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076話 俺のサンタさん!


 4-12.俺のサンタさん!



 フェイもレギオも、まだお互いを認めていないだけで、その内仲良くなると信じよう。


 それまで、この二人の関係にあまり触れない方が賢明だ。マジで危険だから、室内でマジ戦闘すんなよ。触らぬ2人に祟りは無いはず。



 「ところでさ。俺、レギオに聞きたかった事があったんだよ。質問しても良いか?」


 俺が尋ねると、レギオはニコニコの笑顔で俺の方を向いた。まだ10歳のレギオはゲームとは違い子供らしい笑顔だ。これが16歳になったら、あの嘘くさい笑顔に成長してしまうのかと思うと残念だ。


 でもこの笑顔だったら、なんでもお菓子をあげたくなるよ。何が欲しいんだい?高級クッキーが欲しいの?それともビスケットの方か?ヴァンさんの所から、ちょいちょい貰って来てるからたぁ~んとお食べ。


 「珍しいね。なんだい?聞いてあげても良いよ?」


 「うん、あのさ、初めて会った日にレギオが言ってただろう?〝君は視るだけだったね〟って。覚えてるか?」


 「当然、覚えているよ。それがどうかしたのかい?」


 「でもさ、俺〝視る〟だけじゃなくて精霊達にお願いを〝聞いて〟もらえるんだけど。それも俺がもってる『精霊眼』のスキルのおかげなのか?」


 そう、これ。ずっと気になってた。


 レギオが言う通り、精霊の声を〝聞く〟事も、精霊と〝話す〟事もできない。でも、〝視るだけ〟でも無い。俺はずっと精霊達にお願いを〝聞いて〟もらえた。なら、それは〝視るだけ〟ではのではないか?


 「へぇ、ミネルにしては良く考えているじゃないか。褒めてあげるよ。そう、それだよ。その事が僕も気になっていたんだよね」


 レギオが「ふむ」と手を顎に乗せて考え込む。俺ってば、どれだけ脳足りんと思われてんの?確かにレギオみたいに学園のテストで学年トップなんて取れないけどもさ。


 俺ってばヒロインのミネルソフィよりも格段にお馬鹿さんだから、乙女ゲーム通りに貴族学園に入学したとしても同じクラスになれないだろうな。元々、行く気ないけど!


 「君のもつ『精霊眼』というスキルは、本当に〝視る〟だけのモノなんだよ。ミクシオロン家にある書庫にあった本に、確かにそう書かれていたからね。そうだというのに君はどうだい?精霊達に〝大好き〟と言われるほどに好感を持たれ、お願いまで聞いてもらえているんだ」


 あぁ、ミクシオロン家の書庫ね。乙女ゲームにも登場したな、その場所。


 乙女ゲームではレギオのイベントって、ほとんど本に関係している所ばかりだったからさ。ミクシオロン公爵家が所有する書庫だったり、学園の図書室だったり、王都の図書館だったりな。だからミクシオロン家の書庫もゲームの風景として見たよ。


 棚にはビッシリと本があり、その棚もズラーーーっと並んでいるんだよな。そして、中央にポツンと置かれた丸テーブルに紅茶と本を置いて椅子に座るレギオと、よく会話イベントが発生したよ。



 「まだ俺が精霊達に好かれているのが気に入らないのか?いいじゃん、俺と精霊達が相思相愛でも」


 「・・・そんなの僕のスキル『精霊の愛子』と変わらないじゃないか。君のもつ、たかが『精霊眼』と同列なんて認めたくないね。やっぱり僕は、君の事が気に入らないよ」


 「あの、いや、俺が聞きたいのは____」


 「でもね、ミネルは精霊達の声を聴く事ができない。この子達の求めている事が分からないんだ。だから、やっぱり僕のスキルの方が各上なんだ。分かったかい?」


 しまった、そうだった。こいつ〝負けず嫌い〟で〝努力家〟な性格だったな。なんか余計な火が付いちまったぞ。


 「僕は精霊について幼い頃より研究資料や古文書などを読み漁った。だけどね、ミネルみたいな存在は聞いた事も読んだ事もない。だから・・・」


 「だから?」


 「正直に言うと、それは僕にも分からないって事だよ」


 そう言って、またゆっくりと紅茶を味わうレギオっち。


 ・・・・お前さぁ。「分からない」って言うだけに、どれだけ喋ってんだよ。小学校の校長か!




 【それなら、私が教えて差し上げましょうか?】



 ・・・ふへ?


 え、何?なんか女性の声がしたんだけど。ま、まままままさか、おおおおばけ?おばけ的な現象なのか!?


 いきなり俺達が居る部屋に声が聞こえた。俺でもフェイでもレギオでもない、違う人物の声。フェイが警戒して俺の傍に来た。レギオも驚いてティーカップを机に置いて警戒している。


 でも、みんなで部屋を見渡すが俺ら以外、誰も居ない。もしかして幻聴?



 【ふふふっ、あなたがミネル君ね?可愛い顔をしているわ】


 また、あの声だ。聞き間違いでも、幻聴でもない。でも、どっから・・・


 すると怪訝な顔をしたフェイが、光る木を指差している。


 え?まさか、この木が?あの『神気が溢れる凄い木』が話しているっていうのか?そんな、まっさか~、冗談だよな?


 ・・・ん?神気が溢れる凄い木から?光る綺麗な木から?あの聖なる夜みたいなイルミネーションの木から?



 ・・・・はっ!?それはもしかして、ついに来たのか!俺のサンタさん召還の日がっ!!



 俺が日々、願いを込めて水の精霊からもらった綺麗な水をあげていた成果が、今!叶おうとしているのか!


 それに気が付いた時、俺の耳にはクリスマス・ソングの代表作『ジングルベル』が流れ始めた。幻聴だと分かっているが、気分は急上昇だ!!



 うっひょ~!テンション上がってきたぜ~ぃ!!



 すると光る木から、なんかすんごい美人なお姉たまが現れました。ナイス!グラマーお胸さまさま!


 緑色の綺麗な髪を背中まで伸ばし、優しそうに微笑んでいる。体のあちこちに草やら花やらを付けて邪魔にならないのだろうか?造花・・・だよな?たぶん。



 でもさ、なんか想像していたサンタさんと全然違う・・・



 なんでサンタさんが女性?普通はポッチャリ系白髭オジ様じゃないの?ちょっと残念、テンション下がった。


 ここが乙女ゲームの世界だから何か理由があって、この設定なのだろうか。著作権的な?女の子がするゲームには髭面親父は似合わない的な?


 まぁいいや、今はそんな事より!



 「サンタさん!サンタさん!どうか良い子の俺に『PS○』を下さいませっ!!!」



 俺はサンタさん(仮)に膝を付いて大声でお願いした。膝を地面に着き、両手は胸の前で組む。正に純真なる祈りのポーズ。


 乙女ゲームではヒロインのミネルソフィが、よく大聖堂にある祭壇の前でこんな感じで祈っていた。俺もきっと似合ているはずだ。


 今回は残念ながらサンタさん(仮)は1人だけだった。なら来年はゲームソフトを頼むとしよう。電気なら光の精霊達がどうにかしてくれるし。うへへ。


 さぁ、女性版サンタさん(仮)よ!どうか良い子の俺にあの有名なゲーム機を!!



 【え~と、その『ぴーえす○○』が何か分からないけど、私は『サンタ』という人物ではないわよ?】


 俺の言葉に、少し困ったような顔になったサンタさん(違)が言った。




   え? 今 なんて? サンタ じゃない?




 俺は、地面に崩れ落ちた。


 うそ・・・うそ、だよな?そんな、そんな事って・・・


 あまりにも・・そう、あまりにもショックが大きすぎる。あ、涙が。俺はこの絶望を受け止められない。どうして・・・なんで・・・そんな酷い事を言うんだ。


 ・・・そっか。うん、そうだよな。〝サンタさん〟なんて居ないんだ。子供の頃に父親がこっそりプレゼントを置いているのを目撃してしまった日から、その事実が変わらないと分かっていたんだよ。


 例え乙女ゲームの世界であったとしても、ゲームの世界であったとしても!夢や希望なんて存在しないんだっ!!



 俺は数分間、地面を涙で濡らして動けなかった。




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