失恋の痛みを忘れる事はない
あれから何日か経ってゆっくりと落ち着きを取り戻した。人を好きになって失恋して色んな経験をした。結局、その間勉強に傾倒した。とにかく問題をとき暗記をして勉強に目を向ける。
浩介は放課後の図書館での勉強についてくるようになった。今日は数学の問題集をといている。
「なあ春明日暇?」
「土曜日?うん別に。」
「映画見てお茶でもしない?」
「うーん。」
「行こうぜー。」
「うん分かった。」
「やった。じゃあ10時に迎えに行く。」
「えっなんか嫌だ。駅前にしよう。」
「いいって行くから。」
「嫌だって。」
「静かに。」
「「すみません。」」
結局、押し切られ家に迎えにくる事になった。映画何を見るんだろう。
「さあ帰ろうか。春。」
「うん。もう夜ご飯の時間だし。」
「送るよ。」
「ええ。お願いします。」
もう意見が通らないので言う通りにする。
「春、中学の時本当にごめんな。」
「急にどうしたの?いいよ、もう許すよ。」
「うん。子供だったから、からかわれるのが嫌だった。だけどそれで自分の好きな人を傷付けていたなんて。最悪だ。」
「まあまあ。明日楽しみにしてるから。浩介。」
「うん。ありがと。」
「じゃあおやすみ。」
「ああ。また明日。」
浩介は少しとぼとぼと帰っていった。確かにあれがトラウマで恋が出来なくなったけど、あれは私にも原因があったと思うし。まあ明日楽しみにしておこう。
勉強の疲れからか夢も見ない程深く眠りについた。
目が覚めると7時で支度をしてお母さんの朝ご飯を食べて勉強をしていると浩介が迎えに来てくれた。私服はテスト合宿以来だが一段とお洒落なのがなんともかわいいやつだと思う。
「おはようございます。」
「おはよう!今日も春をよろしくね!」
「はい!晩ごはんまでには帰します。さあ行こう春!」
「はいはい。」
浩介は母に媚びを売った後歩き始めた。浩介の後をついて行く。駅前までは10分程だ。
「今日はやっぱりなんでも揃うあの大型ショッピングモールに行きます。」
「ああ、やっぱり。」
「近いし、いいだろ。」
「そうね、また新しく近くにできたもんね。」
「ああ新しい方だ!もうつくな。」
「そうね。」
「さあ着いた。映画館はどこだろうな。」
「大体上の階じゃない?」
「確かにそうだな。」
初めて来た割に迷いもせず映画館に着いた。見る物は選んできたらしいのでチケットを買う。浩介がお金を出そうとするので友達だからやめろとやめさせる。まだ映画まで1時間ちょいあるな。
「お店でも見てまわろうか?」
「うん。浩介の見たい所に行きたい。」
「じゃあ本屋行きたい。春に古文の参考書選んで欲しい。」
「えー私で大丈夫かな?まあ行ってみよう。」
本屋さんはとても大きくて参考書の品揃えも豊富で選び放題だった。
うーんこれは説明が分かりやすいし、こっちは内容を把握しやすい。
「これかこれのどっちかだと思う。」
「30分は喋らなかったな。ありがとう。じゃあこっちにするよ。」
浩介は説明が分かりやすい方を選んだ。浩介の会計を待っていると本屋の前を見覚えある人が歩いていた。
「おお片岡。何してるの買い物?」
「えっああうん。」
「1人?」
「ううん浩介を待ってる。」
「吉井?」
「うん今レジで会計してる。」
「ふーん。じゃあ片岡が急に居なくなったらどうするのかな?」
そういった瞬間、菅野君は私の手を引っ張り走る。ちょうど戻ってきた浩介がびっくりした様子で私の名前を呼んでいる。
「ちょっと離して!」
「嫌だ。」
「やめてよ!浩介と映画を見るんだから!」
田中さんと付き合ってるくせに。強く腕を振り払うと流石に手を離してくれた。そのまま浩介のところへ戻ろうとする。手を引っ張られ外まで来てしまった。そこでまた腕を掴まれる。
「僕といてよ。吉井じゃなくて。」
掴まれている腕が痛い。それより心が痛い。
「嫌だ、さようなら。じゃあまた学校で。」
腕が開放された後歩き出した。もう菅野君に腕を掴まれなかった。
浩介は本屋の前で待っていてくれた。
「どうした?何があったんだ?」
「信じてくれるか分からないけど、私にもわからない。急に引っ張られて走らされて。」
「良かった。もう戻って来ないかと思った。酷い事はされてないよな菅野だし。映画見られるか?」
「うん。そろそろ行こうか。」
映画の内容なんて何も入ってこなかった。




