096話 新たなスキル習得
5-9.新たなスキル習得
タジル達は上級ダンジョンへと旅立った。
俺が昔に渡した『聖女のお守り(もどき)』も、みんな大事に持ってくれてたみたい。すんげー嬉しかった。
なので俺は、そのお守りを『超・聖女のお守り(もどき)』にパワーアップさせた。入っていた髪の毛を増やしただけなんだけど。でも、効力は上がっているだろう。みんな、無事に帰って来いよ。
「ミネル、紹介するわ。この人は私の専属執事、名前は『セバス』よ。覚えておいてね」
今日もモンテネムル家の豪邸に招待された。そして、第三回『王都疫病事件』作戦会議を行なう事になりました。ゴスロリ馬車での送り迎いは本当に止めてほしい。トホホ・・・
作戦会議の前に小夜さんから紹介されたのは、ダンディーなオジ様執事。ビシッ!ときめた執事服が似合う人だった。髭があったら完璧だったのに。
その執事さんは、少し困った顔をして小夜さんを見る。
「あの・・いえ、私の名前は_____」
「『セバス』よ。ねぇ、そうでしょう?『セバス』?」
その小夜さんは、とても可愛らしい笑顔で執事さんの言葉を遮り本人に言い放った。
「・・・はい。私の名前は、その通り『セバス』にございます、アンジェラお嬢様。ミネル様、どうぞよろしくお願いします」
・・・セバス(仮)さん、なんて哀れな。 (ノω=。)。。。
「それではミネル、作戦を立てましょうか。『あの事件』についてね。セバスは大丈夫よ、この人の口の堅さは私が保証するわ」
「本当に?本当に信じるよ?セバスさんが誰にも喋らないって」
「ええ、信じて。もし、セバスが私とミネル以外の誰かに話した場合、セバスはもちろん、知ってしまった人は全て私が処分するわ。それが例え、王族や実の両親であったとしても・・ね」
「え、いや、実の両親って、別にそこまで・・・」
「全責任は私が負うわ。だから、安心して」
あんの~、小夜さんや?後ろに控えているセバスさんが青い顔でプルプルしてんだけど?〝ゴクリ〟とか喉の音が俺にも聞こえるくらいの大きな音だったんだけど。
アンジェラの部屋でお菓子を食べながら作戦会議。
俺達が部屋へ入り、メイドさん達がお茶菓子などの準備を終えて出て行った。すると、同時に小夜さんが闇魔法の隠蔽魔法で部屋全体に結界を張る。盗聴対策みたい。
会議中、セバスさんが青い顔から白い顔に変化してたけど大丈夫だろうか?魂が抜けてないか?別に強盗とか殺人の作戦会議ではないから安心して下さい。
「つまり、俺がアンジェラに変装して王都中にいる感染者を治療して周ればいいのか?」
「ええ、そうよ。補佐はセバスに頼むけど、ミネルは決して無駄に喋らないで。私の≪ダーク・ペイント≫の変装魔法は姿を変えられても、声までは無理なのよ。一発で私では無いとバレるわ」
「分かった。気を付ける」
「呪文の詠唱は小声でね。ただでさえ呪文はよく響いてしまうから気を付けて」
「はーい」
「そういえば確認なんだけど、ミネルは『無詠唱』を使えるの?」
・・・は?『無詠唱』?何それ、そんなの乙女ゲームには存在しなかったぞい?
俺は首を横に振る。小夜さんは少し残念そうだった。
「じゃあ、仕方ないわね。呪文詠唱は本当に気を付けて、バレちゃうから」
「あの、その前に無詠唱って?そんな事ができるのか?」
「ええ、見てて」
小夜さんはそう言って、花瓶に人差し指を向けると「・・・≪ダーク・スピア≫」と口にした。
すると小夜さんの影から槍が現れて花瓶を串刺し。セバスが倒れた。
え?何、今の・・・マジで?マジで無詠唱?
「・・・それ、どうやったら出来るの?」
「無詠唱の事よね?これは、魔法のイメージを頭の中で確かな再現にする事と『大精霊との契約』が必要になるわ」
イメージを再現。そして大精霊との契約・・・え?契約?
「その顔からして気付いたみたいね。そうよ、私は『闇の大精霊 ジェスバン=ダークナイト』と契約しているの」
次の日、孤児院の庭で座り込んでいる俺。そんな俺を眺めているダイアナさんが傍で浮遊している。遠くの場所では、子供達の楽しそうな声が聞こえた。
「ねぇ、ダイアナさん。大精霊との契約で無詠唱が可能になるって本当?」
【ええ、そうよ。私、言ったでしょう?〝大切にしてね?〟って】
ダイアナさん、〝大切にしてね?〟と〝無詠唱が可能になるわよ?〟はまったくの別の言葉だと俺は思うよ?
試しに樹の精霊からもらった種を土に植え、樹魔法の成長魔法を詠唱破棄で発動。土からピョコン!と黄緑色の芽が出てきた。
マジか、マジで無詠唱か。
でも、どういう事だろうか。乙女ゲームではレギオが〝火〟〝水〟〝風〟〝土〟〝樹〟の大精霊たちと契約したのに『無詠唱』や『詠唱破棄』なんてスキルは覚えていなかった。もしかして裏技的な設定?分からん。
○ ● ○ ● ○ ● ○ ●
「いい?秋斗君。魔法にとって〝イメージ〟は大事よ。魔力の削減、魔法の威力、精霊の協力、その全てに反映されるの。だから、コレは練習しておいて損はないわ」
「うん、やってみる」
「それとね、秋斗君は樹の大精霊と契約してると言ったわよね?もし、『大精霊の召喚』をするのなら気を付けてね。アレをすると次の日、体調不良で動けなくなるから。覚えておいて」
○ ● ○ ● ○ ● ○ ●
大精霊の召喚。
小夜さんが昨日言っていた事を思い出す。この召喚魔法は知っている、乙女ゲームでレギオールが使えたから。
MP量がトップレベルのレギオールでも、半分以上を消費してしまう大技だった。
でも、次の日に動けなくなるのは初めて知った。ゲーム設定と、この世界では違いがあるらしい。ありがとう、小夜さん。気を付けるよ。
「ねぇ、ダイアナさん。光の大精霊ってどんな人なの?」
俺の主軸になっている光属性。出来れば、その人とも契約をしておきたいのでダイアナさんに尋ねてみた。
【え?『光の大精霊 セレーナ=アークライト』の事?あれ、会っていないの?】
ん?〝会っていないの?〟ってどういう事なのん?
俺は首を傾げた。
【そうなのね、もうあの子ったら・・・光の大精霊セレーナはとても寂しがり屋な子よ。そして、とても恥ずかしがり屋。ミネル君って、この王都で光の最大魔法を二つ連発した日があったでしょう?】
「うん、大聖堂消滅事件の時に使っちゃった」
【その日にね、この大陸中の光の精霊達が急遽この王都に集まっちゃったのよ。〝ミネルが 呼んでる〟〝ミネルが 呼んでる〟って】
この大陸中!?いやいやいや、俺別に〝おいでー〟とか言ってないぞ!?そんなに来てたのか!?
はっ!だから、あんなバカみたいな威力になっちゃったのか!そういう事なのか!
【で、寂しがり屋のセレーナは周りから精霊達がどっかに行っちゃうものだから着いて来ちゃったのよ、この王都に。だから、その時にミネル君も出会っていると思ってたのだけど・・・あの子の恥ずかしがり屋も筋金入りね】
そ、そうなんだぁ。
一応、ゲームの攻略情報で光の大精霊の絵を見た事はあった。凄く綺麗な金色の長い髪で、お淑やかそうな幼女でしょう?でも、ゲームの通常ストーリーには登場しなかったから、クリア後の登場人物なのかと思ってた。
「じゃあ、『闇の大精霊 ジェスバン=ダークナイト』はどんな人?」
この人も絵だけは知っている。一言で言うなら〝ジェントルマン〟だな。けど、性格とかは全く知らない。闇の大精霊も通常ストーリーで登場しなかったから。
【あ~、えーと、あの人はぁ・・・・なんていうか、ねぇ?】
いや、〝ねぇ?〟って言われても。
【闇の大精霊ジェスバンは、光の大精霊セレーナに求愛中よ。それはもう、しつこいくらいに。寂しがり屋なセレーナが引くくらい熱烈的にね】
・・・・お、おう。『幼女姿』のセレーナに熱烈な求愛中。はい、俺、察しました。
見た目が紳士なのに・・・知るんじゃなかった。残念過ぎるキャラ設定だろう、おい。
【実はジェスバンの事は、私もよく分からないの。本当、何考えているんだか。『魔王』だって___あ】
「え、魔王?なんですか、ダイアナさん。〝『魔王』だって〟って?」
【・・・ごめんなさい、ミネル君。これは知っちゃダメな事なの。だから言えないわ、決してね】
あの、なんでもヅケヅケ話しちゃうダイアナさんが?
『魔王』と『闇の大精霊』
この2人に何か関係があるのかな?確かに魔王は『闇』が主軸だった。もしかして俺が気にしていた、あの〝笑顔の死に方〟にも関係しているかもしれない。