風を受けて旅人は歩く
――――白月が落ちて10年後
「本当に行っちまうのか!?」親友にして悪友の驚きの声が耳を劈いた。
「そうだって………うるさいなあ、もう」
「やっぱりなー、授業毎回サボった程のお前なら何時かそうなるんじゃないかと俺は思ってたぞ」
うんうん、ともう一人の悪友が頷く。
「そりゃそーだ!!外への期待とか色んなものごあったからな!!!」
言われて返した、夢見る若者の言葉。
其の言葉を出した青年は――サザ、と云う名前だった。
「でもなあサザ、外は危険なんだぜ」
涼し気な顔を浮かべて呆れ返る悪友の一人は外の危険とサザの愚かさを冷たく見つめた。
「分かってるよそんな事はさ。リオンはちょっといい加減だよな昔っから」
「そうだそうだ、お前は妙に突き放してるんだよ!!」サザの後ろに隠れながらリオンに抗議をする。
「……お前が喧しいからだろ」
「はぁー!?俺の所為だって言うのかよぉ!!!」
サザを余所に小さな口喧嘩が始まるが、付き合いの長い間柄だからこそフランクに出来るのかもしれない。
サザの悪友であるリオンとライオは寄宿学校時代からの付き合いだ。
つまり10年以上の付き合いである。
騒がしいライオと、落ち着いた―――寧ろ突き放した感じのリオン。サザの日々は此の二人のお陰で割と充実していた。
二人との遣り取りも、此処に居るのも此れが最後になるかもしれない、と承知はしていたし、神父様も周りの皆も心配していた。
だけどサザの覚悟を知って沢山の者は其の先行きに祝福を重ねた。
「だからさ、俺、そろそろ行ってくるよ」
サザは外の世界へ踵を返す。
「おう。死ぬなよ」
「俺達の事忘れるなよ〜っ!!!!」
二人の見送りを経て、サザは外の世界へと踏み出して行った。
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「うわー…此処が城下町………かあ…」
サザは公国の城下町の中に居た。
「凄いな。流石ラディウス皇国と交流してるだけあるなあ」
彼の瞳には初めて見る光景ばかりが映っていた。――話で聞いた事は何度もあるが、やはり直接見る事で得られる喜びもあるのだ。
「見た事の無いものばかりだ………!」
少年の頃に夢見ていた光景は今目の前に広がっている。
(この他にも……っ!!)
他の大陸の色々な場所、光景に思いを馳せると心は大きく期待を膨らませる。まだ此の目に収めていない光景を思えば、青年は沢山の夢を未来の喜びに変えようとするのだ。
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―――白月が落ちてから10年の月日が流れた。
世界の空の上に大きく浮かぶ月は空と共に落ち、そして世界を大きく変えてしまった。
地形や国、目に見える所が変わった訳では無い。
…誰にも見えない部分が、緩やかに、そして大きく変わってしまったのだった。
月が落ちる前は寄宿学校で過ごしていたかつての少年も今は青年となり、そして外の世界に夢を求めて旅に出た。
青年は風を受け一歩を踏み出す。
――星の輝きにも勝る"何か"を見つける為に。
取り敢えず始まりました……
群像劇と主人公の一人が異世界転生しちゃった系がいたりとしますが書きたい事が書けて表現したい世界観がちゃんと表現出来ていたらいいな〜!
…という事で頑張ります。更新は気紛れになるかもしれませんがご勘弁下さいm(_ _)m