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第2話

2018/02/13 文章の一部を修正 大筋に関係なし

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」


 俺のその声に触発されたのかそれともほかに何か理由があったのかは分からないが俺以外にもこの部屋にいる4人があたりを見渡し始めた。


 そして4人とも自分の身に起きている異常に気が付いたようだ。


「何なんだい・・・これは」

「一体何なんですの・・・?」

「何なんだよこれは!」

「これはどういう事なんでしょうか・・・」


 4人の性格からわかるかもしれないが上から天乃、霧生院、鬼頭、神無月の順だ。


 彼らの身に起きている異常というのはその髪の色が変わっていることだ。天乃がこちらを向いたときに気付いたことだが目の色も変わっているらしい。


 それぞれ天乃が金髪碧眼、霧生院が蒼髪黒目、鬼頭が赤髪赤目、神無月が薄緑髪金目となっていた。俺がどう変わったかって? そんなの誰も教えてくれないからわかんねぇよ。因みに髪の色は黒のままだった。目線を挙げれば見えるからな!


 そこでようやく天乃が落ち着いたのか俺に意識を向けてくれた。


「えーと、君は確か隣のクラスの・・・・本田君だっけ?」


 マジか!天乃は俺の名前を憶えていてくれたのか!名乗ったのなんて2回あるかどうかなのに!


「あん?」


 その声につられるように鬼頭も俺の方を振り返った。


 ヒッ! やばい超怖い・・・


「えーと、はいそうです。本田龍治って言います。そちらの皆さんの名前は知っておりますので大丈夫です」


 なぜかため口で話したらやばい気がしてつい敬語になってしまった。


「それよりここはどこですの? 先ほどまで交差点にいたと思うのだけれども・・・」


 霧生院の声を聴いてようやく俺も思考停止を辞めて周囲の確認をするために立ち上がった。


 それと同時に確認していないからわからないが、おそらくどこかにあったのであろう重い扉が開くような音がした。


 天乃を含めた4人の視線が向いた方に俺も顔を向けると、そこにはとても綺麗なお姫様がいた。天乃と同じ金髪碧眼の美少女でフリルの付いたドレスを着ている美少女だ。美少女って2回も言ってるし・・・まあそんぐらいの美少女がいた。


「突然のことで混乱されているとは思いますが場所を移してから説明をしたいと思います。これより皆様方4人を・・・・・え? 5人?」


 お姫様っぽい美少女(もうめんどくさいからお姫様でいいや)が人数を数えて首をひねっている。どうやら1人おまけがいるようだ。


 まあ普通に考えて俺だよな。これで天乃がおまけだったら面白いけど。


「んんっ! これより皆様を説明の場へと案内したいと思います。私についてきてください」


 白い部屋の外に出るとそこにはお揃いの鎧を身に着けた騎士っぽい人たち(まあ多分騎士だよな)が5人立っていた。騎士たちはお姫様に礼をすると2人がお姫様の後ろに、残りの3人が俺たちの左右と後ろに立った。俺たちの並び順は、天乃、霧生院ペアの後ろに、鬼頭、神無月ペアが並びその後ろに俺が並んでいる。そのまま長い廊下を5分ほど歩くと、日本ではまず見かけないような巨大な扉が見えてきた。扉の大きさは高さ8メートル、扉の幅が2メートル程もあった。


「でっか・・・」


 あまりの光景につい地が出てしまった。誰も聞いてないよな。


 お姫様が扉に近づくと、扉が勝手に内側へと開いて行った。


「どうぞ中へお入りください」


 お姫様はそのまま部屋の中へと入っていくと、1番奥、王様と王妃様っぽい人が座っている椅子(どこからどう見ても玉座にしか見えない)の横にある椅子に座りこんだ。


 俺たちはというと、その部屋のあまりの大きさや、豪華さに足が固まっていた。多分・・・俺はそうだった。


「僕たちも進もうか」


 天乃の声に従い俺たち5人は多分王様っぽい人(おそらく王様)がいる謁見の間と思われる部屋に足を踏み入れた。


 謁見の間は中央に扉よりも幅の広い6メートルほどの赤い絨毯が玉座まで続いていた。絨毯はフワフワのモコモコでこんなに高そうな絨毯を土足で踏んでもいいのかとてつもなく気になるほどふわふわでもこもこだった。


 そのまま王様の方へと近づいていくと、およそ10メートルほど離れたあたり(玉座は5段ほど高くなっている場所にあり、その1番下の段から6メートルほど離れた場所)で王様の傍で控えている騎士から「止まれ!」と声がかかった。


 その声に従い前を歩いていた2人が立ち止まると、俺の前にいた二人がそれぞれ左右に並んだので、俺は鬼頭を避けるように神無月さんの方へと向かおうとしたのだが、きれいに右が女子、左が男子と別れていたので仕方がなく鬼頭の隣へと並んだ。


「ふむ、まずは突然こんな場所に呼び出して申し訳なかった。どうしても必要だったため君たちを呼ばせてもらった。我が名はファラド・ガイオス・ドラゴステッド、ここドラゴステッド王国の王だ。君たちを呼んだ理由はこの後我が娘、シャルロッテから説明させてもらおう」


 やっぱり王様みたいな人じゃなくて王様だったか、それにやっぱりあの美少女もお姫様だったんだな。シャルロッテか・・・いい名前だな。


「それでは私ドラゴステッド王国第一王女のシャルロッテ・ネリス・ドラゴステッドから説明をさせていただきます」


 王女様の話はこんな感じの内容だった。


 この世界には魔王と呼ばれる存在が居り、そいつが今人類を滅ぼそうとしている。


 人類は今劣勢で、古より伝わる勇者召喚の儀式に頼ることにした。勇者召喚の儀式を行えるのはこの国を合わせて3カ所のみで、この国が最も最前線から遠かったため選ばれたらそうだ。それほど強くないうちに戦いに送り込まれないようにという配慮らしい。


 そして勇者召喚で呼ばれるのは4人と定められており、勇者として呼ばれると勇者力的なものが手に入り、最初からかなり強くなれる。因みに4人の髪と瞳の色が変わったのは、このファンタジー世界に存在する魔力に適応したためで、それぞれの魔力の波長に最も合った色に変化するそうだ。


 だが今回は5人目というイレギュラーが発生した。こればっかりはむこうさんもよく分かっていないとのことだ。


 因みに勇者召喚で呼ばれた勇者は魔王を倒すことによって元の世界へ帰ることができる。


 そんな感じの説明を15分ほどかけて説明された。まあ最近よくあるラノベの設定ぽかったから普通に理解できた。


「これより皆さんにはステータスを確認してもらいます」


「ステータス・・・ですか?」


「はい、これによってご自身のレベルや体力を確認することができます。心の中でも口に出してでも構いませんので“ステータスオープン”と唱えてください」


「「「「「ステータスオープン」」」」」


 そう声に出すと、目の前にA4ほどの横長な半透明の液晶? 的なものが現れた。


「おそらく今目の前に浮かんでいるであろうそれがステータスです。おそらく勇者として呼ばれた皆さんのステータスはHPかMPが4桁に乗っていると思うのですがどうでしょうか」


 俺の間の前に現れたステータスはこうだった。


 ==============================

 名前:本田龍治(リュウジ・ホンダ)

 年齢:16

 レベル:1

 HP:10/10

 MP:5/5

 EXP:0/10

 称号:巻き込まれしもの

 ==============================


 2桁! 2桁ですよ!? しかも超ぎりぎりの! 4桁とか夢のまた夢じゃないか! でもさっき勇者はとか言ってたから俺は勇者じゃあないんだろうなその辺この称号ってのを見ればよく分かるしな・・・何だよ巻き込まれしものって・・・!


「自分のステータスは基本的に自分しか見ることは出来ません。しかし特殊なアイテムを使うことによって他人が見る事も可能になります。それがこの鑑定石です。この石に触れながらステータスを表示させてください。それではまずは・・・1番左の女性からお願いできますでしょうか」


「分かりました」


 神無月は3歩ほど前に出ると先ほどのシャルロッテの説明の最中に騎士が運んできた縦横共に50センチほどで、高さが130センチほどの台に乗っかっている、黒い広辞苑ほどの大きさの石に触れながらステータスを表示させた。


 ==============================

 名前:神無月響子(キョウコ・カンナヅキ)

 年齢:16

 レベル:1

 HP:800/800

 MP:3000/3000

 EXP:0/10

 称号:勇者

 ==============================


 何・・・だと・・・! HPはまだぎりぎりで3桁だがMPが3千だと! ふざけんなよ! 最初から勇者じゃないと思ってたけど差ぁありすぎだろ! このまま行ったら俺が最後だけど俺ショボすぎだろ! ちなみに表示されたのは縦2メートル、横3メートルほどのやはり半透明な液晶だった。


「流石は勇者様ですね。まさかこれほどとは・・・」


「そんなにすごい値なのですか?」


 神無月はとても不思議そうに首を傾げた。くっ、すんごいほんわかしてるからイラっとした気持ちが消し飛んでしまった! 恐るべき効果だ!


「はい、先ほども言ったように勇者となられた方のステータスは4桁に乗ります。この4桁というのは全くいないわけではないのです。我が国の近衛騎士団の上位や、宮廷魔法師団の上位はそれぞれHPとMPが4桁に乗っていますから。けれどそれは、多くの魔物を倒し、レベルが平均して100を超えた状態でです。それでもMPが3千というのは魔法師団長程度でしょうか。なのでレベル1でこの値というのはとてもすごいことなのですよ」


「そうなのですか。それでは次は燈子さんですね」


「分かりましたわ」


 神無月と入れ替わるように霧生院が石へと触れた。


 ==============================

 名前:霧生院燈子(トウコ・キリュウイン)

 年齢:15

 レベル:1

 HP:500/500

 MP:4000/4000

 EXP:0/10

 称号:勇者

 ==============================


 う~わ、レベル1で魔法師団長超えてるし、HP少ないのが玉に瑕だけど俺の50倍あるよ。シャルロッテも口を開けて放心してんじゃん。あ、口閉じた。


「こちらの勇者様、トウコ様も流石ですね。これほどのMPを持った方はいまだかつて見たことがありません。凄いです! 感激です!」


 なんかもう最初のお姫様感が崩れてきてる。やるなら最後までお姫様貫き通せよ!


「次は僕だね」


 今度は天乃か、こいつもきっと壊れステータスなんだろうな。


 ==============================

 名前:天乃光輝(コウキ・アマノ)

 年齢:16

 レベル:1

 HP:2000/2000

 MP:2000/2000

 EXP:0/10

 称号:勇者

 ==============================


 あれ? でもそこまで壊れでもないか? ちらっとシャルロッテの顔を窺うともう何か悟りを開いたような顔をしていた。


「ちなみに僕のステータスはどんな感じなのかな?」


「えーと、はい、コウキ様のステータスは近衛騎士副団長並みのHPと宮廷魔導士副団長並みのMPとなっています。」


「いわゆるオールラウンダーという奴だね」


「そう・・・なりますね」


「そんじゃあ最後は俺か・・・いや、最後じゃなかったな。まあとりあえず行ってくるか」


 鬼頭が最後といった瞬間精いっぱい存在感をアピールしたのが通じたのか鬼頭が言い直し石に触れた。


 ==============================

 名前:鬼頭阿久斗(アクト・キトウ)

 年齢:17

 レベル:1

 HP:4000/4000

 MP:500/500

 EXP:0/10

 称号:勇者

 ==============================


 へ~鬼頭って17歳なのか、浪人したのかなそれとも留年かな・・・なんとなく浪人ぽい感じがするな・・・


 っといかん・・・ちらっとシャルロッテを窺うとこれまた俺と同じように現実逃避していた。「んんっ!」俺が咳払いをすると、現実に意識を引き戻した。


「そんで俺はどんな感じなんだ?」


「アクト様は丁度トウコ様と反対ですね。騎士団長のHPを余裕で超えています。これまたさすが勇者様ですね」


 なんかもう完全に誉め言葉が適当になってる。これならあっという間に魔王とか倒されそうだな・・・


「次は本田だっけか? お前の番だぜ」


 鬼頭が戻ってきたので俺も石へと触れに行った。これまで4回連続で壊れステータスを見せられてきたシャルロッテが俺のステータスを見たらどう思うんだろうか。というか俺のステータスは低いのは分かってるけど平均に届いてるのか?それとも・・・


 ==============================

 名前:本田龍治(リュウジ・ホンダ)

 年齢:16

 レベル:1

 HP:10/10

 MP:5/5

 EXP:0/10

 称号:巻き込まれしもの

 ==============================


 俺のステータスを見るとなぜが周りが安心したようなため息をついた。


「あの・・・シャルロッテ様? ちなみに自分のステータスはいかほどのものなのでしょうか?」


「あっ、すみません。リュウジ様のステータスはこの世界の平均とほぼ同じです。でもほとんどの人が何かしらでレベルを上げているのでレベルが2か3の子供と同じくらいでしょうか。それとリュウジ様には謝らなければならないことがございます。」


「謝らなければいけないことですか?」


 謝らないこと・・・何だ? それよりも良かった・・・俺のステータスはとりあえず平均値前後らしい。これで平均を大幅に下回ってますとか言われてたら正直やばかった。


 まあ今はシャルロッテの言う謝らなければいけないことについて聞くとするか。


「はい、先ほどの説明で勇者召喚で呼ばれた勇者は魔王を倒すことで元の世界に帰ることができると説明しました。それは今回呼ばれた5人が全員勇者であることが前提の発言でした」


「つまり?」


「申し訳ありませんが、仮に勇者様が魔王を倒されたとしても、リュウジ様が元の世界に戻ることが叶いません。本当に申し訳ありませんでした」


 そうか・・・俺は元の世界に帰れないのか・・・


「特に問題ないな」


「え?」


 シャルロッテがポカンとした顔をしていた。


「問題ないとはいったいどういう事でしょうか?」


「いえ、言葉通り元の世界に戻れなくても別に問題ないかなーって、なんかこの世界ものと世界よりも楽しそうですし。それより自分って、魔王討伐とか行かなくてもいいんですよね。こんな低ステータスで行ったら確実に死にますし」


 俺がそういうとシャルロッテは首がもげるかと思うほど縦に振った。


「もちろんです! むしろこちらからお詫びとして一生この城で暮らす権利を差し上げようかとも考えております!」


 一生この城か・・・それはつまらないな。うん、却下だな。


「申し訳ありませんがそれはお断りさせていただきます。代わりにこの世界についての知識を得るために少しの時間と、あとこの先暮らしていくのに必要な最低限のお金をいただけますでしょうか」


「その程度でいいのですか? ほんとのほんとですか? あとからやっぱりこの城で暮らしたいと言われてもだめですよ!?」


「はい、せっかくこんな楽しそうな世界に来たんだから冒険もしたいですし」


「分かりました。それではリュウジ様にはこれからしばらくの間お詫びもかねてメイドを二人ほどつけさせてもらいます。図書館や訓練場にはメイドに伝えてもらえれば自由に行けますので。この度は本当に申し訳ありませんでした」


 シャルロッテが頭を下げるのとほぼ同時にどこから現れたのか2人のメイドが近づいてきた。


「リュウジ様のお部屋はこちらとなっております。どうぞついてきてください」


 メイドさん・・・いいな・・・ってメイド服に集中してる場合じゃない。置いて行かれたら普通に迷ってしまう。


 他の4人に声をかけないってことは多分まだ話があるんだろうな。勇者としての役目的なものが。俺はもう関係ないし魔王討伐いち抜けたっと。


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