甘い日々を
トンネルの外へ、
もうすぐ出ようとしている。
外の様子がわかりそうで、
少しほっとして、
ホルダーのアイスコーヒーを
手に取った。
左手のハンドル、右手のカップ、
口の中のストローが、呑気に
夢を描く。
甘くないな……
砂糖を入れておけば良かったと、
脳が訴えてきた。
そんなことを言われても……
運転はそんなに好きじゃない。
運転しなければ、
時間は、もっと自分だけの
ものになるのだから。
アイスコーヒーだって、
甘くできる。
忙しい日々、切り替わらない日々に、
一つでも見つめたい、
少しでも味わいたいと、
まだ見ぬ甘い日々を探している。
信号が変わった。トンネルを出る。
また無為な運転が始まる。
甘くないアイスコーヒーだけど、
もう一口吸っておこう。
空が見えると思った。
そうか、空は夜に覆われていた。
日が短くなっていた。
もう秋の甘い夜だろうか。
まだ夏の苦い夜だろうか。
空のカップをホルダーに戻して、
安全運転、まっすぐ前を見た。