060話 ブチ切れミネル
3-20.ブチ切れミネル
俺の姿を見た者は、恐れる者ばかり。
突然、王都が異常気象に襲われた。そして突如暗くなった王都で、光り輝くローブ姿の子供が大通りを歩いて行く。
〝アレは、いったい何だ?〟
そんな声がそこら中から聞こえてきた。
いったい何だ?か・・・。ただ俺は〝怒って〟〝悲しんで〟〝喜んで〟〝嘆いて〟るだけの子供だ。
俺は怒っている。小さな子供が殺された事に。
俺は悲しんでいる。救いではなく破滅の行ないに聖女の力を使う事に。
俺は喜んでいる。邪魔だった教会の奴等へ逆に俺が天罰を与える事に。
俺は嘆いている。怒りが収まらず、精霊達も俺のせいで悲しんでいる事に。
そんな感情を持ったまま、俺はあの場所へと辿り着いた。
『大聖堂』
王都には、いくつか教会があった。その教会に所属する神職の人達にとって総本山ともいえるのが、この大きくそびえ建つ大聖堂だ。
教会の中心部となるこの大聖堂でヒロインのミネルソフィ=ターシアは『聖女』である事が発覚する。
乙女ゲームのヒロインが、光の聖女として活躍する始まりの起点。そんな大切な場所。
本当だったら俺は、凄く感動していたのだろうな。
こんな気持ちで・・・ここへ来たくはなかった。今の俺では、何も感じない。
大聖堂の前には、たくさんの神官達が集まっていた。
得体のしれない何かが、この大聖堂へ向かって来ているならば当然か。俺は今、光りに包まれている異形の者なのだろう。
「止まりなさい!お前は何者か!?答えよっ!!」
俺に剣を向けて尋ねてくる男性。その着ている立派な鎧と左手に持つ盾に描かれた紋章で、彼が騎士である事が分かる。
騎士団も来ていたんだね。・・・ああ、この人は知っている。乙女ゲームの登場人物だ。騎士団長でしょ?攻略キャラのお父さん。
でもさ、危ないよ?そこは。その場所は。とっても危ない。だから、ちゃんと逃げてね。
『聖女』が使える光の最大上級魔法は3つ。
1つが、さっき使った『蘇生魔法』。一時間以内なら死者も生き返る、神の救い。
そして、あと2つ。その内の1つを使う事になる。
使えるのかって?うん、だってさ、空を見てご覧よ。あんなに光の精霊達が居るだろう。どれだけ居るのか分からないくらいに、王都の空を埋め尽くしている。
光の精霊達も、それを望んでいる。早く早くと踊っているんだ。なら、ちゃんと使ってあげないと。
でも、俺が使うのは光属性。だからさ、闇の精霊達は避難してな?とっても危ないから。
聖女の光属性にある最大上級攻性魔法。それは『消滅魔法』。それは神の怒り。
消滅魔法が使えるのは『光』と『闇』だけ。それは万物の消去。神々の創作の破棄。
だから、だからさ。逃げて欲しい。やっぱり俺は、この聖女の力で人を殺したくない。だから、お願いだから____
「____逃げてください」
俺の発言で武器を構える騎士と神官。どうか、死なないで下さいね。
そして 聖女をブチ切れさせた事 後悔して下さい
その日、王都にある大聖堂に天から光が照らされ、轟音と共に大聖堂は無くなった。