「ラスト」
最後の方は駆け足で書きましたが、タイトル通り、これでラストになります。
手に入れた最後のリンゴ……ゴッドキャットリンゴを袋に納めて、神様に転送すると、いつの間にか不思議な空間にいた。異世界「アガラタ」に来る前に来た神様の住んでいる不思議空間だ。辺りは白一面で、どこまでも景色が続いている。足元は透明な床が敷かれているのか、柔らかくも硬くもあるほどよく固められた感触がした。
「久しぶりじゃの」
背後を振り返ると、そこには白いローブを着た、腕を組んで立っている偉そうなおじいさんがいた。禿げた頭の上には金色の輪が浮いている。また、目を細めて、こちらを見定めるような表情をしていた。
「ええ、10年ぶりですね」
「どうじゃったかな? 冒険は?」
おじいさんの質問に、腕を組んで様々な思い出を振り返ってみる。
異世界に着いた途端に変態に追いかけられ、親友が伝説になっている町に辿り着き、冒険者になったはいいが、初めはろくな仕事につけなかった。また、親友を担ぎ上げる狂信者のホテルに泊まることになる等、初期の方は散々だった。
しかし、ゴルサンの町はエレナ、ソフィア、デュマさん、兄貴達と長い間付き合う仲間達との良き出会いの場となった。
「にゃー!」
そんなことを思い出していると、猫耳と尻尾の生えた筋肉質の男がどこからか現れる。パンツ一枚の半裸で、鍛え上げられた上腕二頭筋、六つに割れた腹筋が特徴だ。スキンヘッドの頭はおじいさんに負けておらず、光り輝いていた。猫と同じように四つ足で歩いているのが気持ち悪い。
「ブルーノ……」
ブルーノはエマさんの家で肉球病にかかった後に、入院することになった。そして、ブルーノの父親に食堂のおっさんの借金を帳消しにしてもらうのと引き換えに、肉球病を治したのだが、恨みを持ったブルーノは、僕の隙を伺っては散々な嫌がらせをするストーカーへと変貌した。
ゴルサンの町から1週間かかる場所に虹色リンゴを採取しに行ったときに、追いかけてきたブルーノが現地に住む魔女に呪いをかけられて、このような姿になってしまったのは最悪の思い出だ。また、なぜこんなところにブルーノがいるのかと言うと、ブルーノに自我が残っている時、虹色リンゴを転送用の袋に入れるときに襲い掛かってきたからだ。
虹色リンゴは2メートルもある巨大な虹色に輝いた宝石のようなリンゴである。
レオナルドの兄貴達との壮絶な競争の結果、虹色リンゴを手に入れた僕は、転送用袋に虹色リンゴを入れようとした。転送用の袋は魔力を込めると大きくなる仕組みだった。そして、転送用の袋を大きくした時だった。狙ったかのようなタイミングでブルーノが襲ってきたのだ。飛びかかってきたブルーノを避けると、ブルーノは袋に吸い込まれてしまい、神様の世界に転送されてしまった。そして、元の世界に戻すわけにもいかないようで、そのまま呪いで完璧に猫になってしまったブルーノは、今ではおじいさんのひひひひひひひひひひひひひ孫のペットとなっている。ただ、飽きてしまったようで今はおじいさんが世話をする事が多いとのことだ。ここにいるのもおじいさんが世話をしているからだろう。
「おじいさん……旅は大変でした」
「……そうか。儂もこいつの世話が大変じゃ」
おじいさんと僕は同時にため息をつく。二人の気持ちが一つになった気がした。
「……ところで最後の願いはどうする?」
あごに手を当てて考える。最後の願いはどうするとしよう。異世界で暮らし始めて10年間経過した今では、問題もかなり多い。例えば、変態がリンダ様と強制的に結婚することになり、毎晩恐怖の通信魔法を入れてくるとか、ごるさんが実は生きていて、結婚したソフィアとの惚気話を会うたびに聞かされて面倒臭いとか、隣国が戦争準備をし始めている等の噂もある。
「……そうですね、今は必要ないかな」
「ふむ。では、必要な時は通信魔法を儂に送れ。願いを叶えてやるから」
「分かりました」
僕が頷くと、おじいさんはこちらに両手の平を向ける。
「はああああああああああ! うおおおおおおおおおおお! 異世界とは? 異世界? 猫? まー!」
眼が眩むほどの強い光が発せられ、視界に渦を巻いた光のトンネルが現れた。どこまでも続くかと思われるトンネルの中央一点には漆黒の穴が存在しており、僕の身体はすさまじい力で引き寄せられていく。トンネルの中の上下左右の感覚はいつの間にか分からなくなり、落ちているような感覚だけが続いていく。そして中央にある漆黒の穴……巨大な黒猫を見据える。
「まー!」
巨大な黒猫がいつもの独特のおじさん声で鳴く。そして、僕を発見すると……大きな口を広げてぱくっと丸飲みした。
気がつくと、僕は高い丘の頂上にある大きな樹の下に立っていた。視線の先にはちらほらと樹木が生えており、地面にも幾ばくかの草花が生えている。ここまでは日本でも見ることのある景色だが、少し遠くを見ると高い外壁に取り囲まれた町が見えた。高い外壁のある久しぶりのゴルサンの町を見て、僕は目を細める。
「おかえり」
「……ただいま」
背後を振り返って最も愛しい人物であるエレナに返事をした。離れてから3か月しか経っていないのに会うのはずいぶん久しぶりと感じる。ゴッドキャットリンゴは月にあったためにエレナはついて来られなかった。だが、これからは月のような危険な場所に行く必要はない。
僕の第3の人生がここから再び始まる。
最後まで読んでくださった人達、ありがとうございました。特にブックマークしてくれた方、感想書いてくれた方には感謝しかありません。あまり、アクセス伸びなかったので、打ち切りです。
あらためて、初めから読み直すとリンゴの話(主題)が進んでおらず、小説の体裁をなしてないですね。文章、構成、話も全部ひどい。今後、新しい小説を書くかは未定ですが、もう少し本を意識しながら読んで、新作を書くなら、勉強してから書きたいと思います。