あなたの心が分からない
授業が始まった。なんだか恒例になっている菅野君の手紙がまたまわってくる。
吉井と仲がいいの?
まさか、なんで?
昨日、手をつないでなかった?
あれはたまたまこけそうになったから。
へーそれで家までずっと離さないの?
菅野君見てたの?
偶然ね。
とにかく吉井君は友達。
「おい、そこ何をこそこそしている!」
やばい見つかった!
「すみません、片岡さん具合が悪いらしくてずっと我慢してたみたいです。」
えっ私に嘘をつけって言ってるの?
「すみません、なんだか頭が痛くて朝から熱っぽいんです。」
「えっそうだったのか?じゃあ菅野、片岡を保健室に連れて行ってやれ。」
「はい、分かりました。」
そういって菅野君は私を支えてくれる。演技をしたまま教室を出る。菅野君はそのまま私の腕を掴み支え続けてくれる。
「もういいよ。」
「いや、先生が来るかもしれないし。」
「あーじゃあお願いします。」
結局、私たちは保健室に着くまで寄り添う形になっていた。保健室の先生は体育ででた、けが人を病院へ連れて行ってるため後、一時間は戻ってこないらしい授業はまだ始まったばかりだし私はベッドで横になろう。寝たら治ったことにしよう。
「ねえ、片岡さ警戒しなさすぎじゃない?僕だって男なんだよ。」
そういってベッドに横になった私の上にのしかかってくる。
「いやいや、学校ですよ。」
「だから?そんなんだから吉井につけ込まれるんじゃないの?好きなんでしょ?」
「いや、好きじゃないし。」
「じゃあ昨日の吉井が入って来たときの顔はなんなの?」
「あれは。」
「なに?」
仕方なく私は中学の時の話をした。菅野君はやっと上からどいてくれる。
「分かった。じゃあ吉井を好きになる確率は低いんだね。」
「うん。そうだね。」
「良かった。じゃあ僕は教室に戻るよ。また後でね。」
菅野君って本当に変わってる。私をブスだって言ったくせに、急に人の恋路に口を挟んでくるし、なんなの?私は一眠りすることにした。
「春ちゃん!大丈夫?」
けたたましい音と共に夢ちゃんが入ってくる。
「うん。なんだか寝たら治ったよ。ありがとう。教室に戻るね。」
「そっか、良かった!じゃあ行こう。」
夢ちゃんは少ない休み時間をさいて私に会いに来てくれたんだ。仮病なのに申し訳ない。
教室に戻ると菅野君は静かに席に座っていた。私も静かに座る。もう授業が始まるようだ。その後、菅野君から手紙がまわってくることはなかった。
放課後久しぶりに菅野さん出会った。
「春ちゃん!久しぶり!この頃忙しくて。ごめんね。」
「菅野さん。あの中学のトラウマの原因と再会しましたぁ。」
「えっ大丈夫?」
「意外と大丈夫でした。でも親に服装が恥ずかしいって思われてたのが割とショックでした。」
「ああ、小学生から同じ服着てるもんね。」
「あれ言いましたっけ?」
「ええ、前にね。」
「まあとにかくこれから買い足せばいいじゃない!」
「そうします。パジャマも買います。」
「そうね。頑張って!」
「ありがとうございます。」
「あなたは幸せになるの。だから大丈夫。」
「えっ?」
菅野さんは優しく微笑んでじゃあねと行ってしまった。
私もパジャマを買いに行こう。幸せになる、か。なんだか難しい気がする。
そしてまた来たショッピングモール、パジャマは目星を付けておいたお店で紺のワンピースタイプと水色のズボンとシャツのタイプを購入した。そこで白の花柄のシャツワンピースが目に入ってそれも購入した。なんとか合宿では浮かずに済みそうだ。良かった。
準備万端で勉強合宿の日を迎えた。




