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そして僕達は宇宙が落ちる日を夢見た  作者: ToToME@豆味
サザ、其れは夢を見る若獅子
19/29

天駆けて無窮より来たる竜

──無風の領域へ武器を投げる────!





サザの槍は最初は勢いこそあったが、風に圧され次第に弱まってゆく。

しかしエイヌスがすかさず撃ち、見事に当たって勢いを取り戻した。


「なっ!!」

エリナは顔を歪ませて投げ付けられた武器を見た。

「~させないっ!!わよ!!!」

エリナもエリナだ。そう簡単に破られては堪らない。風の壁を上手くすり抜けて飛んできたささの槍を、すぐに風を操り軌道を変える。




──ヒュンッッ!!





風によって軌道を変えられた槍は、更に風の勢いも付けて崖の方へ突き刺さった。





 ********





「~っはん!見なさい!!あなた達の思惑なんか私達には通用しないわ!!!」

エリナはこれでもかという位勝ち誇った表情を浮かべ、サザ達を見下した。

そこにエイヌスが勇み出て、エリナを煽る。





「…ふん、アンタは自分の優位性ばっかりで、細かい所には気付かないんだねえ。よぉっく見てみな!!アンタの上の方をな!!!!」

エイヌスが指を突き立てる。

「え───?」

エリナは一瞬の内に暗くなった視界に、エイヌスの言葉通り上を見た。


──槍が刺さった事で崩れた崖の一部が、エリナとレオに向かって降り注ぐ────────





───ズシャァァァァァァ!!ガラガラッ、ゴゴゴゴ、ガラッ!!!!




「きゃあああああああっ!!」

エリナはぱっと本能的に腕を振り上げ、己の身を庇おうとする。

「助けなさい!!レオ!!!」

エリナの叫び声にレオが反応し、翼がエリナを覆った。





───パラパラと瓦礫が落ちる。レオの翼に匿われてエリナには傷一つも付いていなかった。



………………………………………………………………

「ぷっ……あっ…ははは!!見なさいよ!!これがレオの優れた所よ!!頑丈な身体!!主の命令に従う従順さ!!!女神の民こそ全ての支配に相応しい!!!!!」

エリナは勝ち誇った様に笑い、そしてレオに命令を下す。


「さあレオ、やっちゃいましょ!!生意気なゴミなんかが形勢なんて逆転出来る訳が無いんだから!!」

サザ達を指差し、彼女は詠唱する。





「──"天駆"け、"無"窮より来たれ…風の"竜"!!汝の名は"レオ"、暴風を伴う神の化身が如く!我等の敵を滅ぼしなさい!!!」





詠唱と共にレオは唸り、巨大な竜巻をあちこちに引き起こす。

─嵐の谷の暗い風が叫ぶ。エリナの瞳には勝利と栄光だけが輝いていた。




(くそ…こんな暴風、敵う訳が……!)

サザはエイヌスと共に状況を乗り越える事を考えようとしたが、突如として暴風に巻かれ飛んできた(つぶて)がエイヌスの頭を打った。

「ぐゥぅッ!!」

「ばーちゃん!?」

勢いが強過ぎた為なのか、エイヌスは気を失ってしまう。その頭からは血が流れ落ちていた。





(くそ────────)

絶望的な状況を呼び込まれ、サザは苦い表情で天を見上げた。

(力さえあれば────────)


例え一時のこの望みが、傲慢だと言われても────

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