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080話 朝の襲撃


 4-16.朝の襲撃



 「いぃやぁあああああああああ!!!!!」



 早朝、女の子の叫びが突然聞こえた。それは眠気が吹っ飛ぶくらいの大音量で、寝室中に響き、寝ていた俺とフェイは飛び起きた。


 何だ!?教会がまた何かしてきたのか!?



 「こ、こここ、このピンク野郎!!ななな、なにフェイお兄ちゃんとお、おおお、同じベットで寝ているのよっ!?」


 俺達の寝室にある入り口の扉が開かれており、女の子が赤い顔をして叫んでいる。この子は俺に飛び蹴りをかましてきた黒髪の妹ちゃんだ。なんか朝から、すっげー怒られた。


 何をそんなに____


 「フェイお兄ちゃんも、フェイお兄ちゃんよ!なんで上半身が裸なのよぉぉおおお!!!!!」


 あれ?フェイ、いつの間に上着脱いだの?寝る時は着てたじゃんか。そんなに暑かったのか。そりゃ、すんませんね。俺が一緒に寝よっかと頼んだせいで。


 まだ寝ボケているフェイが、女の子の指摘で近くにあったシャツを「ん~?」と言いながら羽織った。


 「こ、この淫乱ピンク!あなたにフェイお兄ちゃんは渡さないんだからね!」


 「えっと、いや___」


 「うるさい、うるさい、うるさーーい!あなたの言葉なんて聞きたくないわ!耳が腐りそうだもの!!」


 自分の耳を抑えて、首をブンブン振って拒否る黒髪の妹ちゃん。


 おーい、勘違い娘さんや?ちょっちー俺の話を聞いてくれちょ。あと早朝から、その元気さは凄い。でも音量は下げて、お願い。是非とも下げて欲しいです。


 その時、まだ寝ボケていたフェイが少女にぶっちゃけてしまった。


 「・・・?俺はもうミネルの物だぞ?」


 「んなっ!?!?!?」


 フェイの言葉に、それはもう驚愕する黒髪妹ちゃん。そして、顔から血の気が失っていくかのように真っ青になる。


 えーと、フェイさんや?俺の奴隷なのは確かだけどさ、今そのセリフは爆弾みたいな物だよ?娘さん、爆発しちゃったじゃんか。


 「・・・・ふぇ・・・」



 あ、やばい。



 「うぇ、うぇええ、うえええええええええええんんん!!!!」



 んぎゃぁぁあああ!朝から女の子の、かん高い泣き声はきつい!!超音波が、超音波攻撃がぁぁああ!!!



 「ヤダもーーん!違うもーーーん!!フェイお兄ちゃんはぁああ、フェイお兄ちゃんはぁ私の物だもーーーーん!!!!」


 誰か、誰か救助隊を!我が隊は突如、敵による襲撃を受けている!!メーデー、メーーデーーー!!!!




 「カンナ、カンナ。よしよし。泣くな、泣くな。大丈夫、大丈夫」


 俺とフェイが超音波の攻撃を受けて苦しむ中、男の子の声が聞こえた。すると女の子の超音波が少しずつ静まっていく。


 我が隊は・・・助かったのか?はっ!生きているか、フェイ三等兵!?しっかりしろっ!くそっ、狼人になんて事をしやがる!


 「んぐっ、ぐずっ、ずびっ、カムイお兄ちゃぁん、カムイお兄ちゃぁん。私、わだじぃ」


 「ほら、落ち着いて?カンナ。俺がいる。大丈夫、大丈夫」


 おおぉ、さすがは救世主__じゃなかった、お兄ちゃんだ。あのご乱心お姫様を鎮めるとは、この子がもう勇者で良くない?


 その後、勇者様は泣くお姫様を連れて孤児院の奥へと去って行った。


 俺?もう一回、寝た。 ぐぅ~








 「・・・・・・・・・朝は、ごめんなさい。悪かったわ」


 朝ご飯を食べ終え、ヴァンさんとロイドさんとの取引も終わった後に女の子が謝った。


 「うん、俺は別に____」


 「でも!絶対にあなたには負けないわ!だって私は女よ!?確実に私の方が有利なんだから!!」


 「・・・・カンナ・・・・」


 妹さんの隣に居たお兄さんが頭を押さえている。大変だねぇ、お兄さんは。


 「だから!抜け駆けをしないように!今日から私もフェイお兄ちゃんと同じ部屋で寝る事を決めたわ!」


 「「「はぁあ!?」」」


 驚く俺達。この子と俺とフェイで、同じ部屋で就寝。・・・物が壊れそうな予感しかしない。毎日が戦争勃発となり、孤児院の備品が壊れていく姿が容易に思い浮かぶ。


 「カンナ、それは兄として絶対に俺は許可しない。カンナは女の子なんだよ?絶対にダメ」


 「だって、だって!ズルいわ!この淫乱ピンクは自分が男なのを有効活用するようなズル賢い奴なのよ!?このままじゃあ、このままじゃフェイお兄ちゃんが!フェイお兄ちゃんがぁああ!!」


 またもやご乱心となる妹ちゃん。あと俺を睨むのは止めて、ちびりそうだ。


 俺の名前ってば「ピンク野郎」から「ピンク」になって、次が「淫乱ピンク」っすか?もしかして、それが最終形態じゃないよね?〝ミネル〟の一文字も入ってないんだけど。


 この子がさっき謝ったのは何だったのだろう。何についての謝罪?今、どういう状況なの?


 ついに、また泣き叫ぶか?と思われた妹ちゃんは、急にピタリと動きを止めた。



 「・・・分かったわ。じゃあ、カムイお兄ちゃんがこの人達と一緒の部屋で寝て!それで見張ってよ。この淫乱ピンクがフェイお兄ちゃんに、いかがわしい何かをしないように抑止力となって!妹である私の為にも!ね?お願い、お兄ちゃん!」



 「「「・・・え!?」」」




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