031話 ※シグマ※ Prt.1
2-10.※シグマ※ Prt.1
※ ※ ※ 上忍 藤堂 シグマ 視点 ※ ※ ※
やはり泣いてしまわれたか。スザク様はあまり感情を出す御方では無いのだがな。
俺達は世話になったミネル君の屋敷から出て行った。
不思議な子だった。
珍しいピンク色の髪をした小さな子供。あれでも8歳らしい。
身長はスザク様とほぼ変わらないのにな。
回復魔法が得意なようで、普段は冒険者ギルドで働いているとか。
小さいのに自立しているなんて凄い子だ。
そんな子を巻き込む訳にはいかない。
昨日の昼。俺はいつも通り町を見張っていた。そして、とうとう来てしまったんだ。
「・・・やはり来たか」
一般の者を装っているが、暗殺者だとバレバレだった。素人がそんな気配の消し方を知るはずが無い。
商人の男。主婦の女。デート中の若い男女。全員が暗殺者だ。
仕方がないが、もう逃げるしかない。
あいつ等の狙いはスザク様に継承された〝あるモノ〟の作り方が記された巻物。今ではスザク様しか閲覧できない様になっている。
その代々統領一族だけが受け継いできた巻物は2つ。『秘伝・絶対毒』と『秘伝・毒回丸』。
1つは、もうすでにゲンブに盗まれてしまった。だから、もう1つの方だけでも守らなければ。
組織の情報網は凄まじく、すぐに俺らの居場所がバレるだろう。逃げるしかないんだ。
町を囲む壁を乗り越え、暗い森へと潜む。大丈夫だ、気配はない。
スザク様も泣き止んでいただけたし、ゆっくりと進もう。慎重に、気配を消しながら。
まずはココから北にあるという、この大陸の王都を目指そう。人を隠すなら人の中だ。
スザク様の健康も大事だ。焦らず休む事も必要だろう。
休みながら移動して、空も明るくなった。
それなりに離れたと思うのだが、そろそろ朝食を取らなければ。体力の回復は大切だ。
食料は大丈夫。あの町でだいぶ買い足したからな。王都までは保つだろう。
「スザク様。あと少し休まれた後、出発いたします」
「・・・・うん」
朝食を終え、その痕跡を消す。よし、出発しよう。
だが、俺達が出発しようとした時____
「ようやく見つけたぞ、シグマにスザク様」
っ!?くそっ、いつの間に!
俺達の周りには10人の暗殺組織の奴等が居て、囲まれていた。
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