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004話 孤児院の子供たち

 

 1-4.孤児院の子供たち



 戻ってきました、始まりの町リナリクト。


 門に入る時、門番さんに止められたが、無事に入れました。まだ子供の俺には身分証が無くて当たり前らしい。目的も〝果物を売りに来た〟と立派な理由があるし、怪しい者ではないです。草で作った即席のカゴには、その証拠である果物をモッサリと積んである。


 身分証を持たずに町へ入るには入場料がいるみたいだが、上目遣いで「おかね、ありましぇん」とか言ったら入れてもらえた。門番さん、マジちょろ___ではなくて、マジで優しかったッス。



 そして、やって来たのは朝の商店街。買い物中だった主婦の方に果物を買い取ってくれそうな店を教えてもらった。あざ~っす。


 教えてもらった果物屋のおばちゃん、とても良い人だった。子供の俺でも丁寧な扱いをしてくれて、果物もあっさり買い取りOKだった。


 持ってきた果物を全部、無事に買い取ってもらえた。それも少し高めに。「おじいちゃんの、おてつだいなんです」という言葉がきいたかな?子供の上目遣いって強力だな。嘘が少し心に痛むが、俺も生活の為なんだ。


 果物屋のおばちゃんにお礼を言って、手を振って別れる。また、ここの果物屋さんに売りに来よう。


 さて、果物を売ったお金で町の中で買い物をしようか。パンとか肉とかも欲しいが、今はダメだな。今は我慢だ。まずは生活基準の向上だろう。布製品が欲しいなぁ、寒かったし。


 そういえば、買い物している時にフッと思った。ヒロインちゃんの母親って娘を捨てた後どうなったんだろう?ゲームではそんな事一度も出てこなかったし、何も疑問に思わなかった。でも俺は今そのゲームの中にいるから、一度会った彼女の事が少し気になった。


 まぁ、あの人が母親と言われてもピンとこないけどな。俺の母親は〝宮沢 恵美子〟ただ一人だ。



 さて、買い物も終えたし帰りますか。森の中で出会った精霊達も数人(人でいいのか?)、俺と一緒に来てくれた。その精霊達が、町の中にいた精霊達と仲良くなり一緒にクルクルと踊っている。すんげー可愛い。


 ・・・少し休憩するか。楽しそうに踊る精霊達を見ていたいし。





 「お前、どこの子だよ?」


 精霊達の踊りをベンチに座り見ていたら、横から男の子たちに話し掛けられた。なんか着ている服とかが汚れている。顔も泥とか付いているし、母ちゃんに怒られるぞ。どんな遊びをしたんだ。


 でも、この子たち。どっかで見覚えがあるような・・・?


 「聞いてんのか?あんま見ない顔だが、どこの子なんだよ?」


 「・・・ボク?ボクは昨日お母さんとこの町に来たんだ。だから知らなくて当たり前だよ?」


 この年齢ならやはり〝ボク〟が似合っているな。ショタコンの皆様、泣いて喜んで下さい。俺、可愛いだろう?


 「もしかして、お前も親に捨てられたのか?」


 俺の事を見る目から憐れみを感じた男の子が言う。


 おっと、コレは少しよろしくない事態だ。〝お前も〟・・・か、なるほど。今の言葉で思い出したのだが、この子たちは孤児院の子供たちだ。本当だったらヒロインちゃんがお世話になる筈だった孤児院の子達。その孤児院の風景に居た憶えがあり、挿絵としても映っていた。


 少し今の状況はマズイ。俺は孤児院へ行くつもりは無いから。孤児院へ行けば、確実に乙女ゲームの物語を進む事になってしまう。


 「違うよ?王都に居るお母さんとは生活が苦しくなってきたから、森向こうのお祖父ちゃんの家で僕だけ暮す事になったんだ」


 よし、コレでいこう。俺ってば天才。咄嗟に見事な嘘を考えられた。いや~どーもどーも、精霊の皆さん。拍手喝采ありがとう!


 「そっか、なら大丈夫だな。じゃあな、また会ったら遊ぼうぜ!」


 「うん、じゃあね」


 バイバイと元気よく手を振る茶色の髪をした男の子を先頭に、子供たちは路地裏の方へと消えて行った。


 はぁ、ヤバかった。咄嗟に嘘が思い浮かんで良かったが、失敗すれば俺も孤児院行きだったかも。これがゲームの補正力ってやつかな。恐ろしい、気を付けよう。


 あの子達は別に攻略キャラとかでは無いし、ヒロインちゃんの幼少時代に映っただけの存在。今度、一緒に遊んでも良いと思う。乙女ゲームでいう一時的なモブキャラだろうし、関わっても問題ない筈だ。


 せっかく6歳児になったんだ。小学生に戻った気持ちで遊ぶのも悪くないだろう。鬼ごっことか、缶蹴りとか走り周るのが良いなぁ。あ、缶なんて無いか、残念。


 そういえば、この世界にゴム製品とかあるのかな?日本製のゲーム世界だし、それなりに技術は発展している筈。有ると良いなぁ、ボールとかでも遊びたい。



 さて、そろそろ帰りますかねぇ。精霊達、ありがとな。その踊り、とても可愛かったよ。


 「どっこいしょ」と爺臭いセリフを言いながらベンチから腰を上げる。そして俺の横に置いてある今日買った必需品である荷物を持ち、帰る事にした。町の中に居た精霊達にさよならと手を振り別れた時、何か聞こえてきた。



 〝うわぁあああ〟 〝おにいちゃぁあん〟 〝たすけてぇええ〟



 それは明らかに何か悪い事が起きてしまった悲鳴。しかも子供の声。微かな、本当に小さな声だった。でも、俺には何故か聞こえた。


 黄緑色の服を着た精霊達が、必死に指で路地裏を示し俺に伝えようとしている。なるほど、君達が俺に聞こえさせた訳か。


 しかし、今の声。きっと、先程出会った子達のものだろう。何かあったのか。


 でも、路地裏なんて行きたくない。怖いし、暗そうでジメッとしている。それに悲鳴があったという事は何か悪い事態が発生したという事だ。


 ・・・・行きたくないなぁ。


 そう思っていると風の精霊達が俺の髪を引っ張りだした。


 痛い、痛い!分かったよ行けば良いんだろう!?


 俺がウジウジ考えていたから、怒った精霊達が俺の髪を鷲掴みにするとは思わなかった。抜ける、抜ける、まじ抜けるってば!



 俺は精霊達に引っ張られ、泣く泣く薄暗い路地裏へと進む事になった。




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