037話 凶悪犯ミネル?
2-16.凶悪犯ミネル?
俺はまた犯罪に手を染めた。
一度汚れてしまった俺の手は、これからも何度だって汚れてしまうのだろう。
ああぁ、父さん、母さん、お姉さま。俺は凶悪な犯罪者になりもうした、許してけろ。
阿鼻叫喚となった隠れ里を走り抜けながら、俺は家族に謝っていた。
俺が何したか。それは『放火』だ。
な?最悪だろう?凶悪だろう?でも、俺は捕まらない!警察なんて○○○○だっ!捕まってたまるかっ!
時代劇。そう時代劇でなんか見た憶えがあったんだ。
仲間を城から助ける為に、城下町に火を放ち、混乱している隙に救出。イッツ・ア・ハッピーエンドゥ!
あ、ごめん。放火されているからハッピーではないか、ごめんなたい。
よし、それでいこう。これが終わったら教会へ行こう。懺悔したら俺の罪は無効になる。便利だな懺悔。
さて、隠れ里は火の精霊達の遊び場所へと変わった。
走り回る人々。叫ぶ住民。泣いている子供。・・・あ、ちょっと胸が痛いッス。火の精霊さん、ボヤくらいでお願いしやす。
一番大きな屋敷からも、大勢人が出て行った。
精霊から教えられたスザクの居場所は地下牢。見張りは・・・いる。お前らも外行って火を消してこいや。
仕方ないので寝てもらった。この〝ネミネ草〟って便利すぎる。こんなんゲームにあったっけ?
「・・・ミネル、なの?」
おっと、スザク発見。フードを外して、見張りが持ってた鍵で牢を開ける。
「・・・ミネル、父ちゃん、居た、この奥、居た」
牢から出たスザクが俺に抱き着いて引っ張る。ん?セイリュウ居たの?
「・・・俺、暗視、出来る。父ちゃん、生きてた」
スザクの案内で地下牢の奥へと進む。最奥にある牢の中に鎖で繋がれた男が居た。
「・・・・父ちゃん、父ちゃん、父ちゃん」
スザクが呼びかけるが反応なし。でも秘伝の毒ならとっくに死んでるハズじゃね?
あ、そうだった。魔王軍に引き渡すなら生きてて当然か。ならセイリュウが持ってた『秘伝・毒回丸』を使用したとか?
セイリュウの牢も鍵で開ける。脈は確かにあった。でも、この黒い痣はなんだ?それにこれは・・・拷問の痕か、ひどい事を。
俺は光の精霊達に協力してもらい、全力の回復魔法を使った。
拷問の傷はすぐに治癒できたが、この黒い痣がしつこい。なんだ?この油汚れみたいなしつこさは。
おいおい。黒い痣を消す事は出来たけど、俺の魔力を半分以上も使ったぞ。しかも精霊達に力を借りてだぞ?
何だったんだ?あの黒い痣は。