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055話 伯爵様との取引


 3-15.伯爵様との取引



 孤児院の庭では、今日も沢山の果実が実りました。


 俺は朝起きてから孤児院の窓から庭を見て、大きくなった果物の木や野菜などを確認した。


 今日も相変わらず精霊達は木々の周りで楽しそうに踊っている。この数日で、かなりの精霊が増えました。今では町にいた時と同じか、それ以上に精霊達がこの孤児院に集まっている。


 さすがは王都。精霊達も数多く住んでいたみたい。


 そのおかげか、この場所での作物は成長速度が異常です。昨日、果実を採取した場所が次の日には見事な果実がまた実っています。精霊さん達の楽しそうな踊りのおかげだな。


 その異常な成長をする作物のおかげで、孤児や放浪者の人達が毎日お礼を言ってくれる。どうぞ、どうぞ。たくさん持って行って下さいな。





 フェイを感情のままに俺の奴隷にしちまってから数日、やっと落ち着いてきた。


 中古品の家具を買い漁り、路地裏などで暮していた孤児達を孤児院へ迎える。でも、まだ俺が子供達の面倒を見ているのではなく、この孤児院を孤児達が泊まれる場所として提供しているだけだった。住むも去るも自由です。


 だって、子供の俺が子供の世話をするってどうよ?孤児の子供達も俺の言う事、全然聞いいてくれないし。孤児の中には俺より年上の子も居て、俺の指示に従うわけが無かった。


 ただ、孤児達はフェイの言葉には従う。


 さすがは子供好きのフェイ。孤児達をツンデレ風に世話するフェイの姿を見て感心する。子供達が彼への懐く早さときたら、俺は泣きそうになった。これは、もう立派なスキルだと思う。そのスキルを俺も欲しかった。




 この数日で、ちょっとした関係をもった人達が居る。意外な人だ。


 「おはようございます、ヴァンさん。今日もよろしくお願いします」


 この、いかにも貴族な服を着こなすダンディーなおじ様。実は、ジルさんのお父さんです。


 そう。つまりは旧市街をしめるマフィア的なボスさん。名前はヴァンガイド=S=ラクシャス。なんと伯爵様なんですよ。孤児の俺がヴァンさんと親しげに呼んでも怒らない、とても良い人だ。


 「・・・おう」


 「おはよう、ミネル君。今日も果実と野菜を買い取りにきたよぉ」


 それで、隣の人がヴァンさんの護衛をしている人。名前はロイド。凄腕の剣士らしいけど、実力はまだ知らない。


 いつもヴァンさんと一緒に居て、ロイドさんはいつもニコニコ笑っている。目は釣上がっていて細い、狐みたいな目をしている。


 それにしても、さすがはジルさんのお父さん。全っ然、喋んない。いつも、ロイドさんが通訳となっている状況。せっかく声が渋いのにな、もったいない。


 あれ?でも、という事はジルさんも貴族?でも貴族は冒険者になれない設定だったし。という事は元貴族?う~ん、分からん。



 「いつも、ありがとうございます。また誰か怪我をしたら、いつでも呼んで下さいね」


 俺が回復魔法を得意とする事はヴァンさんとロイドさんにも教えた。時々、ヴァンさんとこの若い連中が怪我をしてくるので、治癒師の人出が足らないと困っている聞いてお手伝いする事になりました。


 実は、このヴァンさんに庭で取れた果物や野菜を買い取ってもらっています。


 市街地で売れば?と思うよな。でも、それは無理なんだよ。とうとう教会の奴等が動いたから。


 そのせいで初めは買い取ってくれた店が、俺やフェイが持って行っても買い取ってもらえないようになった。お店の人も、かなり怖がっている。教会の粛清を。


 教会は、わざわざ王都中の店に宣伝したみたい。俺とフェイが神に楯突く要注意人物だと。そのせいで俺とフェイは王都の名物店への来店も出来なくなった。しょぼーん(´・ω・`)



 俺?うん、結構ぶつかった。教会の神官達が何か喚きながら攻撃してくるんだ。


 でもさ、俺にはフェイがいる。フェイは乙女ゲームでも魔王討伐隊の仲間に選ばれる程の実力者。そう簡単に負けるわけがない。


 いつも守ってもらっています。いつか、フェイの最強武器を取りに行って恩返しをしようと思います。それがある場所は火山なので、正直行きたくないけど。



 そんな果物や野菜の売り先に困っていた俺を助けてくれたのが、このジルさんのお父さんでもあるヴァンさん。きっと、俺が困りはてグチグチ文句を呟いていた時に、それを聞いてくれていたジルさんが教えてくれたのだろう。あざーっす。


 これはトップシークレットなのだが、実はヴァンさんとロイドさんはこの旧市街にある孤児院の出身者なんだって。ロイドさんがコソッと教えてくれた。


 「・・・ロイド」


 「そうだった。ちょっといいかな、ミネル君。実はね、フード姿の子供を闇討ちしてるという情報が入ってるんだよね。犯人は、まだ分かっていないようだけど、どうやら教会が絡んでいるっぽいし、ミネル君も十分に気を付けてね」


 「えっ!?」


 「あ、その襲撃された子供達は大丈夫だよぉ。ウチの者が全員保護して、ウチ専属の治癒師に診せたから。俺達からフードを被らないようにって旧市街にいる子供達に知らせているからさ、安心して。でも、犯人達の狙いはおそらく・・・・ね」


 「はぁ、〝炙り出し〟ですか。気を付けます。情報、ありがとうございます」


 教会の人ってさぁ、人々を助ける事を信念にしている人達じゃねぇの?なんで人々を攻撃してんだよ、意味ワカメ。あ、古いの言っちゃった。家の母さんの口癖がうつってるな。


 俺の特徴は、子供で、いつもローブを頭から被る姿だ。教会に楯突くと決めてからは顔を隠す事にしている。だから、特徴が合う子供達が襲われたのだろうとロイドさんと俺は考えた。


 それに、もしかして〝俺のせいで襲われた〟と周りに思わせ、俺を恨みの対象になるように仕組んでいるとか?


 陰険~。きっと友達いねぇだろ、お前等。



 俺はその時、何も思わなかっただろう。数日後、教会の奴等が俺をブチ切れさせるなんて。




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