032話 ※シグマ※ Prt.2
2-11.※シグマ※ Prt.2
※ ※ ※ 上忍 藤堂 シグマ 視点 ※ ※ ※
「シグマ、大人しくスザク様をこちらに渡せ」
「渡す訳がないだろうがっ!」
俺は刀を構える。だが、この人数だ。いったいどうすれば逃げられる。
「俺達に渡さずどうする気だ?戦う気か?我々と」
勝てないのは分かっている。だが、どうにかしてスザク様だけでも。
「お前の体にはゲンブ様が興味をお持ちになってな。シグマよ、お前はどうしてまだ生きている?」
・・・?言っている意味が分からない。どうしてだと?
ミネル君が治療してくれたおかげだが言える訳がない。
「お前には、確かに組織に伝わる秘伝の毒が塗られた刀で斬ったはずだ。なのに何故、お前はまだ生きている?」
「なっ!?」
『秘伝の毒』をだと!?あの毒を治すには、今やスザク様が継承したアレしか無いはず。
ミネル君。きみはいったい・・・・
「まぁ、答えなくとも良いさ。お前を殺した後に体を隅々まで研究すれば良いだけの事」
周りの奴らが刀を抜く。やはり全員の刀にも毒が塗られており、液体が滴っている。
「・・・・やれ」
男の合図で、周りの奴らが一斉に襲い掛かってきた。
俺は得意な『火遁の術』で突破口を作ろうとしたが、相手のほとんどが『水遁の術』を使える奴ばかり。完全に対策がされていた。
「・・・かっ!」
「スザク様っ!?」
くそっ、スザク様が!どうやら気絶させられたらしく、男に抱えられている。
「優秀な暗殺者候補でも所詮は子供だったか・・・例の場所まで運べ」
ちっ!スザク様を放しやがれ、クソどもがぁあ!!!!
「がはっ!!!!」
俺は後ろから刀で貫かれた。痛む腹から暖かな血が流れるのが分かる。
「・・・【火遁・業火球の術】」
最後の足掻きだと分かっている。だが、最後まで俺はスザク様を・・・。
「・・・追え。奴の遺体は回収しろ」
「・・・はっ」
スザク様が連れて行かれた方へと急ぐ。だが、もう目が霞んできやがった。
俺は何かにつまずき、地面に倒れた。
起き上がる事が出来ない。目も、もう見えなくなってしまった。毒がまわってきたか。
地面に俺の血が溜まっていくのを肌で感じる。もう手で印を結ぶことも出来ない。これでは術を使うのも不可能か。
セイリュウ。セイリュウよ・・・すまない。
俺は、俺は・・親友のお前の大事な息子を守れなかったみたいだ。
本当にすまない。
俺は、もう死ぬのか。
セイリュウよ。今から、お前の所に行くから。
直接、お前の所に謝りに行くからさ。本当にごめんな、セイリュウ。スザク・・さ・・・ま・・・・
「・・・ん・・・・こ・・こは・・・」
俺はゆっくり目を開けた。何だ?動けない。
「・・・洞窟、か?待て、なぜ俺はこんな所に。い、いや、なぜ生きて・・・」
俺は混乱している。目が覚めると体の半分以上が土に埋まっている状況だった。しかも刀で刺された箇所が痛くない。
いったい、何がどうなって・・・・
俺は周りを見渡し、見付けた。左の壁に書かれた文字を____
『
死にたがり屋のシグマさんへ
しばらくそこで反省してろです
ミネル
』
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