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098話 ※とあるメイド長※

潜入作戦でのミネルの失態

そして家政婦は見た

 的な話を書いてみました (。・ω・)ノ゛


 5-11.※とあるメイド長※



  ※ ※ ※ メイド長 リンナ 視点 ※ ※ ※



 私の実家であるディナニムル家は代々、ミクシオロン公爵家の皆様に仕えさせて頂いてきました。


 数年前、私は母からある方の〝専属メイド〟として仕え、今ではメイド長の座を受け継いで働かせて頂いています。〝ある方〟というのは、ミクシオロン家現当主の奥様です。


 お名前は『ミリアーナ=J=ミクシオロン』様。


 エメラルド宝石の様にとても綺麗な髪で、肌も白く、とても美しい方です。旦那様との間には男児が産まれ、とても幸せなご家庭だと思われるでしょう。


 誰もが憧れるご婦人。しかし・・それでも、幸せとは決して言えません。


 ミリアーナ様は、お子であるレギオール様をご出産なされてから、重い病に罹ってしまわれたのです。


 それからの毎日は、ほぼ室内での暮らしとなりました。レギオール様を身籠られた時は「お腹の中に居る子に、自分の好きな花を見せてあげたい」と仰られ、庭にある花畑を楽しそうに鑑賞なされてらしたのに。


 今では「あの花は咲いたかしら?」「黄色い花は、まだ咲いているのかしら?」と窓の外を眺めながらポツリと呟くだけとなってしまいました。



 そんな奥様に、お子であるレギオール様は毎日会いにお越し下さいます。時々、主治医の方から断られる事もありますが、それは仕方がないとちゃんと理解して頂ける。


 とても利口な__いえ、利口すぎる様に感じてしまいますね。


 レギオール様も、ミリアーナ様の夫であるご当主様も密かに泣いている事は我々ミクシオロン家に仕える者、全員が知っています。


 特にレギオール様は、ご自分のせいでミリアーナ様を苦しめているとお思いになられている様で、とても心苦しく思います。








 今日、このミクシオロン公爵家へ初めて訪問なされる方がお越し下さいました。


 モンテネムル侯爵家の御令嬢であるアンジェラ様です。


 少し前に、この御方が『聖女』であると国からの発表がされました。そんな御方の来訪に、我がミクシオロン公爵家に仕えるメイドや執事が朝から慌ただしく動きます。


 そして、ミクシオロン公爵家の門に黒く独創的な装飾が施された馬車が止まりました。


 すぐに若いメイドや執事を整列させます。公爵家に仕える者なのですから、身だしなみが歪んでいてはなりません。清潔感・節度を守り、相手に不快感を与えない為にも必ず確認を行ないます。


 そして、漆黒の馬車に取り付けられた扉が開き、降りて来られたのは1人の執事でした。その執事の後、1人の少女が姿を現します。


 その少女は馬車に施されている装飾と類似した服を身に纏っていらっしゃいました。黒い髪に黒い衣装。そして、それとは対照的な白く綺麗な肌のお嬢様です。そして少し・・・少しだけ恐ろしくも感じてしまいました。


 執事の手を借り、馬車からお降りになられたのはモンテネムル侯爵家の御令嬢、アンジェラ様でした。


 本日の重要なお客様であるアンジェラ様は、そのまま玄関の方へ向かわれます。ただその時、聞いてはならない音を私達は聞いてしまいました。



 プスッ



 非常事態でした。緊急を要する事態です。おそらくは、アンジェラ様から身体の生理現象である空気の排出音が聞こえてしまったのです。


 アンジェラ様も人間です。この現象は仕方がない事。しかし、侯爵家のお嬢様に失礼が無いよう、皆が聞こえなかったフリをしなければなりません。ここで笑おうものなら首が飛ぶでしょう、物理的に。


 「・・・アンジェラお嬢様、申し訳ありません。今のは私のでございます」


 「・・・そう。気を付けなさい、セバス」


 自分が仕える令嬢に恥をかかせない為に、身代わりとなる。執事として立派な役割でございました。


 ただ、少し不思議なのがあります。先程の音は、何故かアンジェラ様より少し後方で聞こえたと思ったのですが・・・まぁ、気のせいなのでしょう。




 玄関でお待ちになられていたレギオール様が挨拶をなされ、アンジェラ様をご案内して共に客室の間へと入って行かれました。


 お二人のお世話は若い者達に任せます。私はお出しする御茶菓子や、アンジェラ様から頂いた茶葉をポットへと移し客室へと持って行きます。


 無事に届け終えた後の事でございました。廊下で、少しの違和感を感じたのです。


 これは・・・焼き菓子の香りでしょうか?


 しかし、今回お出ししたのはケーキにございますから、この香りとは別物のはずです。という事は、メイドか執事の誰かが休憩として焼き菓子を食べていた、という事になります。しかし、この様な廊下で?


 大事なお客様が来るというのに気が抜け過ぎていますね。これは由々しき事態です。



 「・・・んまっ!?」


 なんと、廊下にはその焼き菓子だったらしき粉まで落ちているではありませんか!これは許される事ではありません!


 しかも、です。廊下に飾られている美術品や絵画にも汚れがあり、お菓子を食べた手で触った痕跡が残されていたのです!信じられません!


 ・・・これは全体責任としてメイドや執事、全員を再教育しなければなりませんね。手加減なく、容赦なく、徹底的にです。






 アンジェラ様が客室からお出になる前に、なんとか綺麗に掃除を終えました。本当に危ない所でした。この事は、あとで執事長と相談すると致します。ええ、必ず。


 その後、レギオール様とアンジェラ様はミリアーナ様にお会いになるそうで、別邸へと向かわれました。


 この別邸は旦那様が準備なされた特別な造りで建てられた物。奥様に何不自由なく暮らして頂けるよう、特別に手配された建物です。


 今日の奥様はいつもよりお元気な様子で、食事も主治医が決められた配分を無事に召し上がって頂けました。



 アンジェラ様は何やら遠方で作られているという珍しい霊薬が手に入ったとの事で、ミリアーナ様へ届けに来て下さったそうです。


 もちろん、主治医の許可がなければミリアーナ様にお与えになるのは不可能です。さっそく主治医に来てもらい、その霊薬を確かめてもらいます。


 その主治医から、ミリアーナ様が口にしても良いとお認めになられたので、さっそくお水を用意し、奥様は服用なされました。


 その後、レギオール様とアンジェラ様がミリアーナ様と話す姿を嬉しく思い、眺めています。


 数十分後、ミリアーナ様が休みたいと仰られ、レギオール様とアンジェラ様が退室なされます。先程の客室へとお戻りになられるのでしょう。


 私は部屋のカーテンを閉め、ミリアーナ様のお布団を整えてから退室しました。


 メイド達にミリアーナ様がお休みになられた事を知らせ、静かに行動するように伝えます。



 アンジェラ様も帰られて、無事に聖女様の来訪を終える事ができました。


 もちろん、廊下で見つけた焼き菓子についてをメイドや執事に問いました。ですが、結局は犯人が分からず、全体責任にとして処理します。もし、次に同じような事があれば、全員が減給処分です。







 次の日、我々に喜ばしい出来事が起こりました。


 奥様が、ミリアーナ様が気分がとても良いからと外へ出て庭を歩きたいと仰られたのです。


 今までは動くのも憂鬱となされていたのに、です。この言葉には本当に驚きました。急いで主治医を叩き起こし、引っ張って来ました。


 主治医からは、驚くくらいに病が回復へと向かっていると教えて頂きました。その言葉で、私達メイドは全員が泣いて喜びました。


 きっと・・・ええ、きっと、昨日アンジャラ様から頂いたお薬が効いたのでしょう。本当にありがとうございます、アンジェラ様。


 ただ、完全には治っていない状態との事なので、車椅子での移動となりました。本当は歩きたいと思われていたかもしれませんが、主治医の判断には逆らえません。それでも、ミリアーナ様が外へお出になる事がとても嬉しく思います。


 あぁ、ちゃんと日傘も用意しなければ。いえ、それよりも旦那様やレギオール様にも報告を。なんて素晴らしい日なのでしょう。





 ただ、残念な事が一つありました。


 先々代が着用していたとされる素晴らしい鎧と盾から、宝石が1つずつ無くなっている事にメイドの1人が気が付いたのです。


 公爵家の警備で、今まで泥棒が侵入した事なんてございません。もしかして、この公爵家に仕える者の中に犯罪を犯すような愚か者がいるかもしれないという重大な事件でございました。


 ですが、何故か旦那様はこの重大な事件を捜査する必要は無いと判断をなされました。しかも、「犯人は分かっているから大丈夫だよ」との事です。


 しかし、あれから誰1人として仕える者が辞めた気配はありません。泥棒が入ったという情報も・・・いったい、どういう事なのでしょうか?



  ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




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