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この気持ちは説明できない


 勉強合宿はその名の通り朝から、晩まで勉強する合宿で最終日にテストがあり上位20名をはりだすのだ。

 私もせめて20名に入りたい。今まで勉強に傾倒してきたし、せめていい成績を残したいと思った。正直、この高校のレベルは中の下なのだ。だから奨学金も取りやすかったし。私は奨学金をもらっているので、義務ではないが暗黙の了解で上位にいないといけないのだ。


「春ちゃん頑張ってね!」


「うん。夢ちゃんも!」


「ありがとう。」


 それにしてもうちのクラスは皆オシャレだ。よかった服を買っておいて。完全に浮きまくるところだった。女子で1番オシャレなのはやっぱり夢ちゃんで男子で1番オシャレなのは吉井君だった。だから服にも詳しかったのか。悔しいがちょっとかっこいい。

 勉強は4日間自由にでき、分からなければ各部屋にいる教科の先生に聞きに行くのだ。そして最終日にテストを行い、家へ帰る。休みあけの月曜日に20名がはりだされる。生徒達が勉強する部屋に先生はいない。とんでもない信頼だと思いながら、割と皆ちゃんと勉強している。席は教室と一緒なので隣は菅野君だ。勉強部屋の出入りは自由で、いつでも出ていいし帰ってきてもいい。飲食も自由だ。

 一日目は朝は移動時間で、ほぼ昼から勉強になる。私はミルクティーを買ってそれをお供に数学の問題をひたすら解いている。夢ちゃんはクッキー食べながら英語を訳しているようだ、必死に電子辞書と格闘している。

 一段落し、私は少し休憩をしようと席を立ち自販機へと向かった。自販機で炭酸飲料を買う。自販機の隣に小さな休憩室があり、その中に菅野君と田中さんがいるのが見えた。少しだけ覗くと、田中さんは菅野君に抱きついたりしている。なんだ仲がいいんだ。なんだ。やっぱり菅野君は田中さんが好きなんだ。


「あの2人仲がいいね。付き合ってるのかな?」


「吉井君。いつからそこに?」


「春が部屋を出て行くのが見えたから。ついてきた。そういえばうちのクラスの女子で彼氏がいないのは春と田中さんだけらしいよ。」


「えっ?」


「なんかちょっと前に別れちゃったんだって。好きな人ができたらしいよ。菅野だったりして?」


「へーそうなんだ。付き合うのかな?」


「悲しい?」


「ううん、別に。だって前も菅野君は田中さんが好きって言ってたし。」


「ふーん。じゃあ春行こうか。」


「うん。行こう。」


 私は関係ない。別に菅野君なんて席が隣なだけだし。胸が苦しいのも菅野君は関係ない。


「ねえ。俺のこと浩介って呼んでくれない。友達なら下の名前で呼び合おうよ。」


 まあそれは別に普通か。それに彼とはちゃんと向き合うと決めた。素直に気持ちを話してくれたのだから。


「浩介。部屋に戻ろう。」


「春!うん。」


 なんだかとても嬉しそうな浩介に少しだけきゅんとしてしまった。

 部屋に戻って英訳を始める。私は勉強をする。さっきのことは忘れて勉強する。ものすごく集中して勉強したので、いつの間にか夜ご飯の時間になっている。勉強部屋には私と浩介しかいない。彼もとても集中している。自販機でクッキーとパンが売っているので買ってこよう。皆は今ちょうど夜ご飯の時間のようだ。ご飯も自由なのでいなくても問題はない。


「浩介。パンとコーヒー買ってきたけど食べる?」


「あーありがとう。俺も春と一緒で奨学金もらってるからなるべく上位にいないと駄目なんだよ。」

 

「私もとりあえず絶対20名には入る。」


「だよなー。頑張ろうな。隣行ってもいい?」


「どうぞ。」


 浩介も奨学金をもらっているんだ、じゃあこのプレッシャーも私と一緒だ。浩介が菅野君の席に座り、一緒にご飯を食べ始める。


「春。このパン美味しいよ。ありがとう。」


「よかった。私のパンも美味しいよ。」


「嘘、一口ちょうだい。」


「どうぞ。」


 そういってパンを差し出すと私の手を掴んでそのまま一口かじった。私もそのまま一口かじる。


「間接キスだ。」


 浩介が笑顔でそんなことをいうので私はなんだか恥ずかしくなってしまう。


「春。顔が赤いよ。かわいい。」


「浩介って中学から性格変わった?」


「1度、春と両思いになる機会を失ったから、次は絶対に失いたくないんだ。」


「浩介…。」


「ちょっと、そこ僕の席なんだけど。」


 私はびっくりして声も出なかった。菅野君がいつの間にか後ろにいた。


「ごめんな菅野。春、休憩室に行こうか。」


「うんそうだね。皆帰ってくるかもしれないし。」


「片岡は別にそこで食えよ。」


「えっ?いや皆帰ってきたら迷惑かもしれないし。」


「別に飲食自由だし。」


「うーん。でもずっとこんつめて勉強したから1度休憩したいの。だから行くね。行こ、浩介。」


 今、菅野君と一緒に居たくなかった。それに一回本当に休憩したかったし。浩介が休憩室でアイスをおごってくれた。パンとコーヒーのお礼だって甘くて美味しい。明日も勉強頑張らなくちゃ。

 もう11時だし今日はもう寝ようかな。明日は早起きして勉強始めよう。



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