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090話 ミネル vs アンジェラ !?


 5-3.ミネル vs アンジェラ !?



 頭を押さえた涙目のレギオと、ドン引きして耳が垂れているフェイが部屋から出て行った。


 今、この部屋に居るのは悪役令嬢役のアンジェラちゃんと、ゲームでヒロインだったミネルソフィ役の俺。それと、俺の背後でプルプル震えている精霊達だけ。


 精霊達も彼女の凶行に、すっかり怯えております。俺はちょっと平気。暴力魔神である俺の姉ちゃんと一緒に暮らしていたから慣れている!



 「まずは自己紹介ね。初めまして、私はアンジェラ=K=モンテネムル。侯爵家の娘で、この国が認めてしまった聖女として、聖女アンジェラと呼ばれているわ」


 先程までの行ないが嘘かのように、ちゃんとした淑女の挨拶をするアンジェラちゃん。


 「初めまして、俺はミネル。ここに住んでいる孤児だよ。あっ、貴族様なら敬語の方が良いのかな?」


 「別に気にしないわ。よろしくね」


 「うん、よろしく。でも、俺は〝ミネルソフィ=ターシア〟って名前じゃなくて、ミネルだから」


 「そう・・・分かったわ、ミネル」


 「えーと、まずはお客さんだし、お茶でも入れてくるよ」


 「待って。そんな事より、ミネルにお願いがあるの。これから私と一緒に教会へ来てほしいのよ」


 なんだかプロポーズみたいなセリフを言われてしまった。聞く人によっては「おめでとー」と拍手されそうだ。


 しかし、教会かぁ。それは、いや~な予感がする。というか、嫌な予感しかしない。


 「ミネル、よく聞いて。今、あなたが思いもよらない出来事が、この王都で起ころうとしているの。だからお願い。私と一緒に教会へ行って、属性検査を受けて欲しいのよ」


 え、属性検査?


 あ~なるほど、そういう事か。彼女もこれから、この王都で起きてしまうイベントを知っているという事か。でも、うん、ごめん。ぜ~~~っ対に嫌だ。



 「ごめんなさい。行きたくないです」


 俺は頭を下げて、お断りした。


 教会へ行って属性検査を受けてしまったら、俺が全属性を使える事が知られてしまう。もしそうなれば、この王国や教会に囲われてしまう。俺は、物語通りの聖女ミネルソフィから逃げ続けてみせる!


 「・・・ダメよ、ミネル。認めないわ。本当に大変な事案なの。だから・・・力尽くでも貴方を連れて行くわね」


 おっと、これはマズイ。アンジェラの黒い瞳が赤く輝き、周りに黒い靄が溢れだしてきた。マジだ、この人。


 というか、もう魔王幹部にまでなった『黒き魔女』としての力が使えるのん?すげーな、さすがは転生者。チートじゃん。


 あのレギオが、日傘で頭を殴られたのに渋々従ったのが頷ける。






 乙女ゲーム 改め 無差別格闘ゲーム『戦え!愛よりも深く~拳で繋がる恋もある~』


 タイム無制限  3ラウンド制  勝利条件:2ラウンド先取



 1ラウンド


   『聖女』ミネル V.S. 『悪役令嬢』アンジェラ=K=モンテネムル



   レッツ! れでぃ~~   あたっく☆  カーン!




 いやいやいや、()んねぇよ!?こんな室内で戦うわけないじゃん!なんっすか、この戦闘民族さん。


 場所、場所を考えて!


 聖女と悪役令嬢だから、もし乙女ゲームの設定でいうと互角。『光』と『闇』だから、お互い得意であり苦手。


 アンジェラちゃんはバリバリの攻撃魔法型。しかも支援系の魔法が多いミネルソフィと違って、得意なのが闇属性の消滅魔法。マジで化け物だった。


 そんな魔法合戦を、こんな屋内__っていうか大事な孤児達が住む孤児院で出来るかいな。孤児達はフェイとレギオが守ってくれたとしても、孤児院が消滅する。


 でもアンジェラには関係なさそうだし、あれは本気だ。くそっ、仕方がない___



 「その〝大変な事案〟って『レギオールのトラウマイベント』の事かな?」


 「・・・えっ?」


 アンジェラは目を丸くして動きが止まった。体の周りに溢れ出ていた黒い靄もポフッと霧散する。


 仕方ないとはいえ、言ってしまった。さすがに、こんな場所で暴れる訳にもいかなかったから。



 「ミネル、貴方も・・・転生者、なの?」


 驚いているアンジェラが尋ねてきた。俺は〝たぶん〟転生者なんだけどさ。


 「そうだよ、改めて自己紹介。俺の名前は『宮沢 秋斗』。中学3年の15歳でした。」


 「そう、なのね。こほん・・では、改めまして。私の名前は『品川 小夜』。≪ファンテストラ社≫の日本支部で社長秘書として働いていました。歳は言いたくないわね。ちなみに既婚者よ。いえ、今となっては〝だった〟かな?」



 ふぁっ!? Σ( ゜Д゜)



 え?あの、大企業の?多国籍企業で有名な?テレビのCMでよく見かけていた?


 え、マジで?この人、超エリート中のエリートじゃん!〝す~ぱ~・びじねす・うーまん〟ってやつか。


 「私の事は〝小夜〟と呼んでくれて構わないわ。〝品川〟名は旦那のだから」


 「俺も〝秋斗〟でいいっすよ。よろしく、小夜さん」


 「それで、秋斗君はこの乙女ゲーム『愛ある出会いの奇跡~君と癒しを共に~』をプレイしたのよね?レギオールのトラウマイベントを知ってるみたいだし」


 あ・・・あっ!?そうだよ、思い出した!その名前だ!


 この乙女ゲームの名前。『愛ある出会いの奇跡~君と癒しを共に~』。略して『あいきみ』。そうだった、そうだった。いや~、スッキリしたね。良かった良かった。


 なんで俺ってばゲームの内容は覚えているのに、肝心の作品名を忘れるかねぇ?



 「うん、プレイした。姉さんに無理やりだけど。小夜さんもプレイしたんだよな?」


 「ええ。少ない休みの時間とか車や飛行機の移動時間とかにね。結構ハマっちゃったわ」


 「あの、尋ねづらいんだけど質問したいんだ。小夜さんは、自分の死因を覚えてる?」


 「ええ、覚えているわよ。飛行機の墜落事故。と言っても会社の専用機だったけどね。亡くなったのも私とパイロットだったはずよ。秋斗君は?」


 「俺、実は覚えてないんだよ。最後の記憶は受験勉強した後に寝た記憶だけ。だから俺は、本当に死んだかどうかも分からないんだよね」



 あの日。俺がこの世界で『宮沢 秋斗』ではなく『ミネルソフィ』として生きた日から、ずっと思い出そうとしたが無理だった。


 あれから4年。少し、諦めてます。『宮沢 秋斗』が生きている事を。



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