唸りは雷、嘶きは暴風
「ばーちゃんっっ!!」
サザがエイヌスの後を追って走る中、エイヌスは老齢である事を思わせぬ疾さで音の響いた方向へ向かっていた。
「若造!!こっちだよ!!!!」
途中エイヌスは振り返ってサザを強く呼び付ける。
エイヌスが岩場を潜り入って行った先へ追い掛けて進めば───そこは開けた谷の底。
「わっ…………!!」迂闊に足を踏み外しかけたものの、何とか踏みとどまったサザは目の前に広がる嵐の谷の光景に驚く。
草花すら生えぬ谷の底に、小さくみずぼらしいものなから草花が生えている。
「この辺りからだったんだけどねぇ…………」エイヌスが銃を構えつつあちこちを見回していると、
───バァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
「うわぁぁっ!!」
近くの岩や崖に何かが直撃し、辺りが大きく揺れた。揺れに足場が惑わされて、サザは大きくよろめき出す。エイヌスも少しよろめいたが、すぐ側の岩に捕まって事無きを得る。
はっと二人が見上げると───何かが直撃したであろう場所は大きく抉れていた。
「………はン、なるほどねぇ。あれは弾とかそういう部類のもんじゃないね」
エイヌスが見上げて抉れた場所を少しだけ眺めていた。その老齢ながら老いを感じさせぬ強い眼差しから見据える、敵の正体は────
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「───あっははははははははっ!!どこ見てるの!?私はこっちよぉ?」
空より嘲笑、侮蔑的な感情を宿した声が雨の様に降り注いだ。
「誰だ!?」
「あーぁ、シフォ様の御命令とは言え、こんな辺鄙で薄汚れた所に来なきゃいけないなんて、私って不幸だわ!舞う塵や砂でヨシュカ・ド・ドラグのお気に入りの服が汚れちゃうじゃない!!」
空の声は大層不機嫌な様子でべらべらと喋る。
「それにぃ…シフォ様が素敵だって言ってくれたグリメッダのカフスも傷付いたり失くしちゃったらどうしよう。…これもあなた達みたいな"ゴミ"のせい!!───ゴミ共の掃除をしなきゃいけないなんて、本当に私って不幸だわ!!」
───"声"は、己の身に起きた事を嘆息したりサザ達への怒りを露わにしたりと目まぐるしい。
「───急に出て来て何なんだよその態度は!!しかも逆光で見えないし……姿を見せろよ!!!あんた誰なんだ!!!!」
突然現れては一方的に悪者にされ罵られた事に流石のサザも怒りを露わにし────
"声"の正体に姿を見せろと怒り散らす。
「───ふん。下等な種族が、私達と対等だなんて思ってらっしゃるんですかぁ?………そんな訳無いでしょ。でも、私にも慈悲が無い訳じゃないから見せてあげる。私達を見なさい!あなた達を殺し、そしてシフォ様に首を捧げさせてあげるわ!!光栄に思うと良い!!!」
──"声"が両腕を広げると、周囲に暴風が吹き荒れ竜巻が発生する。
崖は削れ、砂塵が舞う。サザとエイヌスが両の目をぐっと強く閉じて身構えると、吹き荒れた風達は止んだ。
──そして目の前に、竜とそれに乗る女が現れた─────
追記
(諸事情でジョジョの名シーンの画像を探している時に某有名漫画の名シーン画像を偶然見てしまったのですが、おちゆめ敵キャラの最後辺りの台詞がその某有名漫画の名シーン内の台詞と似ていたのでトラブル対策に急遽直しました。突然の加筆修正申し訳ありません…!)