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054話 聖女か、勇者か


 3-14.聖女か、勇者か



    □ ■ □ ■ □ ■



 「・・・鎖に・・首輪。貴方は、奴隷の方ですか?」


 「・・んだよ、人間の小娘。俺に話しかけんじゃねぇよ」


 「怪我をしているじゃない。こんな状態で、何で店の外に放置されているの?」


 「はっ!奴隷商の男に逆らった罰だとよ。人間族も魔族もクソばっかりじゃねぇか」


 「・・・怪我、見せて。治してあげるから」


 「うるせぇ!!俺に触んじゃねぇ!!噛み殺すぞ、人間の小娘!!」


 「・・・嫌よ、見せて。血が出てるじゃない」


 「・・・・・俺に優しくするな。殺すぞ」


 「大丈夫よ。私は噛みつかれても怪我をしても、回復魔法が得意だもの。すぐ治せる。だから平気。だから・・・見せて、怪我」


 「・・・・・」



 ミネルソフィは一人の悲しい目をした狼人の奴隷を治療し、彼の為に奴隷商の店へと足を踏み入れた。



    □ ■ □ ■ □ ■



 乙女ゲームと同じような事をしている自分に、少し落ち込んだミネルです。


 タジル達への説明は大変だった。特にタジルへのがな。


 「俺の、俺のミネルが汚れてしまったぁ」


 とか騒ぎ出すんだもんよ。


 〝俺の〟ってなんだよ。ミネルは、まだ誰の物でもありません☆・・・あ、今誰かを怒らせるようなセリフを言ってしまった気がする。ごめんなさい。


 一通り、フェイについてタジル達に説明を終えた。その後、『逃亡奴隷』についてクリスさんに詳しく教えてもらった。


 奴隷契約の為に使われる契約書には種類があるらしい。


 普通はただの紙にサインするだけという簡易的なもので、それが一般的らしい。だけど、フェイがサインした契約書は特別なものだったみたいだ。


 『奴隷紋』を相手に刻み込めるほどの契約書。それは特殊な手法で作られた紙と、サインする時に使うペンとインクも特別な物なんだと。


 その契約は、ほぼ呪いに近いらしい。普通は死刑になっても当然な、それこそ王族へ牙を向けた重罪人などに使用されるような契約書だと教えられた。


 その契約書を生成するのに必要な物があり、その1つが『王族の血』が必要だとクリスさんから教わった。


 王族の血  呪い  村を襲った魔王軍


 ・・・ねぇ。もしかして、フェイの村を襲った魔王軍の中にアイツが居たんじゃね?有名声優の無駄使いと噂された残念魔王幹部。


 呪術師ライバッハ。ミスティオン王家の元第三王子。


 もしそうなら、ライバッハがフェイの契約書を持っている事になる。その奴隷の契約書があるかぎり、フェイは一生奴隷なのだとクリスさんが悲しそうに教えてくれた。






 「あのよぉ、主様に聞きたい事があんだけど良いか?」


 まだ孤児院には家具が何も無いので、俺とフェイはタジル達の拠点に泊まらせてもらいました。


 「ん?何?」


 「主様は『光』に『闇』まで使えるんだろう?それに『樹』に『土』も使えて、あの威力だ。もしかして、他の属性も全部使えるのか?」


 これは・・・正直に答えた方が良いのか?フェイは俺の奴隷となった。なら、いつかはバレるのは必須。


 「出来なくもないような、出来ちゃうかもしれないって言う感じになっちゃうような気もしない事もないような感じだと俺は感じている気もするな」


 「やっぱり、出来るのか」


 ちょっと待て、フェイ!なんで今ので〝出来る〟になるの!?なんで今ので断言できたか俺が聞きたい。俺が今言った言葉は俺でも理解不能なのに。



 「主様は・・・勇者なのか?」


 「ゆえあ?」


 え、何?ゆうしゃ?『勇者』!?はぁ、勇者!?


 「ないないないない!それはないよ、フェイさん!勇者なんて絶対にない!ワタシ、ウソつかない」


 「そう・・・なのか?」


 『勇者』なんて絶対に嫌だ。それだったら『聖女』の方が、まだマシだ。



 『勇者』なんてモノは人々の助けにさっそうと現れ、無償で救い、眩しい笑顔で白馬と共に手を振りながら去っていく。なんて気持ちの悪い生き物なのだろう。


 それに比べて『聖女』はどうだ。ただ人々に笑顔で手を振るだけで泣いて喜ばれ、座っているだけで供物という食べ物を貰い、お布施というお金をもらい人々を癒す。ああぁ~、なんて健全なのだろうか。



 「でも全属性を使える男といえば、昔から『勇者』と決まっていると曾ババ様に習ったぞ?違うのか?」


 う~~~ん。確かに、条件は満たしている。満たしているのだが・・・。


 俺の体は乙女ゲームのヒロイン『ミネルソフィ=ターシア』だ。それは間違いない・・・男だけど。


 乙女ゲームでは『聖女』となった体。それが男になっている。だから、勇者?


 いや違うだろう。違う違う、違うったら違う!認めない、俺は認めないぞ!あんな自分の白い歯を輝かせて笑うような奴になんて、俺は絶対に嫌だ!


 「うん、違いますからね。あと俺が全属性を使える事は、それを知っている人以外には誰にも言ってはいけません。これは主から貴方への〝命令〟です。いいですね?」


 「分かった。言わない」


 フェイは大人しく頷いてくれた。


 主から奴隷への命令システム。これは絶対遵守になるってクリスさんに教わった。あまり使いたいモノでもないけどな。



 『勇者』、『勇者』ねぇ。そんなの、この乙女ゲームに登場しなかったし、存在しないでしょ。


 それよりも気になるのが、やっぱり『聖女』となったアンジェラについて。


 乙女ゲームでは悪役令嬢となったアンジーちゃん。ヒロインをとことん苛め、そしてその事が攻略キャラ達にバレてしまい断罪される事となる。だがアンジーちゃんはその前に逃亡して、魔王の幹部となる。


 そんな存在が今や『聖女』。・・・大丈夫だろうか、この世界。俺、今この世界に生きてんだけど?





 その数日後、侯爵令嬢『アンジェラ=K=モンテネムル』とランブレスタ王国第2王子『エルナルド=C=ランブレスタ』との婚約発表がされた。


 同時に、侯爵令嬢『アンジェラ=K=モンテネムル』を、ランブレスタ王国と教会によって認められた『聖女』とし発表されたのであった。




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