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092話 レギオのトラウマイベント


 5-5.レギオのトラウマイベント



 小夜さんのBL症状の重篤加減を確認したあと、あの美味しかったケーキもペロリと食べ終わりました。


 さすがは貴族様が食べているお菓子。激ウマ過ぎて、値段を聞くのが恐ろしい。上に乗っていたチェリーやイチゴも輝いて見えた。


 「秋斗君。今はそんな事より、大事な話があるでしょう?分かっているわよね?」


 小夜さんが真剣な顔で俺を見てきた。まぁ、それを確認する為に今回、招待されたんだもんな。



 「うん、『レギオールのトラウマイベント』だよな?」


 乙女ゲームで、そろそろ起こりうるイベント。そして、これがレギオール=J=ミクシオロンのトラウマとなる重大な事件。



 「そう、攻略キャラであるレギオールのトラウマとなる『病魔師』による『王都疫病事件』よ」



 そうなんです。俺が前々から心配していたのがコレ。王都中に蔓延してしまう疫病。この疫病は、はっきり言って殺人ウイルス。このゲームの製作者が、どれだけ頭がイカレているか分かる大事件だ。


 その犯人は、魔王軍の幹部の1人、『病魔師』だった。


 そして、ヒロインちゃんである聖女ミネルソフィ=ターシアが、初めて聖女として力を覚醒させた重要なイベントでもある。


 ・・・あ、はい。そうです、そんな重要で重大な事件を忘れていましたです、ごめんなさい。



 でも、でもでも、事件が起きる前に思い出したのだから問題なし。文句は聞きませんので。


 そして、この事件のせいでレギオールの大切な母親が亡くなってしまう、という物語だった。


 それが、乙女ゲームに設定されてあったレギオールのトラウマ。


 この事件の後、騎士団の調査で犯人が魔王軍だと分かる。なので、レギオールにとって魔王軍は憎い仇となり、その幹部の病魔師はレギオールが本気で殺したい人物となる。


 最終ダンジョンの魔王城、疫病事件の犯人である病魔師と戦闘する場面があり、その時は魔術師レギオールを必ず戦闘パーティーに加入させなければいけなかった。




 「この事を思い出した時、私は絶望したわ。乙女ゲームでの聖女はミネルソフィ=ターシア。光を主軸にして、光の女神から加護を授かり産まれてくる聖女でないと、この伝染病を治せないんだもの」


 小夜さんの表情が暗くなった。


 「という事は、小夜さんの役であるアンジェラ=K=モンテネムルは、やっぱり闇が主軸なの?」


 「ええ、そうよ。・・・なのに、それなのに王国と教会はこんな私を聖女として認定しやがりました。本当に迷惑だったわ」


 あ、うん、ごめんなさい。俺が教会で行なわれる属性検査を受けなかったから・・・。


 あれ?でも、その場合って女性のアンジェラが『聖女』になってしまい、男性になっちゃったミネルソフィ(つまり俺)が『勇者』になってたかも?


 まぁ、検査を受ける気が無いから分かんないけどさ。真実は闇の中ッス!


 「私は・・・私はその事を思い出し、急いでミネルソフィ=ターシアを探し回ったわ。始まりの町リナリクトの孤児院、ヒロインの父親であるターシア男爵家、教会でなされた属性検査の結果資料。あらゆる物、全てを調べたわ」


 「あ~・・・」


 「なのに・・・それなのに、貴方は何処にも居なかった。本当に絶望したのよ?私」


 小夜さんが俯く。


 本当にごめんなさい。すんげー逃げてました、ターシア家の捜索隊から。


 確かに、闇が主軸の小夜さんではこの事件を解決できない。つまりその結果、王都でかなりの死者が出てしまう事に。それが怖かったのだろう、今まで。


 「でも・・・でも、数日前にレギオールが言ったの。その言葉で、私は希望が見えた気がした」


 「レギオが?」


 「ええ・・・君ではない、ある人物が聖女なのだと私に言ったわ。私は偽物だと非難された。でも、その言葉が私にとって待ち望んでいた言葉だった。すぐにミネルソフィ=ターシアが、この世界にちゃんと存在していると喜んだわ」


 「あ~・・・」


 たぶんレギオは聖女が2人もいる事に、疑問となったのだろう。国が認めた聖女アンジェラは、本当に聖女なのか知りたかったのかもしれない。


 「でも、その人物についてをレギオールは中々話そうとしなかった。教えてと頼んでも〝僕が言うと思うかい?〟とか〝秘密事項だよ〟と言うばかり」


 レギオっち、俺の事を秘密にしてくれてたんだ。ありがとな。


 俺が聖女だと国にバレたら、すごく面倒な事態になってしまう。王都から逃げようにも、もうすぐ起こる王都疫病事件があるから王都から離れられない。


 「だから、仕方ないから・・実力行使に出たわ。私も必死だったからね。それで、やっと口を開いた」


 レギオ、乙!


 今のレギオってば、もう必殺技まで使えるのにな。そのレギオよりも、黒き魔女としての能力が発揮されているチートな小夜さんの方が強かったか。



 「それで・・・確認よ、秋斗君。貴方の属性は『光』が主軸なの?女神様の加護は有る?」


 「うん、光が主軸。加護は、たぶんだけど有るよ。ついでに言うと、乙女ゲームに登場したミネルソフィ=ターシアよりもチート級になってる」


 なんたって最大上級魔法である消滅魔法や、蘇生魔法だって成功させたし。ぶっ倒れたけどな!


 「じゃ、じゃあ・・・」


 「うん、だから王都疫病事件が発生しても、乙女ゲームのストーリー通りに人々を救う事は可能だと思う」


 「そう、なのね・・・良かった、本当に・・・本当に、よかっ___」



 その後、小夜さんはしばらく静かに泣き続けました。それほど怖かったのだろう。きっと親しい人とかも居て、この王都に暮らしているのだろう。その人達が何人も死んでしまうと思い、ずっと頑張ってきたんだと思う。


 彼女が少し落ち着き、今日はこのくらいにして明日また来てと頼まれた俺はモンテネムル邸をあとにした。






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇






 レギオっちが壊れた。



 「ミネル、はいコレ。今、とても人気な高級お菓子セットだよ。受け取ってくれるよね?」


 「わ、わ~い。ありがとう、レギオ」


 「喜んでくれて嬉しいよ。ミネルの事を思いながら選んだよ」


 「う、嬉しいなぁ。美味しそ~、ありがとな!」


 「いいんだよ、ミネル。僕の大切な『友達』である君に会いに来たんだ。手土産は当たり前だからさ」


 「う、うん」


 「・・・」 にこにこ


 「・・・・・・」 びくびく


 「孤児院へ入って良いかい?ミネルと、もっと話しがしたいな」


 「ど、どうぞ、どうぞ」



 お前は本当に、あのレギオールか?一体どうした?


 俺が恐れていた事が現実となってしまった。あの可愛い笑顔だったレギオが、とうとう乙女ゲームのレギオールみたいに作り笑いをするようになってしまったのだ。


 子供らしい可愛かった笑顔が消えてしまった。ゲームの強制力が働いてしまったのだろうか。それともアンジェラに頭を強打されて部品が飛んだか?


 ああぁ、あの日のレギオはもう帰って来ないのだろうか・・・



 ・・でも人気という高級お菓子セットはありがたく頂きますですよ。うへへ。




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