あの動き、ただものじゃない?
申し訳ありませんが、今回は8172文字でかなり長めになっています
この世界にも宗教というものはあるらしい、僕は兄貴達に連れ添って教会に来ていた。この地域の宗教と言えばオール教で、オールウェルという神様を崇めているそうだ。最初は僕をこの世界に送ってくれたおじいさんだと思っていたのだが、教会に着くと似ても似つかない若い男性の像が建っていた。話を聞くとその像の神様はオールウェルという神様で一番偉い神様とのことだ。どうやら、おじいさんはこの世界では最高神として崇められてないようである。
「ジャン司祭、今日はよろしくお願いします」
「ええ、今日はよろしくお願いします」
兄貴が会釈をする。僕等も兄貴に続いて会釈をするとジャン司祭は笑顔で会釈を返してきた。
「こちらに来てください」
僕等はジャン司祭の後を追って礼拝堂の奥の部屋へと向かった。すると、そこは長いテーブルがある部屋だった。おそらくはここで食事をとるのだと思われる。そして、テーブルの上には大きな石板が置いてある。
「では、始めましょう。能力を調べたいのは誰ですか?」
「おい、アーサー」
兄貴が変態を促すと、彼は前にでる。
「石板の中央に手を当ててください」
「これでいいのか?」
変態はジャン司祭の言葉に従い、素直に石板の中央に手を当てた。
「ええ。では、始めましょう。オールウェル様、この者の能力をお教えください。神の御慈悲をお与えください」
ジャン司祭が祈りを捧げると石板から淡い白い光が放たれた。それは数十秒の間輝いていたが次第に石板の光は収まっていき、最終的には光は放たれなくなる。
「では、石板から手を離してください」
変態が石板から手を離す。石板には変化は見られない。
「何も変化がないが……」
「能力は裏面に刻まれています。本当であれば本人のみ確認が許されるのですが、今日は違うとお聞きしているのでそのまま裏返しましょうか」
ジャン司祭はそう言うと、両手で石板を裏返した。裏側にはいくつかの文字が刻まれている。
剣神の加護:上級、強者の威圧:特級、天才:特級、力への意思:特級、成長限界突破:上級、神魔法適正:特級、魔力上昇:特級、言語理解:特級
「こいつはすげえな」
兄貴がぽつりと呟くと、僕と変態以外の皆は息を呑む。確かに書いてあることは結構凄そうなことが書いてある。上級と特級というのは何だろうか気になる、あとで聞いてみよう。
「この前、あいつらを気絶させたのは強者の威圧を使ったってことか」
「ああ、そうだ」
兄貴の言葉に変態が返答する。やはり、あの現象は能力によるものだったようだ。
「あの、能力って普通はいくつくらい持っているものなんですか?」
僕は疑問に思ったので聞いてみる。
「普通は1個の人が多いです。多い人でも2、3あればいい方ですよ。ただ、レオナルド君たちのような高名な冒険者とか国の高官はいくつものスキルを持っている人が多いですね」
「なるほど……あと、僕にも能力があるか見てもらうことできますか?この間、新しい能力が発現したみたいなんですが」
「レオナルド君の知り合いなら、別に構わないよ。今回もたくさん寄付金を頂いたしね」
「え?えーと、僕も見ていいですかね?」
寄付金という言葉を聞いて、僕は兄貴の顔色をうかがう。
「遠慮することはねえよ。ただし、俺にだけでいいから能力を見せてくれないか?」
「……うーん、分かりました」
僕は仕方なく頷く。個人的に見てもらうとなると、結構お金がかかりそうだ。兄貴にだけなら見せても良いだろう。
「では、他の人は部屋を出て行ってください」
ジャン司祭が言うと、他の3人は兄貴に促されて部屋を出ていく。
「エレナさん、僕の素晴らしい能力はどうですか?今度、デートでも」
「はい、はい。ごめんね、エレナ。こいつの相手なんかしなくていいよ」
姉御は変態の耳を引っ張りながら無理やり外に連れ出す。エレナさんはこちらを困ったような表情で見ながらも一緒に外へと出て行った。僕も共感した表情をエレナさんに向ける。
「では、始めましょうか」
僕はジャン司祭に向き直る。すると、ジャン司祭の前に置いてある石板から文字が消えていた。そして、ジャン司祭はそれを確認すると石板を再び裏返す。どうやら、再利用できるようになっているらしい。これも、ごるさんが作ったものなのだろうか? ……そう言えば、変態は「ゴルサンの魔導書」の方には触れたのだろうか?もしかしたら、カラファとブルーノ達に同行していたようだから触れていないかもしれない。あとで触らせようかな。
「では、手を先程の彼と同じようにしてください」
僕は言われた通りに石板の中心に手を置く。
「オールウェル様、この者の能力をお教えください。神の御慈悲をお与えください」
ジャン司祭が祈りを捧げると石板から淡い白い光が放たれた。先程と同様にしばらくすると石板の光は収まっていき、最終的には光は放たれなくなる。
「では、私も外にいますので、確認が終わって石板の文字が消えたら教えてください」
ジャン司祭はそう僕等に告げると部屋から出て行った。
「じゃあ、石板を裏返すぞ」
「はい。お願いします」
兄貴が石板を裏返す。すると、そこには能力が一つだけ刻まれていた「超回避(ゴルサン探知所持者限定):超級」と。
「……坊主。人生は能力だけが全てじゃない。しっかり生きろよ」
「……えっと、そうですね。……ところで、この超級というのは」
僕は発現した能力がどんなものかある程度予想はついていたので、「級」というものについて兄貴に聞く。いや、まあ他に何の能力も持っていなかったのはショックだけど。
「そっか。お前、「新しい能力が」って言っていたよな。ということは知らないか。能力っていうのは、神様から与えられた特別な力だ。例えば、アーサーも持っていた剣神の加護を持っていると初心者でも剣が初めからうまく扱える。で、能力にも格があってそれは「級」であらわされるんだ。格が高いほど恩恵が強い。「初級」が一番低くて、「中級」、「上級」、「特級」、「超級」の五種類だな。お前の持っている超級となると滅多に見ないレベルだ」
「滅多に見ないレベルですか……」
どうせなら、もっと役に立つ能力が欲しかった。
「まあ、お前は……そうだな、あの宿の奴らに稽古つけてもらえば役に立つんじゃないか?能力っていうのは直感みたいなものを養ってくれるから、師匠に稽古つけてもらっているうちに回避の仕方は自然と様になっていくはずだ」
「なるほど……ところで、兄貴も能力は持っているんですか?」
「ああ、持っているぜ。と言っても、他人にむやみに見せるものじゃないんだけどな。知られたら、対策をたてられることもあるし。ということで、悪いけど俺の能力は教えられないな」
「……なるほど、まあ、僕の方は知られても問題はなさそうですが」
僕はそれも承知の上で兄貴に能力を見せた。もしも、分かりにくい能力があれば教えてもらいたかったからだ。だが、予想通り神様のおじいさんは能力をくれなかったらしい。
「それでも、能力がそれしかないって分かるのもデメリットになるから他人には教えない方がいいぜ。だからと言って、アーサーが剣神の加護を持っているからと、思い込みで暗器とか毒物を警戒しないとかいうのもあまりよくはないけどな」
「なるほど。あ、そう言えば名前から予測したんですが、強者の威圧って相手を気絶させる能力ってことでいいんですかね?」
「ああ。あれは自分より弱い奴に効果がある能力だな。特級ともなると、相手を気絶させることができる。相手を見下したりしている奴に現れることが多いそうだ。もっとも、見下すレベルが尋常でなく高くないと発現しないらしい。あれを持っている時点で最悪な性格の奴と言えるな」
「……考えてみれば、エレナさんとかは3人にして大丈夫でしたか?」
「それなら、心配なんぞかけらもしていねえよ。何かあれば、アンナがアーサーをボコっているから大丈夫」
兄貴はそう言うと、ちらりと石板を見た後に部屋を出る。僕も石板を見るとすでに刻まれた文字は消失していた。僕も兄貴に続いて部屋を出ることにする。
「あ、終わった?」
部屋を出るとエレナさんと姉御が礼拝堂で並んでいる長椅子に座っていた。姉御はドアが開いたのに気がつきこちらに顔を向ける。エレナさんもこちらに気がついたようでこちらに笑顔を向けてくれた。ちなみに変態は着ている服が汚れており、ジャン司祭から内容は聞こえないが説教を受けていた。大体何が起きたかを想像できてしまう。
「あいつはエレナにまた手を出そうとしたのか?」
「ええ、だから痛い目にあってもらったわ」
兄貴と姉御の会話を聞くと、どうやら姉御が変態を倒したらしい。やはり、姉御もかなり強いのだろう。
「……あの、ちょっといいですか?」
僕は変態に「ゴルサンの魔導書」に触れさせるには今のタイミングが一番だと思った。それに、すでに触れていたとしても彼が本当に転移者であるかをはっきりさせておきたい。
「何だ、坊主?」
「ちょっと、さっきの部屋で変態と二人で話したいんですがいいでしょうか?」
「アーサーと? 別にいいが、お前一人で大丈夫か?」
「えっと、じゃあ、さっき言っていた強者の威圧を受けても平気ならいいですか?」
「……まあ、確かにあれを受けて平気なら大丈夫だろうが」
兄貴は少し考えた仕草をしたが、ジャン司祭の所へ行くと変態の首根っこを捕まえて連れてきた。
「な、何だ!? 突然!?」
変態は兄貴にビビっているようであった。実力の差が痛いほどわかっているからだろう。
「坊主に強者の威圧を使ってみろ」
「は? ……何を考えているか知らないが本当にいいのか?」
「いい。ちなみにどうせ、ここには俺とアンナがいるから逃げられはしないぞ」
「本当にやっていいのか!? クックック。エレナさん、そこの軟弱者が倒れるのを見ていてください」
変態はやる気になったようで元の悪人顔を復活させる。
「ちょっと、大丈夫なの? マサムネ君?」
「たぶん、大丈夫だと思います」
僕は少しちょうどいい実験だと思い始めていた。強者の威圧は弱い人を気絶させたりするそうだが、果たして強いという基準がどこまでなのか気になっていた。身体能力と心が強さの基準なら僕は結構自信がある。もし、スキルの多さで決まるなら僕は気絶するかもしれないが、兄貴と姉御が変態には負けない自信を持っているようなので、万が一僕が気絶しても大事には至らないだろう。
「では、いくぞ。そこで寝ていろ、ゴミムシが!」
「……あ、大丈夫なようです」
どうやら、前者が基準であるようだ。無様に気絶にはならず僕はほっと胸をなでおろす。僕はゴミムシと言われた腹いせに変態の胸倉を掴んで持ち上げた。
「じゃあ、このゴミムシは連れていきますので」
「……おう」
兄貴が少し驚いた顔をしていた。また、残りの3人も少し驚いた表情となっている。驚かせて、すみません。もし、地球の同胞が事件を起こしたのなら僕にも責任の一端がありますので。厳しく今回はいくと決めていたんです。
「くそっ、離せ!」
僕はわめく変態を持って部屋に入っていく。そして、彼を部屋に連れて行くと椅子に無理やり座らせる。何が、ゴミムシだ。お前が、ゴミムシじゃ!
「何だ、いきなり!?」
変態は少しショックを受けていたようだ。まあ、自分の方が総合的には弱いってことになるからね。変態は自信家のようだしショックなのだろう。
「えっと、まずは「ゴルサンの魔導書」って知っている?」
「ゴルサンの魔導書? 何だ、それは?」
変態はやはり知らないようだった。僕は鞄から「ゴルサンの魔導書」を取り出して変態に渡す。
「これが、「ゴルサンの魔導書」? 権田瑠偉……これは日本語じゃないか? 一体、これは何だ?」
「開けば分かるから、とりあえず読んでみて」
僕が変態を促すと、彼は本を開いた。すると、変態は痙攣したかのように少し体を震わせる……外から見ると、こんな風になるのか。
「……なるほど、開けば分かると言っていたってことはやはりお前も転移者なのか」
「えっと、そっちも転移者なんだよね?」
「……そうだ。お前もそうなんだろう? マサムネ」
「うん。取り敢えず、あまり自分達のことを知られないようにした方がいいのは分かったよね?」
「……そうだな。だが、俺をあの場に置き去りにしたことを許さんぞ!」
「それなら、普通はあんな簡単に貴族に取り入られたりはしないようね?」
「……生き延びるためには仕方がなかったんだ」
「それでも、普通はあんな襲撃みたいなことはしないでしょう? しかも、ソフィアまで人質にとるような真似をして」
「そ、それは……」
やはり、変態でも人質を取ることはやりすぎたと思っているらしい。もう一押しだ。
「しかも、君が人質にしていたのはエレナさんの妹だよ? 絶対にもう取り返しがつかないよね」
「うっ……マ、マサムネ、俺はどうすればいい?」
……勝った。
「とりあえず、僕は寛大だからこれだけは守って欲しいんだけど」
「何だ?」
「これからは普通に悪いことはしないでくれればいいよ。あと、僕の許可がない限り、ホテルゴンダにさえ近づかなければ」
「……エレナさんにアプローチしにくくなるのは受け入れがたいが……分かった。その条件をのもう」
「あ、やっぱり、エレナさんに近づかないのも追加で」
「それならその条件はなかったことに……」
「だったら、代わりに何かあったら手を貸してくれない?」
「……分かった。何かあったら手を貸そう」
「絶対だよ? 何でもしてくれるよね?」
「なんだ? そこまで念押しをして気持ち悪い。さっき言った通り、俺にできる範囲なら手を貸そう。ただし、何でもはなしだ。俺に出来ることならだ」
「それで大丈夫。それなら、君に出来ることだから。あとは……また、今度にしようか。あまり長いと兄貴にしつこく聞かれることになるかもしれないし」
うーん、やはりエレナさんに手を出させないようにするのは無理だったか。まあ、代わりに何かあったら手を貸すように頼めたからよしとしよう。ただ、これで1つ悩み事が解決したかな。
「あ、最後に魔力量はどれ位だった?」
「お前は?」
「僕は3万位だった」
もちろん嘘である。「ゴルサンの魔導書」には転移者の平均が2万と書いてあったから適当に近い値を答えただけだ。
「俺は10万だ……クックック、勝ったな」
変態が「ゴルサンの魔導書」を開いて見せびらかしながら答える。この男が情報を与えることに警戒しないのは何故なのだろうか? 馬鹿だからか? 僕は変態から「ゴルサンの魔導書」を返してもらうと部屋から出る。
「お、出てきたか。何を話していたんだ?」
兄貴がこちらを伺ってくる。まあ、話の内容は気になりますよね。
「とりあえず、この前の件を反省してもらって、何かがあれば力を貸してくれるように約束しました」
「……本当にそれだけか?」
「ああ、それだけだ」
変態も兄貴のことは流石に警戒しているのかぶっきらぼうに答える。
「まあ、いいんじゃないの? 当人同士の問題だし……あとは落ち着いたらホテルゴンダに謝りに行かせるつもりだから」
姉御がそう言うと、エレナさんが変態を睨む。おい、そこ。睨まれているのにへらへら笑うな。取り返しのつかない程嫌われても知らんぞ。
「じゃあ、教会から出るとしますか」
兄貴がそう言うと、用が済んだ僕等は教会から外に出ることにした。
「ジャン司祭、お世話になりました」
僕等は兄貴に続いてジャン司祭に頭を下げた。
「いいえ。また、何か用があれば頼ってください」
ジャン司祭は優しい笑顔で僕等を送り出してくれる。
「それじゃあ、俺らはここで失礼するぜ。デートの邪魔をして悪かったな」
「何!? デートだと!?」
兄貴のからかうように言った言葉に変態が反応する。
「デ、デートじゃありません。宿を案内していただけですから、デートでは断じてありません」
慌てた感じでエレナさんが否定をする……分かってはいますけど、そこまで否定されると傷つくのですが。
「こいつの言っているのは冗談よ。それにエレナ、そこまで否定する必要はないと思うわよ。マサムネ君が傷ついた表情をしているじゃない」
「え? マサムネ君はデートのつもりだったの?」
姉御が僕にフォローを入れてくれると、エレナさんは驚いた顔で僕の顔を見てくる。
「そうですね。デートとは言わなくても綺麗なお姉さんとのプチデート位にはちょっと期待していました。なので、そこまで強く否定されると少し傷つきます」
「そ、そう。ごめん。思わず、否定しちゃっただけでマサムネ君のことが嫌いとかじゃないのよ」
エレナさんは顔を赤くして両手を振って否定する仕草をする……かわいい。
「くそっ、マサムネ。やはり、決闘を……」
「お前は大人しくしていろ」
変態のリアクションに兄貴が背中を思い切り叩く。変態はかなりの力で叩かれたからか「痛っ!」と叫んで少し咳き込む。
「じゃあ、私達は帰るから。じゃあね、二人共」
姉御がそう言うと、兄貴も「じゃあな」と言ってその場を離れた。変態も「エレナさん、また会いましょう」と告げて離れていく。エレナさんの目はもう取り返しのつかないレベルで変態を睨んでいた。うん、だって反省の態度を全く見せていないからね。それは嫌われますわ。
「じゃあ、私達も宿に戻りますか。ちょうど昼食の時間だしね」
「ええ、そうしましょう」
僕等はそのままホテルゴンダへと戻っていった。
そして、夜になる。僕は昼食を食べてからエレナさん、師匠と槍の修業を行った。その後に夕食も食べ終わったので、今度は公園に行って新しい魔法の練習をすることにする。この魔法は宿では練習がしにくい。今度、覚える魔法は「導きの光球」の魔法と一緒に「ゴルサンの魔導書」に載っていた「土の防壁」だ。先に覚えた「導きの光球」は自分の魔力で作り出したものを光らせるという、魔力を別の性質に変化させる魔法だ。一方で「土の防壁」は土に魔力を注ぎ込み操るという、存在するものを操る魔法だ。僕は取り敢えず、最小出力で「土の防壁」を使おうと考える。
「うーん、「導きの光球」で魔力を注ぎ込む量は調整できるようになったし、先ずは昔作った砂場の山の高さなら問題ないだろう」
僕が周囲を確認するとこの辺りにはほとんど人気がなかった。おそらくは、安息日の夜だからだろう。僕は早速、「土の防壁」を使うことにする。
「土よ。我が魔力を纏い、敵を妨げる壁となせ。土の防壁!」
僕は足の裏から魔力を地面に注ぎ込む。すると、周囲の土を集めることで、足元にすねの高さ位のもっこりとした土山を作り上げる。
「えっと、あとはこれを少しずつ調整して……」
魔力を操りひざの高さに土が盛り上げる。
「……もうちょっと、防壁のような形をして欲しいな。これじゃあ、土壁でなく土山だ」
僕はイメージを変えてこの町の外壁を思い浮かべる。すると、土山は形を変えて石板のように平たい直方体状になった。完璧だ。これでさらに土を増やしていって……腰のあたり、次は腹のあたり、続いて胸のあたり、最後に頭の高さを少し超えた土壁が出来上がる。
「……こんなかな。初めより魔力操作がうまくできるようになっているから、スムーズにいった」
僕は出来上がった「土の防壁」を見て満足する。
「次はすぐにこの大きさが作れるようにしたいな」
僕は土の防壁練習をひたすら続ける――
「おーい、誰かその娘を捕まえてくれ!」
急に何なのだろう? 僕は練習の末に出来るようになった同時に2つ展開していたうち1つの「土の防壁」を解除して、「導きの光球」で声の方向を照らす。すると、そこには猫パンチをしながら走っている女の子と少し遠い場所に男の人がいた。二人は帽子を深くかぶっているので顔はうまく確認できない。
「何かこっちに向かってくるんだけど……」
僕はまず向かってきた女の子を避ける……あ、この娘結構可愛い。すると、女の子は僕の作り出した「土の防壁」を鋭いコンビネーション猫パンチで粉々に破壊した。
「あの動き、ただものじゃない?」
僕には分かる。あのコンビネーション猫パンチは師匠ほどでないにしても、長い時間をかけて身につけたものだ。きっとあの可愛い娘はさぞかし猫パンチを極めた娘なのだろう。……うん、この娘の正体が完全に分かった。それと、あの走ってくるもう一人の男は絶対にギルドの食堂のおっさんだな。
小説を投稿したの初めてなのですが、基本的な書き方が出来ていなかったようなので、少し勉強して段落つけたり誤字修正したりしました。活動報告とかに書いても誰も見ないと思うので、ここに記載しておきます。(2019/4/14)




