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065話 ※騎士団長の日誌※ Prt.1


 4-1.※騎士団長※ Prt.1



     ※ ※ ※ 攻略キャラの父親 騎士団長 ??? の日誌 ※ ※ ※



 ○○○年 △月 □□日



 今日の日誌はいつもと違う物となるだろう。今の私はまだ混乱している為、うまく書き記せないかもしないと先に書いておく。


 早朝は穏やかなものだった。天気は晴れており、久しぶりに息子と剣の訓練をした。あいつは私以上に強くなるだろうから楽しみだ。


 本当は毎日でも練習相手になってやりたいが、多忙な仕事で構ってやれない事が多い。だが、聞き分けの良い息子に育った。私の美人な妻のおかげだ。


 おっと、すまないな。家族の事となると父親として自慢したくなるのだ。



 異常な出来事が発生したのは、我が国の大聖堂にある巡礼の鐘が鳴った時刻。その大聖堂内に居る者達、全員に声が聞こえたそうだ。



 〝逃げて〟〝早く、逃げて〟〝その場所は、ダメ〟〝その場所は、危ない〟〝お願い、逃げて〟



 大聖堂内で響くその声は神職の者、礼拝希望者、観光の為に訪れていた者など大聖堂内に居た全員が聞こえたらしい。


 報告では、その声は男性の女性の子供のお年寄りのと様々な声だったようだ。


 そして、その声は大聖堂内に居る限り、繰り返し繰り返し聞こえたのだと。



 その事により、我々騎士団が大聖堂に派遣され調査を始めた。確かに報告されていた通り大聖堂の内部に入ると声が聞こえる。繰り返すその言葉は、ずっと〝逃げろ〟と主張していた。


 調査任務を始めて20分後くらいだろうか。更なる異常が発生してしまった。


 国の調査員や騎士達により、大聖堂での調査や事情聴取を行なっていた時だった。王都が突然、薄暗くなったのだ。


 大聖堂内に居た私は急いで外を確認しに行くと、空が暗雲で覆われていた。朝は快晴だったのだが、今は黒く濁った雲で覆われている。いくらなんでも天気の変化が急変すぎる。


 すると、ポツリポツリと雨が降り出した。そんなに激しい雨ではない。小さな水が、細く降り注ぐ感じだ。


 突然の雨に、大通りで買い物をしていた客なのが走って帰って行く。きっと洗濯物を干していたのだろう。それ程に朝は晴天で、とても雨が降る天気ではなかった。


 次に襲ってきたのは熱気。まるで夏の蒸し暑さのように、ジメッとした暑さだった。任務の為に騎士の鎧を着用していた私達には少し辛い。


 そして、とうとう空の曇天から雷の音がした。いつ落雷が発生しても、おかしくない状況だ。


 いったい何が起きているのかと、当時の私は混乱したものだ。



 急遽、王都を襲った異常気象に混乱する隊員をなんとか怒鳴り落ち着かせる。鍛えた私の隊員達でも、こんなに取り乱すとはな。


 そして、とうとう雷が王都に落ちてしい、雷鳴と共に市民の悲鳴が聞こえる。


 これは、やはり大聖堂の声と何か関係があるのだろうか。つまり〝危険が近付いてきている〟という事かもしれない。そして、この場所が危険であるというのか。



 一人の隊員から〝光る何かが大聖堂に接近している〟との報告を受け、私は陣形を張った。大聖堂の入り口や大通りに隊員を整列させる。


 教会の者達には避難してもらいたかったが、拒否をされてしまった。此処が彼らの神聖なる大聖堂である為に自分達も防衛に参加するとの事だった。


 そして、やって来たのは黒い布を被った光る何かだった。いや、すまない。あれは確かに人間だった。



  小さな 小さな 人間の子供だったのだ。



 何故か、その子供が光り輝いている。あの様な者を、今まで見たことが無い。あれは、あれはいったい何だったのだろうか。今でも分からない。


 そして、その子供は大聖堂の前で止まり、空を見上げた。


 その時、最前列に居た私は確かに見えたものがある。



 あれは『涙』だった。



 私は、その光り輝く子供が泣いている事から、敵かどうかが分からなくなってしまった。


 戸惑う私の質問には答えない子供。だが騎士団の誰も近付こうとしない存在。



 そして、アレが起こってしまったのだ。


 光り輝くその子供がゆっくりと両腕を空へと向けていく。それと同時に呪文の詠唱が辺りに響いた。魔法の詠唱は魔力を含んだ言葉の為に良く響く。



  「・・・【神々は悲しみ・救いの涙は・怒りに満ちる・神罰の時・全てが終わる・最後の日を・せめてもの慈悲に・祈りなさい____ 」



 その子の詠唱と共に空に描かれていくのは、異常なほど大きい魔法陣だった。光り輝くその巨大な魔法陣は、この大きくそびえ建つ大聖堂よりも巨大なものだった。


 ありえない事だと分かっている。だが、ここに記されている事は真実である。


 小さな子供が、巨大な大聖堂を囲える程の魔法陣を出現させたのだ。どれ程の魔力が必要になるのか、これから研究者が調べる事になるだろう。


 そして私は__いや、騎士団と神職の者達全員が思った。これは〝危険だ〟と。あの大聖堂内で聞こえた不思議な声が真実を語り、その声が教えた通りにこの場から逃げるべきだと。



 「____≪アルマ・ラスト・メギド≫】」



 そして撤退の合図を出した数秒後、あの子供の詠唱が終り、空から眩しい光りが落ちて来た。空からの光りは真っ直ぐ大聖堂へと落ち、光に包まれた大聖堂は塵となり壊れはじめ、消えてしまった。


 何もない空地へとなってしまった事に、その場に居た全ての者が呆然と立ち尽くした。先程まで我々が居た大聖堂が、その存在が幻だったかのように消え失せた。







 私の記憶が正しければ良いのだが、あの子供が詠唱した呪文を書き記す。その報告書も作り、研究者に提出した。今日の現象について、夜通し調査されるだろう。


 城付きの魔術師達にも聞いたが、皆が首を傾げていた。これから城にある魔法書を読み漁り、あの子が使用した魔法が何であったかも調べる事となる。


 今日の出来事は決して忘れる事は無い。大聖堂内に響いていた不思議な声のおかげで死傷者が出なかったのは救いだ。その事を私と共に同じ師から剣術を学んだ弟弟子(おとうとでし)が聞いてきたが、重要案件の為に教える事はしなかった。


 ただ、その不思議な声を聞いた者が多数いる為にすぐに調べがつくだろうが。


 私は今日起きた重大な事件のせいで、これから数日は忙しくなる事を悟る。



  ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




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