050話 聖女に選ばれた者
3-10.聖女に選ばれた者
ふはぁ~、風呂が気持ち良いぜ~ぃ。
今日は疲れた。本当に疲れた。まだ王都に来て1日目なのにな。
あれから王国より騎士団の人達が冒険者ギルドに来て、エル王子を連れて帰った。
聖女 聖女かぁ
エル王子から聖女について俺達は詳しく聞いた。
そもそも属性検査を受ける順番として王族や貴族は、庶民より先に行われるんだと。まぁ、当たり前か。
そこで一昨日、ある侯爵令嬢が『聖女』として認められたらしい。
侯爵令嬢の名前は『アンジェラ=K=モンテネムル』
___この乙女ゲームの悪役令嬢だ。
まぁ確かに『闇』が主軸とはいえ、全属性が使える訳だしな。納得。
って納得できるかい!乙女ゲームと設定ちゃいまんがな!アンジェラが聖女になるなんて物語に無かったぞ。どゆ事!?
あ。もしかして、その後に行われた庶民の属性検査でミネルソフィが『光』を主軸にした聖女だと分かり、アンジェラが聖女になる事が無くなったとかだろうか?
ミネルソフィは孤児から貴族になったが、王族や貴族の子供達を対象にした属性検査には登録が間に合わなかったんだ。それで庶民の属性検査を受けてたはず。
エル王子いわく王国や教会は、待ちに待った『聖女』の誕生に大騒ぎだったらしい。
市民にはまだ内緒みたいだが、近々第2王子であるエルナルドとの婚約と共に発表するんだってさ。
まぁ俺の代わりに聖女をしてくれるのなら、俺的には万々歳よ?
でも、でもさぁ。『聖剣の覚醒』はどうすんの?あの剣がないと魔王を倒すのは無理っすよ?
もしかして、悪役令嬢の主軸が『光』に変わってるとか?おお~、それはありがたい。
だって、肝心の聖女になる筈だったミネルソフィ=ターシアが男じゃん。それが原因で変わったとか有りじゃない?
なぁ~んだ。そっか、そっか。俺の代わりを悪役令嬢のアンジーちゃんが聖女してくれるのね。
それなら俺、わざわざ王都に来なくても良かったじゃないか!あっはっはっはっ。
・・・なんて安心出来るかい。こちとら世界の消滅がかかっているんッスよ?ちゃんと確かめないと安心できんわ。
・・・
でも、どうやって?
相手は侯爵令嬢。片や俺は親が居ない孤児。無理っすね!
・・・
・・・・・・いや、まぁあるよ?あるけど、それは絶対に嫌だ。だから他の方法を探す。
確かに・・・確かに俺の父親は男爵だ。それを頼って貴族学園に行ったら確かめられる可能性がある。
でも、これだけは絶対に嫌だ。何で俺が乙女ゲームのキャッキャウフフ☆学園生活をせにゃぁならんのだ。勉強、嫌いだし。
きっと他の方法があるハズだ。確かめられる方法が、絶対に。
「ジルさん、ジルさん。おかえりなさい。で?で?どうでした?」
翌朝、朝食を食べていた時にジルさんが拠点の屋敷に帰ってきた。ジルさんが朝早くに出掛けたので、朝食は出前だった。
「・・・ん」
ジルさんが渡してくれたのは旧孤児院のある土地の権利書。え、マジで?やった!すげーよ、ジルさん!ありがとう!
「おめでとさん、ミネル。ジルもご苦労さん。おやっさんは元気だったか?」
「・・・ああ」
タジル達からジルさんの親について聞いた。驚いた事に旧市街をしめるマフィア的なボスなんだってさ。
若手との対立で争いが大変らしいが、俺のお願いを叶えてくれたらしい。あざーっす!
これで『住』もOK。さっそく孤児院の修繕といきまっしょい!