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091話 行ってみよう!貴族の屋敷


 5-4.行ってみよう!貴族の屋敷



 俺は今日、侯爵家の大豪邸に招待されました。


 手土産は庭にできた果物(無料)。手土産が果物だと病人へのお見舞いイメージがあるが、俺は気にしない。だって、ここ異世界だもん。


 朝、孤児院に尋ねてきたのはビシッ!と執事服を着こなした執事の方が3名。モンテネムル家の使用人らしい。


 そして、案内されるままに路地裏を通り大通りへと出たら、ゴスロリ風の真っ黒い馬車がお出迎え。まさかの馬までもが黒色という拘りよう。ここまできたら恐怖すら感じる。


 でもさ、ちょっと待って。コレに乗れと?・・・俺がっ!?



 周りの人達から注目を浴びる真っ黒い怪しげな馬車。それを見て、俺はクルリと踵を返した。


 だが、執事達に両側からガジッ!と捕まり、俺は「さぁ、どうぞ」と言われながら馬車へ押し込まれた。その執事達も平然と馬車内に入る。


 ・・・・・は、恥ずかしい。


 恥ずかしいよ、小夜さん。これはない、これはないだろう。普通の馬車が良かったッス。


 俺は到着するまでの間、顔を真っ赤にして窓から顔が見えないように俯いた。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 アンジェラの実家は王都にある貴族街にある。その貴族街へ入るには、入場門を潜らなければならない。


 入場検査とか無くて安心した。いかにも怪しい人物でもない限り、入る事が出来るらしい。門に立っている兵も、ただ毎日そこに立ってるだけに近い。そういえば前に一度、トコトコ貴族街に歩いて行ったら入れたな。


 この馬車にはモンテネムル家が所有しているという証の紋章が車体に描かれている。なので、止められる事は絶対に無い。



 到着したモンテネムル家の本邸は、それはもう凄かった。


 大きな屋敷に、綺麗に整備された庭園。たくさんの庭師やメイドや執事達。噴水まである。ザ・金持ち感がする、さすがは侯爵家。


 馬車から降りると、平民の俺に対して綺麗なお辞儀をする執事やメイドさん達がズラリ。その間をビクビクしながら通り抜ける俺。



 「おはよう、ミネル。モンテネムル家へようこそ」


 豪華な造りの玄関にある扉を潜り、案内されるがままに美術品が置かれた広い廊下を歩いていく。残念ながら赤い絨毯は無かった。


 廊下でメイドさんに会ったけど、俺が通り抜けるまでお辞儀をしてくれた。すんません、俺、平民なんです。


 そして、俺の案内便も終点らしく、ある扉の前で止まり執事がノックする。中から、女性の声で「どうぞ」という言葉が聞こえて扉が開いた。


 室内に居たのはメイドさんと、昨日と少し作りが違う黒いゴスロリ服を着たアンジェラ。つまりは小夜さんだ。



 小夜さんが、執事とメイド達に「下がっていいわ。私の許可が無いかぎり入って来ないでちょうだい」と命令した。その言葉にお辞儀をして、部屋から出て行くメイドたち。そして、俺を案内してくれた執事さん達によって扉が閉じられた。


 「さぁ、美味しい飲み物とお菓子を用意したわ。どうぞ座ってちょうだい、秋斗君」


 「あ、ありがとう、ございます」


 す、すごい部屋だ。全てが黒くてフリルが満載。〝黒魔術をしています〟と言われても納得しそうだ。


 え?女の子の部屋って、こんな感じなの?もっとピンクな世界だと思ってた。家の姉さんと奇抜さでは互角くらいだと思う。


 姉さんの部屋は天井からサンドバックが吊るされ、部屋の壁には有名格闘家の写真がズラリ。


 その並ばれた格闘家たちの写真の中に、この乙女ゲームの第2王子であるエルナルドのイラストポスターが貼ってあるので、王子様も有名格闘家の1人みたいになっていた。


 「小夜さんは黒色が好きなの?凄い拘り様だけど」


 「いいえ、好きな色は青よ?」


 「えっ!?じゃあ、なんで部屋がこんなにも黒一色の世界になっちゃったの?」


 「せっかく〝悪役令嬢〟で〝黒き魔女〟に転生したんだもの、キャラ設定は大事にしないと。これは拘りであり美学よ、秋斗君」


 「な、なるほど・・・」


 うん、なるほど分からん。


 頭が良い人なりの考えがあるのだろう。お馬鹿さんの俺には分からない領域なので天文学的な何かなのだろう。



 「御招待、ありがとうございます。でも俺、執事さんやメイドさんからもっと変な目で見られるかと思ったよ。平民の俺が侯爵家の本邸に来たんだから、こう〝平民風情が〟とか〝侯爵家の敷居をまたぐな〟とか言われるのかと思った」


 「ふふっ、そんな愚かな行為は誰もしないわよ。私の大切な客人が来ると知らせておいたからね。もし、そんな無礼な事をされたら教えてね。ちゃーんと処理するから」


 「う、うん、分かった。どうも、ありがとうござマス」


 「いえいえ。さぁ、お菓子でも食べましょう」


 そう言って、俺達は激ウマなケーキを食べた。俺はもちろん、おかわりをしまくる予定。貴族様御用達の高級ケーキだぜ、ひゃっほい!



 ケーキの1つ目を食べ終えた後、俺はある物を鞄から取り出した。


 「あの、小夜さん。この本の事だけど・・・・」


 その〝ある物〟とは、厳重な封印を解いて持ってきた書物。小夜さん著作の『魔本(BL本)』だ。それを孤児院から持ってきたので見せてみる。


 「あら、私の新刊じゃない。買ってくれたのね、嬉しいわ」


 いえ、ごめんなさい買ってはないです。レギオが「いらない」と言うので貰いました。


 「なぁに?あ、サイン?ちょっと待ってね、今ペンを___」


 「えっと、そうじゃなくて、何故にこの乙女ゲームの世界で『腐教』を?」


 これは是非とも聞いておかねばならない。ここは乙女ゲームと似た世界。BL要素は必要ないのでは?



 「あら、何故ってそれは私の趣味と実益と才能と実家の権力を駆使したからよ?それがどうかしたの?」


 「え~と、乙女ゲームなんですから、これはマズイと思うんですけど~」


 「何を言っているのよ、秋斗君。これは私の人生。私の世界よ?私の自由にして誰に迷惑がかかるというの?」


 OH・・なんだろう、この家の姉さんを彷彿としたような考え方。唯我独尊で天上天下な御人だ。


 「つまり、小夜さんは昔からボーイズがラブってる本を書いてたの?」


 「ええ、若い頃はコレで小銭を稼いでいたわ。毎年、同人誌即売会で稼いでいたのよねぇ。仕事してからは、給料の4分の1はBL関係につぎ込んでいたわね」


 大企業に勤める社長秘書の一か月の給料ってナンボなのん?恐ろしいが聞きたい。だが、やはり恐ろしい。


 「さすがに結婚してからは____」


 「あ、止めたんだ?」


 「秘密のアパートを借りて、旦那には内緒でコレクションしていたわね」



 BL患者、恐ろしや。




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