039話 呪術師の過去
2-18.呪術師の過去
「なっ!?セイリュウ!?何故、お前がここに居るのだっ!?」
みんな、朗報だ。無くなった俺のお土産の団子とせんべぇだけどさ、後でセイリュウが倍の量を買ってくれるんだってさ!俺、もう泣かないよ!
「ゲンブよ。もう諦めろ。お前の部下共も捕えた。後はお前だけだ」
「くっ・・・。おい!お前がセイリュウに呪いを掛けたのではないのか!?何故あいつは自由に動けているのだ!?」
セイリュウさんと仲間達でゲンブを取り囲む。すると、ゲンブが後ろに居たフードの男に問いかける。
へぇ、〝お前がセイリュウに呪いを掛けたのではないのか〟・・・ねぇ?
「私の呪いはちゃんと成功しましたよ?それならゲンブさん、セイリュウ氏を地下牢で鎖に繋いだのではないのですか?何故、彼は自由の身なのです?」
この声・・間違いないね。このフードの男は____
「そんなもん知らんわ!くそっ、くそっ!お前のせいだ、お前のせいでっ!」
「うるさい男ですねぇ。少しは落ち着かれては如何です?」
フードの男は余裕そうだな。まぁ、こいつなら逃げる算段とかありそうだけど、性格的に。
「貴方は、すごく落ち着いているんですね?呪術師ライバッハさん?」
俺は後方で様子を見ていたんだけど、一番前に居たセイリュウさんの隣に並んだ。
「・・・何を言っているんだい?フードの君。誰かと間違えているようだが」
とぼけても無駄なんだよなー。アンタのその声。女性が選ぶ男性声優ランキングに毎回3位以内に名を残すような有名な声優さんが担当したから。いくらなんでも聞き間違えではない。
「あれ~?そうなんですか~?ライバッハ=K=ミスティオンかと思いましたよ~。
子供の頃から人形遊びが大好きで、その事で兄弟からは馬鹿にされる毎日。その人形遊びは大人になっても治らず、王と王妃にも呆れられ、民からは『少女趣味の第3王子』と噂される。その事が原因で婚約者は出来ず、しまいには自分以外を逆恨みして呪術に手を出した自己中王子。王家からはもちろん勘当されてしまい、その後に王子の部屋で隠していた趣味までもが露呈してしまう。その趣味というのは幼女の____」
「や、やめろぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!」
自分のフードを掻き毟って発狂する男。
そうなんだよねぇ。この設定が大多数の女性を怒らせた。
ネットの世界は荒れ放題。乙女ゲーム会社への誹謗中傷は当たり前。しまいには製作者への〝殺害予告〟までに発展してしまったのだ。
悪者の設定だからといって、あんな有名な声優さんを使ったキャラをそんな設定にすれば、そりゃあ女性達は怒る。
だけど、この事件がテレビのニュースに流れてからは、この乙女ゲームの売り上げが急上昇したんだよな。
世の中って不思議だなぁ。まったく理解出来ない。
「はぁ、はぁ・・・そうか、アナタですね?死霊王が言っていたフードを被った子供の聖女というのは」
俺がニヤニヤ笑いながら言ったもんだから、ライバッハが凄く睨んでくる。
「なるほど、私の呪いを解いたのもアナタですか。聖女のアナタなら納得です」
おっと、ライバッハとゲンブの足元に魔法陣が出現したぞ。コレなんぞ?
「この屈辱は忘れませんよ、聖女。必ずあなたを呪って差し上げます。だが、今はこれにて失礼を」
ライバッハとゲンブは魔法陣と共に、何処かに消えてしまった。