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009話 タジルの仲間たち


 1-9.タジルの仲間たち



 はぁ~、風呂が気持ちいいぜ~。


 おっす~、オラ、ミネル!入浴中だ。つまりスケベシーンだ。俺、男だけどな。


 今、俺が居るのはタジルマースのチームがこの町に持っている拠点。ぶっちゃけ大きな屋敷。さすがはB級冒険者、お金に余裕があるみたいだねぇ。タジルいわく、爵位を廃した元貴族の屋敷なんだと。


 何で俺がここに居るのかと言うと、タジルとその仲間達に誘拐せれて__違った、彼ら曰く保護してもらいました。まぁ、俺ってば小さな子供だし。


 最初は嫌がった。そのまま着いて行けば、いつか孤児院へ入れられるかもと思ったし。それに攻略キャラであるタジルの近くに居れば、乙女ゲームのルートへと突入するかもだし。


 だけど、屋敷に大きな風呂があると聞いてピタリと抵抗を止めました。俺の事を「汚い」と言ったタジルの仲間が風呂場に連れて行こうという会話が聞こえてな。なので今は、精霊達と一緒に温かなお風呂の中でリラックス中。


 タジルの奴が一緒に入ろうとしやがったが「1人でゆっくりしたいから出てって」と断った。風呂場で攻略キャラと二人っきり。そんな危ない場面、誰が許可するか。きっと、この乙女ゲームの世界がラブ・イベントを発生させるに違いない。なんて恐ろしい世界だ。



 それにしても、タジルのトラウマイベントか~。


 あのギルマスの言っていたのは、そうだよなぁ。俺って何かに呪われているのだろうか?一応、解呪魔法を自分に掛けるべき?


 まだ、ギルマスの頼みに返事はしていない。夜になったので、しばらく考えると言って解散した。断っても良かったんだけど、タジルのトラウマって人の命が掛かっているからさ。安易に断れない。


 乙女ゲームでは、この依頼イベントでタジルの仲間達が死ぬ事になっている。しかも俺は、彼等がどうやって死んでしまうのかも知っている。その原因も。


 確か死霊種の魔物が集まっている理由って、魔王に仕える上級魔族が原因だったな。魔王幹部の一人、確か『死霊王』だったかな?


 そして、タジルだけがなんとか逃げる事が出来た、か・・・。いや、仲間達が最後の力を振り絞って逃がしてもらえたが正しいか。だから今のタジルには、右目の近くにあった大きな傷が無いのね。




 


 風呂から出た俺はタジルの仲間から服を貸してもらい、それを着ている。かなり大きめの服・・・これって彼シャツってやつか?おい、仲間の女の人が身悶えしているぞ。さすがヒロインちゃん役、俺の外見は可愛いらしい。


 この服。洗いたての良い香りがする。俺が来ていたのはボロボロの汚い服だったからな。我が子を捨てるような母親が、綺麗な服を着せる訳なかったか。可哀想にヒロインちゃん。君の(つら)さが今の俺には痛い程分かるぞ。


 弓使いの女の人が、とうとう俺を「可愛い~!」と言いながら抱きしめてくる。可愛いと言われても別に俺の顔が女っぽいとかじゃねぇぞ?脱衣所にあった鏡を見たが、普通に男の子に見えた。少し生意気そうな顔は、心の本性が外に出てしまったのか。・・・あと、背が小さい。


「じゃあ、あの・・・頂きます」


 風呂から上がった俺は、タジル達と一緒に食事をする事になった。作ったのはタジルの仲間で、剣士の男。名前はジルロイド。皆からは「ジル」と呼ばれているみたい。


 「美味しいです、ジルさん。ありがとうございます」


 俺が礼を言うと、少し笑って頷いてくれた。寡黙の男ってモテるんだろうなぁ。そういえば、タジルの仲間には女の人が居るけど、彼女は一度も台所に入らなかった。なんでだろう?


 女性の名前はミストリアさん。仲間の皆から「トリア」って呼ばれてた。嘘発見機みたいな便利スキルを持つ人で、胸が揺れる程の持ち主だ。


 「あの依頼は、あと10日くらい先だから。今はいろんな場所から冒険者を集めている所なので、ミネル君もその間はこの屋敷にゆっくり泊まっていきなさい」


 俺にお茶を渡しながら、メガネの男性が話し掛けてきた。


 この男性の名前はクリストファーさん。通称クリス。弓が得意でチームのアシスタント役なんだって。


 タジル達のチームは普段、主に王都で活動しているらしい。だけど、今回の緊急招集で王都のギルド長から選ばれてこの町に来たんだと。


 「はい、ありがとうございます」


 俺は礼を言って食事を続けた。凄く美味しいし、デザートまであるとは素晴らしい。うむ、来て良かったな。





 「あの・・・この状況とういか状態に疑問が生じるのですが、別の部屋は空いていなかったのですか?」


 夜遅い時刻、子供の俺は寝る事にした・・・のだが、何故か俺が寝ているベットにもう一人いる。


 「ミネル君くらい小さな子供だと、一緒に大人が寝るのは当たり前だろう?」


 大人って、アンタもまだ18歳だろうが。乙女ゲームの設定を覚えてるから年齢も知ってんだよ。夜遊びでもして来いよ。お前、モテるんだろうどうせ・・・どうせ!


 俺が寝ているベットに、攻略キャラであるタジルマースが一緒に寝ている。この状況で俺に寝ろと?


 大人が一緒と言うならば、それならミストリアさんではダメなのかのぅ?え?〝未婚の女性と一緒は無理に決まっているじゃないか〟?ああ、はい、ですよねー。


 まぁ他人と一緒に寝るのは温かいし、良いや。俺はその後、すぐに寝る事が出来た。 グ~




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 おはよう、みんな。緊急事態だ、聞いてくれ。


 俺は眩しい光で目が覚めた。カーテンの隙間から丁度、俺に光が射していたらしい。


 そんで起きようとしたのだが、動けない。動けない自分の体を見てみると隣で寝ていたタジルマースが俺を抱き枕にしてやがる。



 どうやら、この『乙女ゲーム』は『BLゲーム』になってしまったみたいだ。



 さて、アホな事を思っていないで抜け出さないとな。・・・おい、抜け出そうとしたのに余計に抱きしめてどうする。抱き付く力も強くするな。地味に苦しいわ。


 「タジルさん、起きて下さい。そして放して下さい」


 仕方なく寝ているタジルに話しかけるが、モゾモゾ動くだけ。起きろってば、おい!


 「・・・・もうちょっと、寝る・・・・」


 何度か話しかけたが、反応したのはその一度だけ。そして、また眠ってしまった。というか服を着ろ。パンツ一丁で寝んな。せめて上着は着てもらえませんかねぇ!?お前、攻略キャラだから見た目だけは良いんだよ!素晴らしい腹筋だな、滅べっ!






 あれから数十分後にやっと抜け出せました。俺が使っていた枕を身代りにしたからだ。スマン、枕よ。成仏してくれ!


 庭ではタジルの仲間のクリスさんとトリアさんが朝練していた。矢が全部、的の中心を射抜いている。スゲーな、さすがは冒険者。


 屋敷の台所ではジルさんが良い香りをさせて料理中。・・・大きい図体の剣士が料理、違和感凄いな。


 「おはようございます、ジルさん」


 「・・・ああ、おはよう」


 寡黙は安定。料理の邪魔をしないようにリビングに座ろうか。



 さてと、これからの事を考えよう。


 お世話になってしまったのだから、ちょっと胸が痛い。俺は、あの人達が死んでしまう事を知っている。


 そっかぁ、今回の依頼であの人達が死んでしまうのかぁ・・・


 神様がもし居るのなら聞きたい。なんで俺を彼等と会わしたの?乙女ゲームの攻略キャラであるタジルの肝心なストーリーだから見ろって事?


 それとも彼等を助けろって事?それが可能なのか?タジルのトラウマである仲間達の死。それが乙女ゲームの大事な物語なんだぞ?壊せるのか?壊して良いのか?



 〝死ぬ〟・・・か。そういえばゲームの中でヒロインちゃんだけが使える魔法があったな。


 それは光属性の最大上級魔法だった『蘇生魔法』。一時間以内なら死んだ者を生き返らせる奇跡の魔法。


 乙女ゲームでは、仲間が一人でも戦闘不能になればゲームオーバーだった。しかし、ヒロインであるミネルソフィが蘇生魔法を習得してからは、画面に上にカウントが発生する。そのカウントが0になればゲームオーバーとなり、セーブした所まで戻ってしまう。でも、0になる前に蘇生魔法を行えばゲームオーバーにはならずにゲームは進む。


 この魔法はヒロインしか使えない。だから、もちろんそのヒロインが死ねばその時点でゲームオーバー。セーブ場所まで戻される。他に蘇生術なんて存在しなかったから。


 この究極の魔法が使えるのはストーリーの終盤。それまでは誰か1人でも死ねば、即ゲームオーバーという鬼畜使用。まぁ、最初の魔物は余裕で狩れていたから、キャラのレベルをちゃんと上げておけば困るのはボス戦だけだ。


 そういえば俺、いろんな魔法使っていたけどレベルとかはどうなんだ?っていうかレベルはどうやって見るんだ?ここが、あの乙女ゲームの世界ならレベルとかもあるよな?


 「・・・レベル表示」


 とりあえず言ってみる。・・・無反応。


 「・・・ステータス、オープン」


 ・・・これも無反応。おいおい、レベル見れないのか?それとも存在しない?・・・やっぱ、ゲームみたいに現実は甘くないのか。見たかったのに、残念だ。




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