046話 再会
3-6.再会
ゲームにも登場した王都って、もっと楽しい場所かと思ってた。
みんなが幸せに暮らして、協力し合って、笑顔だらけの場所かと。
だって、この世界は女の子たちが楽しくプレイする乙女ゲームの世界なのだから。
なのに・・・
「ああ、居た居た。ミネル君、こんな所に居ましたか」
俺が考え事をしながら王都の大通りを歩いていたら、後ろから俺を呼ぶ声がきこえて振り返る。
そこには、タジルの仲間であるクリスさんが手を振っていた。
「探しましたよ、ミネル君。お久しぶりです。冒険者ギルドから連絡がありましたので行ってみれば、君はすでに居なくなっていたらしいので心配しました」
「お久しぶりです、クリスさん」
そうだった。王都でタジル達と再会する予定だったな。忘れてた。
「しかし、どうしたのです?何か考え込んでいましたが、何かあったのですか?」
「そうだ、クリスさん。教えて欲しい事があるのですが____」
王都には、いろんな料理が楽しめる。ランブレスタ王国で有名な料理は、この王都にある飲食店で名物料理として堪能できる。
そして今、まさにその料理達が机に並ばされていた。料理、料理、料理!机から溢れんばかりの美味しそうな料理の数々。ああぁ、素晴らしい。夢のようだ。いったい、どれから食べれば良いのだろう。
「ミネル君。酷な事を言いますが、孤児達を助けようとしない方が良いと思います」
俺は後ろから抱き着いてくる久しぶりに再会したタジルを押しのけて、料理にガッつく。この肉、マジ美味。
「え?何でですか?」
「・・・前にもね、居たんです。今のミネル君みたいに孤児達を助けようとした人が。ですが、その人は教会に目を付けられ、いつの間にか姿を見ないようになったそうです」
「姿を?何処かに遠出したとかでなく?」
「ええ。その人と親しかった者達が捜索をギルドに頼んだのですが結果は芳しくなく、突然消えたとしか言えませんでした」
「消えた、ですか。凄く物騒な感じがしますね」
「それからは皆、表立って孤児達を助けようとしなくなりました。ですが、少数ながらこっそりと孤児達を助けようと食料を渡している者達も居ます。教会にバレないよう、用心しながら」
うわ~、教会が絡むのか。でも、何でだ?乙女ゲームのストーリでは教会は良くしてくれてたぞ。
「そうねぇ。確かに孤児の子を見かけると可哀想だと思っちゃうわ。でも助けると、教会が運営する孤児院に子供達が集まらなくなるという理由で許せないらしいのよ」
「はい。よほど教会は優秀な子供を、より多く集めたいらしいですね。それを妨害する行為は〝神〟の名を使い粛清を、と神官達の手によって拘束されてしまいます」
トリアさんも加わり、詳しく説明された。
でもさ、教会って〝苦しむ者に救済を〟とかなんとか言ってなかった?それで聖女に任命されたミネルソフィは仲間達と共に、救済を求める村々をあちこち向かわされたぞ。
「・・・教会は、もっと良い場所だと思っていました」
「昔はそうだったぞ。ただ数年前に担当する教祖が変わってな。新しい教祖は〝優秀な人間には祝福を〟とか言い出して、優秀な人材の発掘に御執念だ」
しつこく俺の後ろから抱き着くタジルが教えてくれる。いい加減、タジルも飯食えよ。
「王に進言する貴族も何人かいるんだけど、教会の教祖が相手となると・・・ね。王様でも教会総本部とはモメたくないのでしょうね」
「・・・ですが、光の女神様から加護を頂いたとされる〝聖女様〟なら、その教祖よりも上になる存在なので王に進言すれば通ると思いますよ?」
クリスさんの発言で、全員が俺を見る。
いやいや、俺は男だからな?確かに加護はあるだろうけど、男だから聖女をやるつもりは無いです。
「ん~・・ミネルはその旧市街にある土地が欲しいって事だよな?なら、ジルに頼んだらどうだ?たぶん何とかなると思うぞ?」
「え?ジルさんにですか?」
「ああ。で~も!もちろん無料って訳じゃあ無ぇけどな♪」
俺にギュッと抱き着く力を強めたタジルが、ニヤニヤしながら言った。すげー嫌な予感。
「ミネルには、今俺らが受けている冒険者ギルドからの依頼に協力してもらおうか」