表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/187

086話 ※レギオ※ Prt.2


 4-22.※レギオ※ Prt.2



   ※ ※ ※ 攻略キャラ レギオール=J=ミクシオロン ※ ※ ※




 母様を治せる人物が、この王都に居るいかもしれない。その事は、未だに父様に言えず、旧市街へ行く許可も貰えていない。貴族が行く場所では無いからだと却下される。まぁ当然だけど。


 そんなある日、この王都で大事件となる出来事が起きた。その日は、学園は休みで天気が良く、屋敷の庭を歩き父様の説得ができる策を考えていた。


 そして、僕達が住んでいる王都ランブレスタでアレが起きてしまった。


 その出来事は、あまりにも非常識で不可解。


 とても信じられない現象の連続だった。



 それが起きたのは、その日の昼前。朝から快晴で、メイド達は洗濯に掃除と忙しく働いていた。しかし、空が急に黒い雲に覆われてしまった。


 焦るメイド達は外に干していた洗濯物を急いで屋内に取り入れる。僕も、雨が降るだろうから屋敷の中へと向かった。


 とうとう雨が降り、雷までもが鳴り始める。朝の晴天が嘘のようだ。


 異常はそれだけでは無かった。気温が急に上がり、とても蒸し暑くなる。そして、雷が何処かに落ちた。


 そして、この王都ランブレスタで起きた歴史として書物に刻まれる程の大事件を目の当たりにした。



 「な、なんだい?こ・・れ・・・」



 僕が見たのは王都の空を埋め尽くす、異常ともいえる精霊の数。まだまだ、周囲からこの王都に集まって来ている。いくらなんでも、この数は異常すぎる。


 いったい、なにが・・・


 僕の大切な友達の精霊達が、様々な感情を表に出していた。全ての精霊達の感情が僕のスキルを通して伝わってきてしまい、少し頭痛がする。



 _怒らせた_ _ミネル 怒らせた_ _許さない_ _絶対に 許さない_ _恐怖を 与えよ_ _思い知れ_ _絶望せよ_


 ・・・闇の精霊たちが怒っている。



 _ひどいの_ _ミネル 泣いてる_ _ひどい ひどい_ _悲しい 悲しい_ _ミネルも 悲しいの?_ _私達も 悲しい_ _涙が 止まらないの_


 ・・・水の精霊たちが悲しんでいる。



 _いいぞ_ _いいぞ いいぞ_ _もっとだ もっとだ_ _やろう やろう_ _ミネルの 為だ_ _そうだ そうだ_ _やってしまおう_


 ・・・火の精霊たちが喜んでいる。



 _ミネル 泣いているの?_ _ミネル 悲しいの?_ _ミネル どうしたの?_ _そんなに 悲しいの?_ _私達が 居るよ?_ _傍に 居るよ?_ _泣かないで ミネル_


 ・・・光の精霊たちが嘆いている。



 _怖い_ _怖いよ 怖いよ_ _ミネル 怒った_ _ミネル 怒ってる_ _凄く 怖い_ _怒らないで ミネル_


 ・・・風の精霊たちが怖がっている。



 _行っては ダメ_ _ミネル 止めて_ _お願い 止まって_ _ミネル 止まって_ _それ以上 行かないで_ _ミネル 行かないで_ _お願い ミネル_


 ・・・樹の精霊たちが誰かを止めようとしている。



 無数の精霊たちの声に、耳までも痛くなってきた。こんなに沢山の声を一度に聴いたのは初めてだったから。


 みんなが言っている〝ミネル〟という言葉。どう考えても人物の名前。なら、もしかして僕が知りたい人物の名前なのかもしれない。


 確かめたいけど、今の精霊には聞く事が不可能だ。皆が、その〝ミネル〟という人物を中心にして感情のままに動いている。


 まさか、僕の『精霊の愛子』よりも上位のスキルが存在するのか?そんな事、どの本には書かれてはいないのに。


 これ程までに精霊達の愛情を受け、王都の外からも集める程のスキル。しかも、その人物はおそらく人の子だ。


 これは、なんて恐ろしい存在なのだろうね。



 そして、僕は最もありえないモノを見てしまう。それは、僕が今まで見た何よりも恐ろしく、理不尽で、不可解で、そして何よりも神秘的なモノだった。


 光の精霊達が空を舞い、天高い場所で集まり、空に光り輝く巨大な魔法陣が描かれていった。そして、その大きな魔方陣に光りが集まり、放たれた。僕達が住む、王都ランブレスタに光りが落ちたのだ。





 その日の出来事は、王都で『大聖堂消滅事件』とされ騒がれる事となる。


 あの日の、あの光景は僕は絶対に忘れないだろうね。あんな巨大な魔法陣、いったいどれ程の魔力を消費すれば可能になるのか見当もつかない。


 そして、あの事件が僕にとって良い方向へ動き出した。



   ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●



 『大聖堂消滅事件』があった次の日の晩に、僕は父様に呼ばれた。


 「え、良いのですか?父様」


 僕は父様の言葉を最初、驚いて聞き間違いなのではないかと思ってしまった。


 「ああ、良いよ。レギオが行きたいと言っていただろう?明日にでも行ってみると良い、その旧市街にある孤児院へ」


 いつも笑顔で話す父様だけど、この笑顔の時は何かを企んでいる時が多い。いつもの笑顔とは微妙な違いで、他の人は分からないだろうけど母様と息子の僕にはバレバレだよ、父様。


 「ただし、護衛としてグレイソンを連れて行きなさい。いいね?」


 「え?グレイソンを、ですか?父様の護衛の中で一番腕の良い人じゃないですか。良いのですか?」


 「ああ、(かま)わないよ。君も良いよね、グレイ?」


 執務室の扉近くで待機していたグレイソンに父様が話し掛けた。


 「はい、お任せを」


 グレイソンが頷く。何か凄く怪しい。何かこの二人が企んでいるとしか思えないよ、僕にはね。


 「護衛をゾロゾロと連れて行っては孤児院の方に迷惑だからね。グレイなら1人で十分の護衛となる」


 「確かに、そうですけど・・・」


 怪しい・・・凄く怪しい。僕が何かを疑っている事は、父様にも伝わっている筈。なのに表情はまったく変わらない、さすがだね。


 「決まりだ。では、頼んだよ?グレイ」


 「・・・お任せを」



 ほら、やっぱり。


 今のは確実に〝無事に僕を守る護衛を〟頼んだのではなく、〝父様が何か別の命令した事を〟頼んだんだね。父様は完璧に誤魔化せるだろうけど、グレイソンにはその芸当は無理だったね、父様。


 でも旧市街にある孤児院へ明日行けるようになったのは嬉しい。だから、僕は拒否せずに父様の許可を受け入れる。例え、父様が何か企んでいようと話をそのまま続けた。




   ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●




 「そういえば、そのミネル君がもつスキルは、僕の『精霊の愛子』とは違うのかい?」


 明日は朝早くから旧市街にある孤児院へ訪れる予定なので、今日の就寝はいつもより早い。


 寝台に入り、気になっている事を周りで浮遊する精霊達に聞いてみた。


 _違うよ_ _レギオとは 違うよ_ _ミネルと 違う_ _うん 違うな_ _うん 違うわね_


 あの日から精霊達は〝あの子〟と言わず〝ミネル〟と呼び始めた。そして、その〝ミネル〟という人物が子供なのだとも教えてくれた。あの大事件を子供一人でなんて、本当に恐ろしいな。


 でも、「そのミネルって子が母様を治せる事が可能なのかい?」と尋ねても、また〝秘密〟と言われる。


 なら明日、自分で確かめに行くから良いさ。そして、どうにかして確認しないと。そのミネル君に治癒能力があるのか。そして、その能力があれば、どれほど高いのかを。


 でも、焦ってはダメだ。逃げられないように慎重に、やっと見つけた光りなのだから。



 「やっぱり違うんだね。僕よりも上位のスキルが存在するなんて。あんなにも精霊の力を引き出せるなんて、どんなスキルなんだろう?」


 僕の疑問に、精霊達から驚きの言葉を聞かされた。


 _ミネル 聞こえない_ _私達の声 聞こえない_ _お話 出来ない_ _ちょっと 寂しい_ _レギオと 違う_


 え?〝聞こえない〟?そんな、あれ程の事が出来るのに精霊達の声が聞こえないなんて。


 でも、待って。それって、まさか・・・


 「もしかして、そのミネル君が持っているスキルは『精霊眼』って事かい?たったそれだけ・・なのかい?」


 _うん そうだよ_ _ミネル 見るだけ_ _でも 友達_ _うん 友達だ_ _楽しいから 友達_


 精霊眼・・・だけ?それだけで、あんなにも精霊達の力を引き出した?


 ・・・ありえない。


 僕のスキル『精霊の愛子』よりも下位である『精霊眼』。本で読んだから覚えている。あれは本当に見るだけの筈なんだ。なのに・・・上位のスキルがある僕では不可能な事をやってのけた。



 ・・・ミネル君、僕は君の事が少し気に入らないかもしれないね。



 それと、もう一つ。今回の父様の態度だ。


 今まで、頼み続けた僕に「ダメ」の一言で終わっていたのに。いきなり今日になって「行って来ると良いよ」だって?絶対に何かをグレイソンに頼んでいるな。


 今回、王都で起きた『大聖堂消滅事件』。犯人は〝光り輝く小さな子供〟だと話題になっている。


 そして、その犯人は確実にミネル君だろう。その事を、僕は絶対に誰にも教えない。母様を治せる可能性を持つ人物なのに、国に捕まってしまっては困るし、何より逃げられたら元も子もない。


 ミネル君が居るのは旧市街にある孤児院。そして、父様に許可が貰えたけど何かを企んでいる。


 ・・・それって、ミネル君が犯人だと父様にバレている?


 可能性的には・・・高い。とても高い。でも、確実でない。だって、そうなら何故、騎士団が派遣されない?未だに捕まっていない?犯人が不明のまま?


 ・・・分からないね、父様の考えが。だけど、気を付けた方が良いよ、ミネル君。




 「明日、君達がいうミネル君に会いに行くんだけど、どんな子なんだい?」


 _ミネル 楽しい_ _ミネル 面白い_ _一緒 楽しい_ _一緒 面白い_ _気分 気持ちいい_


 「君達から本当に愛されているんだね。会うのが楽しみだよ」


 _ミネル 大好き_ _うん 大好き_ _ミネル 大好きだ_ _大好きだぜ ミネル_



 ・・・あ、何か、うん、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、ムッとした。



 「それは・・・僕よりもかい?」


 初めての感情だから分からないけど、もしかしてこれが〝嫉妬〟というやつなのかな?


 _レギオ 好き_ _うん 好き_ _ミネルも 大好き_ _うん 大好き_ _レギオも 好きだよ_



 へぇ・・・僕が〝好き〟で、ミネル君は〝大好き〟?


 へぇ、そうなんだ。へぇ~、そうなんだねぇ。



 ミネル君__いや、ミネル。僕は君の事が気に入らないよ。



  ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ