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081話 大精霊との契約


 4-17.大精霊との契約



 今日もヴァンさんとの取引きを終えた。孤児院の庭にできた果物と野菜の買い取り作業には慣れたものだ。昨日、採取した所にまた見事な果実ができているので不作が無いって最高。さすがは異世界。


 このお金でパンとかお肉とか買いに行かないとな。


 さすがに、果物や野菜だけの食事を孤児達が満足する訳ない。肉は大量に買わないとダメだろう。前に男の子の間で、取り合いの戦争となったから。



 【それにしても不思議ねぇ。王都に『聖域』が出来てしまうなんて】


 今日は樹の大精霊であるダイアナさんが遊びに来ていた。相変わらず美人なお姉たまだ。ナイス、よくやったぞ製作者さん。乙女ゲームの登場人物だけあって、声も有名な声優さんだから耳に心地良い。


 そしてレギオよ、残念だったな。お前が居ない間にダイアナさんが来たよ。



 「フェイとダイアナさんは飲み物、何にします?」


 【あ、私はいいのよ。私達、大精霊は何も食べない、何も飲まない。そういう存在なの】


 「俺はコーヒー」


 へぇ、大精霊って何も食べないんだ。それは・・・別に羨ましくないな。せんべぇや団子の味が分からないなんて俺には無理。


 あ~あ、久々に食べたくなってきたなぁ。一度だけ行った日ノ国で大量に買ったお土産は、とうの昔に全部無くなった。その日ノ国も、そう簡単に行ける場所では無い。残念だ。



 俺はコーヒーをフェイに渡しながら、ダイアナさんに尋ねる。


 「そういえば時の大精霊ジーク=クロノウスさんって、何処に行けば会えるのですか?」


 【あら?そういえば言ってなかったかしら。それはね、この聖樹ユグドラシルがもっと大きくなったら会えるようになると思うわよ?】


 ダイアナさんが光る木、つまり聖樹を指差した。


 「そういえば『門』だと言ってましたね。あれ?それじゃあ___」


 【そうよ。時の大精霊ジークは神域に居るのよ。その神域にある精霊界を守護している1人がジークなのよ。その内、ミネル君も行けるようになるだろうから覚えておいてね】


 つまり裏ダンジョンの奥って事かな?やっぱりクリア特典をプレイしてからこの世界に来たかった。


 【精霊界は『時の大精霊 ジーク=クロノウス』と『空間の大精霊 スターク=オリジス』が維持する場所。精霊達にとっては実家といった所かしら】


 あああ、ダイアナさん。これ以上、新ニュースを俺に教えないで。覚えきれない、覚えきれないから。俺の脳内データバンクは少し小さいんだよ。


 えーと、空間を司る大精霊さんの名前は『スターク=オリジス』。メモメモ


 重要人物だし、忘れないようにしないと。もしかしたら、この世界でレギオ専用のイベントとして発生して会うかもしれいしな。



 【私達、大精霊も精霊界に住んでいたり、たまに人間界に遊びに来てたりしているわ。特に風の大精霊は人間界にご執心みたい。その人間界で、気に入った人物がいれば・・・ああ、そうだわ!ミネル君、私と契約してみない?】



 ぶっ!!!!



 俺は盛大に飲んでいた紅茶を吹き出した。


 契約!?それって、大精霊との契約の事っすか!?


 いやいやいや、それって攻略キャラのレギオール=J=ミクシオロンがやるイベントじゃん!俺、けっこう頑張った記憶があるんだけど!?


 火・水・風・土・樹。この五大属性をそれぞれ司る大精霊との契約イベント。その契約をコンプリートするのに、かなりの時間を費やした。



 「えーと、俺よりもレギオと契約した方が良いのでは?精霊の愛子であるレギオの方が活躍しますよ?」


 乙女ゲームの設定では、レギオの主軸属性は『樹』だった筈なのでダイアナさんとの相性はかなり良い。


 【そうねぇ・・・でも、まだ少し先かしら。此処じゃあ試練も出来ないし】


 確かに乙女ゲームでは16歳となった時に魔王が力を取り戻し、力が必要と分かり契約イベントが発生していた。まだ10歳のレギオには早いのか。


 「ん?じゃあ俺も無理じゃないですか?此処では試練が受けられないのでしょう?俺は今、王都から離れる気は無いですよ?」


 いつ、レギオのトラウマイベントが始まるか分からないしな。その時、聖女の性質を持った俺が王都に居ないとドえらい事になっちまう。


 だから、えーと、樹の大精霊の試練は『花咲く大樹』がスタートだっけ?あの聖地に行く気は無いですよ。



 【ふふふっ。ミネル君は私の試練よりも、もっと難しい事をやり遂げたじゃない。だから試練をわざわざ受けなくとも大丈夫よ】


 そう言って、ダイアナさんがまた聖樹ユグドラシルを指差した。


 【私の試練より、聖樹を生み出して育てているミネル君は間違いなく合格。それ程に、この聖樹が生まれ育つのは奇跡に近い事だもの。だから、ミネル君には私と契約する資格が十分あると判断したわ】


 んー、樹の大精霊の試練から考えると、聖樹を育てたのはポイントが高いのか。


 ゲームでのレギオールは、この契約が無事に結ばれた事により大精霊の召還を覚える。確かに、使ってみたい。凄く綺麗なカットイン画面とエフェクトだったんだよ。


 それに大精霊が召還されている間、その大精霊の属性魔法が大幅に強化されるし。


 ただ、召還に使うMPの消費量が半端ないんだけどな。回復薬、必須。



 「良いじゃねぇか、ミネル。何かくれるって事だろう?もらっとけよ」


 【そうよね、そうよね。そう思うわよね。じゃあ~、はい!】


 フェイの言葉に、樹の大精霊が悩んでいる俺の頭にキスをした。え、これが契約?


 あり?こんなんだっけ?ゲームのレギオの時は何かこう、「貴方の心に感謝し、この力をもって~」的なカッコいいセリフをレギオが唱え、大精霊からキラキラした光が放たれて包んでいたような。


 もっと見応えのある誓いの儀式的だったのに。騎士様が王に誓いを立てるカッコイイ展開みたいだったのに、俺には省略的な頭にキスして終了。俺の場合も「汝に力を~」とかして欲しかった。


 あの名場面が見れなかったのに少し落ち込んだ。それ良いなら、ゲームでの大々的なシチュエーションは何だったの?と愚痴も出てくる。そんな俺の体が一瞬、ポワンと緑色に光った。



 【これでミネル君には、私の加護が付いたはずよ。大切に使ってね?】


 嬉しい事だ。素晴らしい事なんだ。これで自由に樹の大精霊でもあるダイアナさんを呼べるから。だから落ち込むのは止めよう。


 それにしても樹属性には、この世界に来てからお世話になりっぱなしだな。食べ物関連は樹属性が必須だし、ネミネ草も樹の精霊達からもらったから。


 「ありがとうございます。それとダイアナさんに聞きたい事があるんですけど、良いですか?」


 【ええ、いいわよ。なぁに?】


 「あの、早めに時の大精霊さんに会いに行きたいのですが、聖樹ユグドラシルが後どのくらいまで大きくなれば行けるようになるんです?」


 俺の質問に考え込むダイアナさん。「んー・・・」と言いながら空を見上げた。空って言うか天井だけど。



 【そうねぇ・・・あと500年くらい経ってからかしら?】



 ごっ!?




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