056話 光る若木
3-16.光る若木
俺さぁ、この乙女ゲームを結構やりこんだ上級プレイヤーな訳よ。なんたって夏休みを丸々潰してゲームをプレイしていた訳だからな。
はいそこっ!「友達いねぇの?プークスクスw」とか言うな!屁かますぞ!
俺にだって友達はいたさ。ちゃんと遊びにも誘われたさ。でも、でもな____
「は?ちょっと秋斗、あんた何処に行く気よ?乙女ゲームはクリアしたの?は?してない?なのに遊びに行くなんて、あんた何様?ちょっと庭まで来な。いいから来なさい」
_____俺には遊びに行く自由なんて無かったんだ。女帝様はそんな事、許しちゃくれない。俺はその後・・・
はっ!?違う、違う。俺が言いたいのはそこじゃない!思い出すんじゃない!
俺が言いたいのは、こんだけやり込んだ乙女ゲームでも見た事がない物体が俺の目の前に存在しているんだよ。
「何だろうな?この光る若木」
今日の朝、精霊たちにペチペチ叩かれて目が覚めた。まだ陽が昇っていない、空がボンヤリと明るくなったくらいの時刻にだ。
そんでモッソリ起きたら、精霊達が俺を引っ張る。も~、何なん?
そんで庭まで引っ張られて発見したのが、このボンヤリと光る小さな木だった。
ん~・・なんか昔、親に連れて行ってもらえた冬のイルミネーションにあった木みたいだ。綺麗だなぁ。
木の全体がボンヤリと光ってる。黄色の様な、緑の様な・・・うん、イルミネーションだなコレ。
よし!せっかくだから、家の中で飾ろうか。そして飾り付けようではないか!クリスマス・ツリーの如く。
もしかして、サンタ的な者を召喚するレアアイテムかもしれないし!
フェイを起こしに行って、手伝ってもら・・・いや、全部やってもらった。だって、もやしっ子の俺に出来る訳ないじゃん。
そんで、「貰えるプレゼントは何にしようかなぁ~♪」と言いながら、その光る若木にいろいろ飾り付けようとした。そしたら、精霊達にめっちゃ怒られた。毛は、毛は止めて!引っ張らないで!
んも~、何なん?これじゃあ、サンタさんが召喚されないかもしれないじゃん。くそ~。
そんな朝を迎えた日、今日もあいつ等がやって来た。
「出て来い、邪教徒共め!いい加減、この地から去るがいい!!」
孤児院の前で怒鳴り散らす集団。着ている服から、そいつ等が教会に属する神職の人達であると分かる。
まぁ今までも何回か訪問していらっしゃるので、無視してまずは朝ご飯を頂きましょう。冷めたら嫌だし。
お~、今日の卵サンドはタルタルソースを使ったな。さすがはジルさん、GJ!俺の好みを分かってらっしゃる。
「この地は我等、教会の物である!邪教徒のお前達が足を踏み込んではならん神聖なる土地だ!」
時々、冒険者ギルドに行く途中に寄ってくれて朝ご飯をくれるんだ。ジルさん、マジ天使。ゴツいけど。
それにしてもタルタルソースとか、ココがゲームの世界なのに味わえるのは素晴らしい。食べ物に関しては褒めてつかわすぞ製作者諸君!
「よって!お前達のような悪しき邪教徒共は、この神聖なる地を即刻あけ渡し、すぐに立ち去るがいい!」
おおぉ、プリンじゃぁ~ん♪ああ~ん、とろける味わいがビューテ☆フォー!生クリームまで付いているなんて最高か。
「さもなくば!神の名のもとに強制執行を行う!さぁ、出て来い邪教徒共め!!」
はぁ~、美味しかったでごわす。ジルさんを嫁に貰うか真剣に悩んでしまう。
「・・・ちっ。全神官!攻性魔法、用意!」
はっ!そうするとヴァンさんが俺のお義父さんに!?という事は俺がマフィアの次期親分でジルさんは姐さんになるのか。
「放てぇえええ!!!!」
俺がアホな事を考えていたら孤児院に爆音が響いた。いい加減、諦めてくれないかなぁ~。