卒業式
今日は、高校の卒業式。高校には何も未練もない。嫌な思い出しかない。今日で高校生が終わる。
「やっとだ。やっと、この地獄の世界から解放される。」
しかし、最後とはいえ、今日もあいつらの顔を見なければならないため、学校には行きたくない。僕は、重い足取りのまま、朝ごはんも食べずに家を出た。
外は、雨が降っており、みんな傘をさしている。だけど、僕は傘をささずに学校へ向かった。傘をさして、学校に行くと、あいつらに壊されてしまう。傘をさしていないのは、僕だけで、周りからは変な目線を浴びている。
学校へ着いた頃には、びしょ濡れになっていた。学校に着くと、トイレへ駆け込み、リュックからタオルを出して、体を拭いた。靴下もびしょ濡れだったため、靴下を脱ぎ今日は裸足で過ごすことにした。雨の日は、いつもこんな感じだ。こんな僕をみんなは気持ち悪がっている。だけど、僕だって濡れたくて濡れているわけではない。あいつらのせいだ。
いじめられているということは親には一切話していない。親には、心配をかけたくない。父さんは、僕が生まれてすぐに自殺をした。母さんがいうには、父さんは会社で上司からいじめにあっていたらしい。昔、僕が母さんになんで父さんがいないか質問をした時に母さんが泣きながら教えてくれた。父さんは毎日会社の上司から父さんだけ大量の仕事を渡され、できなかった際は、殴られたりしたらしい。僕は母子家庭で育った。母さんは僕のために毎日朝から晩まで働いて高校まで行かせてくれた。そんな母さんには、僕も父さんと同じくいじめにあっているなどとは口が裂けても言えない。
今まで受けてきたいじめは、暴力的なものから、恥ずかしいことまで様々だ。
中学生の頃は、下校中に川に落とされて溺れたことがある。そのときは、近所の人が溺れているのを発見して、警察に通報してくれた。近所の人が発見してくれなかったら、きっと僕は死んでいただろう。母さんもすごく僕の心配をしてくれたが、僕は転んで川に落ちたと適当に嘘をついた。次の日、学校へ行くと、僕はクラスの笑い者にされていた。誰も僕を心配する人などはいなく、僕を川へ突き落とした奴らは、
「死ねばよかったのに」
と言った。僕は非常に腹が立ったが、何もすることが出来なかった。学校の先生も、僕がいじめられていることは知っていたと思うが、何も助けてくれなかった。
僕は、トイレから出ると、教室へ向かった。今日は卒業式だからか、卒業生たちは、後輩たちに囲まれたり、友達同士で写真を撮りあったりしている。
僕をいじめている主犯格たちも、後輩に囲まれていて、楽しそうに笑っている。
「僕をいじめておいて、呑気だなぁ。復讐してやるからな。」
誰にも気づかれない声で、呟いた。
教室に着くと、特に何もすることがなかったので、席に座って、卒業式が始まるのをただひたすら待っていた。いつもなら、教室に入ると、あいつらが何かしらいじめてくるが、今日は僕に構っている暇はないらしい。僕にとっては、非常にありがたい話だ。しかし、みんな高校最後の日を楽しんでいる。僕にとっては、高校は地獄のようなもので何が楽しいのか全くわからないが、みんなにとっては、楽しい場所だったらしい。
卒業式は、体育館で行われた。体育館には、たくさんの親が来ていて、母さんも仕事を休んで卒業式に来ていた。多くの親は、子供の晴れ姿を見に来ていたが、僕にとっては、卒業式になんも特別な感情を抱いていなかった。だから、母さんにはわざわざ僕のために来て欲しくなかった。
卒業式は、2時間ほどで終わり、その後教室に戻り、みんな先生のありがたいお話を聞いていた。泣いている人たちもいたが、僕にとっては意味がわからない。僕が、いじめられていることを知っていたにもかかわらず、何も助けてくれなかった人の話など聞いても意味がない。
卒業後は、進学する人や就職する人など、皆様々である。しかし僕は、就職も進学もしないで、遠くの田舎で一人で暮らす予定だ。母さんには反対されたが、無理やり決めたのだ。お金に関しては、アルバイトなどをしてなんとかするつもりだ。
僕には、やりたいことがあるのだ。それは、僕をいじめてきた奴らの復讐だ。僕をいじめていた奴らはクラスでは中心メンバー。つまりクラス内においては、権力者だった。彼らがやることはクラス内では、ルールとなっており、絶対だった。僕は、彼らみたいな強者がいない、理想郷を作りたい。だから、強いものは皆排除しようと思う。