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070話 ピンク頭の受難

※注意※

少~しだけBLっぽい表現があります

苦手な方はご注意ください m(_ _)m


 4-6.ピンク頭の受難



 俺はヴァンさんの屋敷から出て、ある場所へ向かった。


 王都の大通りを歩いていたのだが、やっぱりこのピンク色の髪は注目を集める。周りの人達がチラチラと見てくるんだ。だからフードを取りたくなかったんだよ。


 でも、もうフードで頭を隠すのは無理だし我慢するしかない。王都の人達も一瞬こちらを振り向くだけだし。でも、やっぱり目立つのは嫌だなぁ。


 路地裏に入り、旧市街まで走る事にした。もうすぐ、もうすぐ着く、あの場所へ。でも路地裏を通るのは結構大変だった。ゴミが各所に放置されていて、とても邪魔だった。ただでさえ狭い通路なのに、大きなゴミとか置いてあると進むのに苦労する。でも、こういうゴミが放浪者にとっては家の一部になるのだろう。


 旧市街にある少し大きな道に出れば、それなりに綺麗にされていて進むのが楽になった。今度、路地裏のゴミの事をヴァンさんに相談してみようか。



 ヴァンさんとロイドさんが言うには、俺が倒れてしまってから5日目の朝らしい。少しだけ久しぶりとなる孤児院が見えてきた。


 初めて見た時はボロボロだった孤児院。今では精霊達の協力で、それなりに綺麗になっている。隣には、まだボロボロで天井には大穴が空いている小さな教会がある。そして、孤児院の庭から子供達の楽しそうな笑い声が聞こえた。


 ・・・変わらない、安心した。俺が倒れても、この孤児院はちゃんと運営されている。さすがはヴァンさん、ありがとう。


 孤児達も庭にできた果実園で元気に遊んでる。精霊達も大勢、庭にある木々の周りで楽しそうにクルクルと踊っているのが見えた。


 庭に出来ている果物や野菜を目当てに集まった人々も、喧嘩をせず採取してくれている。あぁ、やっぱり平和が一番だな。




 「・・・ようやく目が覚めたか」


 いつもの孤児院の風景に安心して見ていると、その孤児院の玄関から1人の人物が出てきた。


 フェイ。


 銀色の髪が太陽に当たり、眩しく光る。最初の頃は泥が付いて汚れた髪だったのに、今では乙女ゲームで描かれた通りの綺麗な銀髪になっている。そして、金の瞳が俺を睨んだ。これは・・・怒っているのかな?心配、掛けたもんなぁ。


 でも、なんか久しぶりに感じる。やはり4日も寝ていたからだろうか?元気そうで良かったよ、フェイ。



 「フェイさん、おはようございま_____」



 俺は怒られる前にあいさつをしようとしたが、フェイにいきなり抱きしめられた。


 ・・・え?あ、あれ?フェイだよな?タジルじゃないよな?ど、どったの、フェイさんや。フェイはそんな事をする様な奴じゃないんだけど。まさか偽物だったりして・・・。


 「・・・心配した。心配したんだぞ、ミネル。この馬鹿が」


 〝ミネル〟? えっ、〝ミネル〟!?今、初めてフェイに名前で呼ばれたぞ!?聞き間違いじゃねぇよな!?


 「くそっ!目ぇ覚めたら一発殴ってやろうと思ってたのに、お前が〝おはよう〟なんて言うから喜んじまったじゃ・・・なんだよ?その顔は。なんか文句でもあんのかよ」


 フェイが抱きしめるのを止め、俺のぽかーんとした顔を見た。フェイは視線を外して何か不満顔。えーと、怒ってないの?


 「えっと、フェイさん・・・だよな?タジルと魂が入れ替わったとかじゃなくて、フェイさんなんだよな?今、〝ミネル〟って・・・」


 「・・・んだよ。し、仕方ねぇだろうが。ここで俺が〝主様〟って言やぁガキ共にバレるじゃねぇか!」


 気まずいのか、俺に怒鳴るフェイ。


 ああ、なるほど。そういう事か。せっかく怪しいローブを外したのに正体バレちゃうもんな。確かにそれはマズイ。



 「あ、あとよ・・なんだ、その、俺の事は〝フェイ〟って呼び捨てにして良いぞ。〝さん〟なんて付けんな。なんか痒くなんだよ、さん付けで呼ばれっと」


 フェイが顔を少し赤くして横を向いた。尻尾がブンブン振っている。


 お、おう。なんだ、どうした。フェイがツンデレではなく、デレだけになってしまったぞ。頭でも打ったのか?何、この状況。



 「分かった。ありがとな、フェ__「何してんのよぉーーーーーー!!!!」」



 ぐぼはぁ!?



 俺は突然、横から跳び蹴りをされて吹っ飛んだ。出る!出ちまう!さっき食べた高級料理が!消化されつつある豪華食材が!だ、出したまるかぁ!!


 ダメだ、頑張れ、俺!さっき食べたので幾らすると思ってんだ!高級食材だぞ、高級食材。


 それに、仮にもヒロイン役の俺が口から○○(ピー)を出すなんて炎上ものだ。耐えるんだ!


 俺が必死に胃から這い上がろうとする物体と戦っていたら、跳び蹴りをかましてきた少女が俺をビシッ!と指差した。


 「何なのよ!?貴方、何なの!?フェイお兄ちゃんと抱き合って!私だってフェイお兄ちゃんから抱きつかれた事なんて無いのに!!」


 ふぅ、危なかった。胃から這い上がってくる物体Xに見事、俺は勝利した。


 いやいや、少女よ。抱き合ってはいないぞ、〝合って〟はいない。フェイが俺を抱きしめていただけで、俺はしていないからな。そこは勘違いしないでね。


 蹴り飛ばされた箇所に回復魔法を掛けて起き上がる。ん?この黒髪の女の子は確か____


 「さっきから見ていれば、急に二人で抱き合ってさ!何、いい雰囲気かもし出してんのよ!うらやま__汚らわしいわ、このピンク頭!!」


 「カンナ、カンナ。暴力はダメだよ暴力は」


 怒れる黒髪の女の子を抑えに、同じく黒髪の男の子が孤児院の庭からやって来た。


 「ごめんね、君。妹が暴力して。なんだか、少し取り乱してしまったみたいだから。本当にごめん」


 「カムイお兄ちゃんは黙ってて!」


 あ、この子だ。


 あの時、俺が聖女の蘇生魔法で生き返った男の子。良かった、元気みたいだ。光の精霊達が協力してくれたおかげだな。もし、居なかったらと思うと今でも怖い。きっと、成功しなかっただろうから。



 「カンナ、カムイ。俺はこの子にこれから大切な用事があるから邪魔はダメだ。他の子達と遊んで来い」


 「そんな!?フェイお兄ちゃんは私より、このピンクを選ぶって言うの!?何で!?何でよ!?」


 フェイの言葉に叫んで俺を指差す少女。とうとう俺の名前は〝ピンク〟となってしまった。だからフード取りたくなかったんだよ。


 「ほーら、カンナ行くぞ~。フェイさんの頼みだ、さっさと行くぞ~」


 妹ちゃんは兄に引きずられながら去って行った。凄く騒いでいたけどな。うっわ、めっちゃ睨まれた。怖いッス。ぶりっ子なら、ここでフェイに抱き付いて「あの子、こわ~い」とか言ってみせるんだろうがな。俺がそんな事をするはず無い。



 「フェイ、カッコイイもんなぁ。そりゃあモテるか。良かったじゃん!」


 「全然、良くねぇよボケ。それよりミネル、客だ。お前に会いに毎日、同じ客が来てんぞ」



 え、客?


 ん~、ルッソとルードと会うのはまだ先だろうし、誰だろう?




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