第5話
今回は繋ぎなので短めです
城での日々は、メイドさんに生活を送るために必要な知識や常識などを習ったり、ウェリバーさんから剣の稽古をしてもらう内にあっという間に1週間という時間が過ぎていた。
俺と一緒に召喚された勇者組とは初日以降一切顔を合わせることもなく、今現在城の入り口付近にアリアさんやマリアさん、それにウェリバーさんが見送りに来てくれていた。
「リュウジ様、こちらがお預かりしていたお召し物となります。その他にも生活に必要なもの等が入れてありますので是非お使いください」
アリアさんからは作りはしっかりしているものの、そこまで大きくない袋を渡された。
「この袋の中にですか?」
本当に服や荷物が入っているのかを確かめるために袋を開けてみると、頭の中にリストが表示された。
そこには〔学生服〕や〔上質なタオル〕等いくつもの項目が存在した。
「これは・・・?」
「こちらは【魔法の袋】となっております。合計500キロまで入れることが可能で、中に入れたものの時間は一切経過しません。しかし生きているものは入れられないのでご注意ください」
そう言われて俺はこの数日のうちに学んだことを思い出していた。【魔法の袋】とは特殊な魔物の胃袋を用いて作られた袋のことである。その魔物の胃袋の中には亜空間が広がっており、大量の食糧をため込むことができる。この袋はその能力を利用して作られている。
「でも、良いんですか? 確か【魔法の袋】ってものすごい貴重なものだって聞きましたけど・・・」
心配そうに聞くとアリアさんはにっこりと笑顔を浮かべて答えてくれた。
「こちらの袋はシャルロッテ様がリュウジ様へのお詫びとして用意されたものです。ですので問題はありません。それと、袋の中には金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨がそれぞれ9枚づつと、銅貨が10枚の合計10万メタが入っておりますので盗まれないようにお気を付けください」
この世界の通貨単位はメタと呼ばれている。1メタが銅貨1枚で、銅貨10枚で大銅貨1枚となっている。そこから10枚単位で銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、王金貨となっている。硬貨はどの国でも共通している。
アリアさんが一歩後ろに下がると、代わりにウェリバーさんが前に出てきた。
「お前さんには1週間という短い時間だったが生きていくために必要な最低限の技術は教えたつもりじゃ。しかし戦いというものは時に予想外のことが起きることもある。じゃから気を抜かぬようにな。もしも機会があれば再びお前さんに剣を教えたいものじゃ。お前さんはなかなか筋がいいからのう」
「ウェリバーさん、この1週間とてもお世話になりました。自分もまたウェリバーさんに剣を教えてもらいたいです。それとその忠告をしっかりと胸に刻みたいと思います」
俺はウェリバーさんに、いや、ここにいる3人に深々と頭を下げて礼を言った。
「この1週間、大変お世話になりました。機会があったらまたいつかどこかで!」
俺は3人に背を向けるとそのまま振り返ることなく、城門を抜けて城下町へと飛び出した。
さてそれじゃあ異世界探検を始めるとするかなっ!




