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合宿二日目


 なんだか枕が変わると眠れなくて、5時過ぎには目が覚めてしまった。同室の子を起こさないように着替えて外に出る。シャツワンピースにスキニージーンズにカーディガンのモノクロコーデだ。私の1番のお気に入りそして、菅野君が選んでくれたゴムで髪を後ろで1つにしばった。今日はしっかり勉強したいし髪が邪魔にならないようにするため。それだけだから…誰に言い訳してるんだろう。

 勉強部屋に行くまでにクッキーとミルクティーを買いに自販機に立ち寄った。うちのクラスの勉強部屋の電気はついていないが、他のクラスの部屋の電気がついている。私のクラスでは私が一番乗りのようだ。電気をつけクッキーを食べながら国語の参考書を開く。国語は得意科目なので、テストの範囲は一応網羅しているが、もう一度目を通しておきたい。得意だからこそ点数を伸ばしたいし。


「おはよう。」


「おっおはよう。」


 このクラス2番目は菅野君だ。今日は古文を訳していこう。何も見ないで現代訳に完璧にできるように。古文より漢文が難しいな。文章の順番を間違わずにと。


「髪のやつ僕が選んだゴムだよね。」


「うん。今日は勉強本気モードだから。髪が邪魔にならないように。」


 私は参考書から目を離さずに話した。


「そうなんだ。吉井のこと浩介って呼んでるの?」


「うん。」


「なんで?」


「友達だから。」


「じゃあ、」


「おはよう、菅野ー!」


 菅野君の友達が来て菅野君に話し始めた。さあ続きをしよう。朝ご飯まで2時間みっちりと漢文を訳し続けた。

 ご飯は各自、好きな席に座れるのだが、古文の話を聞きたくて先生のそばに座った。先生に質問しこつを教わる。古文の先生は本当に分かりやすく教えてくれる。うん、テストに対する不安は古文と漢文はなくなった。後は数学と英語だ。テストは3教科なので、まだ余裕がある。朝ご飯を食べ終えたら英語の復習をしよう。正直、この3教科は得意科目なのでまあまあ自信がある。

 勉強部屋に戻るとさすがに全員揃っており、皆勉強している。だが何人かは雑誌を読んでいるので違う勉強をしているようだ。私は英語の教科書を開く。英訳と英作文が今回の範囲でリスニングはない。なのでひたすら問題を解いていく。できるようになるまで何度も。いつの間にか昼ご飯の時間だ。私も食べに行こう。

 空いている席を探す途中で、菅野君と田中さんが隣で楽しそうに話しながら食べているのが目に入った。もう心は動かされなかった。端の空いている席についた。午後は数学だ、とにかく数学。


「春ちゃん!勉強はどう?」


「うん!私なりに頑張ってる。」


「そっか、私飽きてきた。」


「うん夢ちゃんの気持ちとても分かる。」


「でも合宿だから仕方ないね。」


「そうだね。じゃあまたね。」


 夢ちゃんはまだ食堂にいるようで、デザートを堪能している。食堂にあるデザートはプリンとゼリーのみだ。私は勉強部屋に戻った。

 昼ご飯の時間だから人が少ないが、浩介はまた昼ご飯を食べに行ってないらしい。まあお世話にはなっているし買ってきてあげよう。サンドイッチとオレンジジュースを浩介に手渡す。私は小声で、


「ほら浩介、せめてこれ食べれば。」


「ありがとう春。じゃあちょっと休憩する。」


 そういって部屋を出て行った。結構頑張ってるな。昨日の夜も最後までいたっぽいし。


「春ちゃん!ちょっと!」


 いつの間に帰って来ていたのか、夢ちゃんに部屋の外から呼ばれた。


「夢ちゃんどうしたの?」


「春ちゃん、吉井君付き合ってるの?」


「付き合ってないし。誰かと付き合うってなったら誓って1番に夢ちゃんに言う!」


「春ちゃん!ありがとう!そうなんだ。でも下の名前で呼んでるの?」


「中学の時同じクラスで仲がよかったの。」


「そうなんだ。吉井君って恋の話がでてこないんだよねー。また聞いてみて!じゃあ勉強に戻ろう。」


「うん。戻ろ。」


 この会話は今、部屋にいる人には全部聞こえて居るだろう。だから浩介と呼ぶ理由をもう説明せずにすむ。ありがとう夢ちゃん。

 さあ数学の続きをしよう。数Ⅰと数Aなら数Aの方が得意だなー。とりあえず数Aを範囲分マスターしちゃおう。


「い。おい。片岡。」


「ああ、菅野君。」


「君、集中し過ぎじゃない?皆、夜ご飯食べに行ったよ。今日は焼き肉だから全員参加だよ。」


「ああーそっか、ありがとう。私も行く。」


「ああ。」


 食堂に向かう間、2人とも口を開かなかった。食堂の前で菅野君が立ち止まる。


「ん?菅野君どうしたの?」


「あのさ、」


「春ちゃん!今呼びに行こうと思ってたの!行こう!」


「うん!」


 夢ちゃんはわざわざ私を呼びに行こうと、もう始まっているのに食堂を出てきてくれたみたいだ。優しい。それにしても菅野君とはタイミングが悪い。朝も結局、話聞けてないし。まあいいか。


「春ちゃん!焼き肉おいしいね。」


「うん!それに楽しい。」


「うわぁなんか嬉しい。片岡さんのその言葉!」


 田中さんがそういってくれる。田中さんは学年で1番人気なのに気取らない可愛い女の子だ。私が逆立ちしたって勝てない。

 さあ食べたら勉強に戻ろう。皆はこのまま寝るみたいだし。たくさん食べたら眠くなるもんね。

 勉強部屋には私と浩介しかいない。私は自分の席に座ったまま話しかける。


「浩介、頑張るね。」


「うん。俺、1位狙いだし。」


「そっか頑張れ。」


「なあ、1位とったら俺と付き合わない。」


「気持ちがないままでいいなら。」


「うんじゃあいいや。俺を好きになってからがいい。やっぱり。」


「でしょう?」


「って事は俺を好きになる可能性もあるってこと?」


 うーん。


「私、浩介の後、人を好きになったことないから。分からない。」


「それってまだ好きってこと?」


 浩介をまだ好き?


「分からない。ごめん。」


「いいや。ゆっくり俺を好きになって。」


「あはは。ポジティブだね。分かった。」


 そしてまた勉強し始める。気付くと数Aはテスト範囲の所なら完璧にできるようになった。けど今の時間はもう1時だ。夜ご飯が8時に終わったから5時間近く数Aをしてたらしい。さすがにやめよう。


「浩介、私もう寝るね。お休み。」


「ああ、なんか同棲してるみたいだ。ちょっと元気が出た。お休み。」


 浩介って可愛い奴だ。皆、寝ているのかとても静かだ。皆が寝る部屋の前の暗がりの中に誰かいるのが見える。眠れないのかな?田中さんだ。


「田中さん眠れないの?」


「ああ片岡さん。寝てたんだけど。喉が渇いて目が覚めちゃって。」


「そっか。」


「あのね、私片岡さんが少し苦手だった。」


 急に、なんだ。びっくりした。


「私は1人になるのが怖くて、トイレもご飯も絶対に誰かと一緒で。彼氏も皆いるからつくったの。でも片岡さんは違う。いつも1人だし、それをなんとも思ってないし逆に楽しんでる。」


「そうかな?」


 そうだけどね。


「うん。だからなぜ片岡さんが苦手か考えたけど理由は簡単だった。羨ましかったのそれだけ。だから苦手とか思ってごめんね。」


「ううん。でも言わなければ分からなかったのに。」


「それでもちゃんとしたかったの。これからは本当に好きな人を彼氏にするつもり。」


「そっか。頑張ってね。」


「ありがとう。お休み。」


「うん、お休み。」


 そういって田中さんは自分の部屋に戻って行った。やっぱり田中さんは優しくて可愛い女の子だ。

 私も部屋に入り眠りについた。



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