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夢想
久しぶりに夢を見た。
小さい頃、まだ魔力があると村のみんなに知られていない頃。
私は何も知らない、幸せな子どもだった。
「〜!」
名前を呼ばれる。
振り返ると両親が笑顔で手を振っていた。
「お父さん!お母さん!」
笑顔で2人の元に走り出す私。
本当に、幸せだった。 ー そう思っていた。
「出ていけ!!」
笑顔が消え失せて、恐怖に歪んだ顔に変わる。
私の中で1番新しい両親の顔だった。
「…私は…っ!」
叫ぼうとした声が消える。
叫んだ声は何一つとして言葉にならなかった。
どうしたって変えられない過去だった。
何も変えられない。
誰も、私の名前を呼んでくれない。
捨ててしまった私の名前。
魔女の世界に入ってからは決して知られてはいけない名前。
でも、もしも……誰かが呼んでくれたなら。
「“水の魔女”」




