泣かない強さ
家に帰っても私は菅野君のことを考えていた。急になんだったんだ。まあ特殊な褒め方をしてくれたんだろう。よしそれだ。これ以上は考えない。お母さんに呼ばれて夜ごはんを食べお風呂に入った。お父さんにも可愛いと褒められいい気分で眠りについた。
学校の日、今日は体育がないので髪留めでハーフアップにする。美容師さんがロブと言っていた髪型はぎりぎり肩につく長さだ。なんだか髪をアレンジするのも楽しい。
「春、いってらっしゃい!」
「うん。行ってきます。」
私は高校に行き始めて初めて元気よく登校した。
教室に入ると夢ちゃんがすぐに隣へ来てくれた。
「いいよ!可愛い!今なら学年1位も夢じゃないよ!」
「やめて、恥ずかしいから!」
夢ちゃんが叫ぶので皆がこちらへ振り向く。私は恥ずかしくなって顔を赤くしながらうつむく。急に影が出来て前に誰か立ったのが分かる。見上げるとそこに居たのは菅野君だった。
「菅野?なにしてるの?」
「高野、先生来たぞ。」
「えっ本当だ。じゃあ春ちゃんまたね。」
そういって皆、席に戻った。はー助かった。皆夢ちゃんにつられて見るんだもん。
授業が始まると、また菅野君から手紙がきた。宛先はまた私だ。
あんまり皆に顔を見せたらだめだよ。
えっどういうことなの?やっぱりぶすってこと?怖い、こんな遠回しに伝えてくるなんて。昨日は可愛いと言ってくれたのに。どうしよう泣きそうだ。でも男の子の言葉にはもう負けないって決めたもの!
菅野君には関係ない。
それだけ書いてまわした。するとガタンと音がして菅野君が立ち上がり私に向かって話す。
「関係ある!だって僕は!」
そこまで言うと黙ってしまった。今は授業中だ。菅野君は昼休みに来るようにと、呼び出しをくらってしまった。私はびっくりしすぎて涙が引っ込んだ。菅野君ってちょっと変わってるなぁ。
昼休み、ご飯を食べ終えると夢ちゃんが話しかけてくれる。
「さっきびっくりしたね。菅野と何かあったの?」
「いや、別になにもないよ。」
「本当にー?」
「うん。ない。」
「そっかー。そういえば明日、転校生が来るって言ってたよ!女子かな男子かな?」
「さあ?どっちだろうね?」
「どっちにしても仲良くできたらいいね!」
「そうだね。」
「あっそうだ、服見に行くのいつにする?」
「じゃあ、今日の帰りはだめかな?」
「いいよ!じゃあ放課後ね!」
「うん。ありがとう。」
やったー。これでまたオシャレに近付く!放課後が待ち遠しいなんて初めてだった。