の魔女”と女の鬼との間を制したのは赤い瞳の鬼だった。
「しかし…!」
「いい。お前は下がれ。」
未だ何か言いたげな女に首を振った鬼は私を見つめ、
「何も言わず連れてきて、すまなかった。体は大丈夫か?」
「さっさと返してください。」
鬼を睨みつけたまま会話を拒絶する。
「それは出来ない。君には俺の妻としてここにいてもらう。」
「は…?」
この鬼と関わると良くないという私の中の警報は正しかった。
そして、今すぐにでも今までの日常を返して欲しいと心の底から思った。




