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003話 精霊


 1-3.精霊



 森の中はとても空気が澄んでいる。不純な工場の煙とか、車の排気ガス等が無いからだ。そんな森の中で目覚めた朝はとても気持ちが良い。ちょっと寒いけど。


 こうやって朝の小鳥が鳴く声や、朝陽を浴びるのは心地よく、気分が良い。やっぱり寒いけど。



 うん、よく寝た!おはよう、みんな。今日も良い天気だ。



 早朝、元気に目覚めた俺。この世界だと初めての朝日。とても眩しい。


 そういえば、森の中で目覚めるのなんて何年ぶりだろう?小学生の頃は父親に連れて行ってもらえたキャンピング場で家族とテントを張り泊まった記憶はあるけど。


 でも女性陣、つまりは母さんと姉さんには不評だったんだよな。虫がどうの、美容がどうのって。それで、いつの間にか温泉旅館宿泊旅行に変更しちゃったんだよ。哀れ、父さん。


 やっぱり女性陣にとっては美容は重視だったみたい。空手の達人である戦闘民族のお姉たまも温泉効果には目を輝かせていたからな。アレも女だったのだと再認識できた。人類を超越した化け物かと思ってた。




 さて、俺が1泊した森の中にある洞窟へ戻る。


 この大自然で1泊お世話になった洞窟だけど、そんな都合良く洞窟なんてある訳ないと思うよな?ふっふっふっ、甘いのだよチミ達は。無ければ作れば良い。つまり、この洞窟は俺が作ったのだ。凄かろう!?


 ヒロインちゃん、マジで優秀。魔力も膨大だから土魔法でスイスイ作れました。数時間で作ったわりには立派な横穴住居だ。それに、土で机や椅子、棚やらベットやらも作ったんだぜ。ただ、布は作れないのですこし寝るのは痛かったし寒かった。いつの間にか火が消えてたし。


 これからは、この場所を俺の本拠地にする予定だ。町からも程々の場所で、近くに綺麗な川もあった。うん、ちょっと楽しいかも。


 この森はゲームでいうと初心者用の探索場所。魔物(モンスター)も弱く、たまに初心者の冒険者が来る程度。ヒロインちゃんの力とゲームの魔法を知る俺にとっては住みやすい。




 さて、これからの事を考えよう。


 今の俺はヒロイン役である。そして一晩寝て、落ち着いてからこの乙女ゲームを思い出してみた。それでさ、このまま森の中でずっと暮すのは少し無理かもしれないと分かった。


 なんでかって言うと、もしこのままヒロイン役である俺が森で隠居した場合〝この世界が消滅してしまう〟からだ。これはちょっと__というか、かなりヤバい。つまり俺も死ぬって事だし。


 残念ながらこの世界、魔王が存在するんだよ。・・・いや、大魔王の姉さんの事ではないです。アレはただの俺が付けた姉さんの称号なので。


 それで、主人公であるヒロインちゃんと結ばれた男性キャラが聖剣に選ばれ、仲間達と共に魔王を倒す、という物語なんだよ。


 ヒロイン役の俺が男なのだから、もしかしたら他の登場人物も性別が反転しているかもしれない。もしそうなら異世界定番のハーレム・チャンス有り?とか思ったり。


 まぁ、それは分かんないから今は放置で。それよりも、だ。ヒロイン役で、もっとも重要な役目があるんだよ。



 それは、『聖剣にヒロインちゃんの光属性を与え、目覚めさせる』という役目。



 光属性は珍しいけど、他にも持っている人は居る。駄菓子菓子、そこはゲーム設定。〝ヒロインちゃんは光の女神様より加護が与えられており、唯一聖剣を目覚めさす事が出来る〟だってさ。


 これが本当に重要で、魔王を倒すには聖剣で止めを刺さないとダメなんだ。


 聖剣を目覚めさせる事が出来るのはヒロインちゃんだけ。そう、つまりこの世界でいうと俺なわけ。なんで男の俺がヒロイン役なんだ・・・




 「あ、みんなおはよう。昨日はありがとな」


 俺の前にチョコチョコ動く小さな小人みたい子達にあいさつをする。実はこの子達、『精霊』なんだよ。さすがゲームの世界だよな。まさにファンタジー。


 普通は見えないよ?でも俺はヒロイン役だから特別。〝精霊眼〟というスキルが使えるんだよね。ヒロインのミネルソフィ=ターシアが持っていたスキルで、多少は魔力を消費してしまうが精霊が見える能力。でも、ヒロインちゃんの膨大な魔力では微々たるものだ。


 「じゃあ、朝ご飯にしようかな。昨日くれた種はまだある?」


 緑色した服を着た子達が俺に小さな種をくれた。「ありがとな」と礼を言うと、飛び跳ねて喜んでくれた。ヤバい、すんごく可愛い。


 乙女ゲームでも登場していたが、実際に見てみたら可愛さが増す。鼻血出そう。



 「・・・【光の雨よ・小さき種に・祝福を ≪プラネット・シャイン≫】」


 精霊達に貰った種を土に埋め、光属性の成長魔法を唱える。そうすれば、ホラこの通り。見事な果実が実った木が生えました。土の精霊達にも協力してもらったので、果実の甘さもバッチリだ。


 こういう時、〝光〟が主軸であるヒロイン役になれて良かったと思う。ちょ~便利。



 さて、朝ご飯の果実をもしゃもしゃ食べながら考える。


 聖剣か・・・。確か王都の大聖堂で厳重に保管されているんだよな?どうしようかな・・・別に俺が攻略キャラと結ばれなくても良いのだが、というか関わる事なんてしないと思う。でも、この〝聖剣を目覚めさせる〟というやつをしないと世界が危ない。困ったぞ。


 攻略キャラ達は放置で良いと思う。ヒロインちゃんと結ばれた者が聖剣に選ばれるという設定だったが、どうせヒロインちゃんが居ない場合は王道の王子様が持つとかだろう。ゲームではヒロインちゃんと一番好感度が高い男性キャラが持っていたので、つまり攻略キャラ達は全員が聖剣に選ばれていた。なら、俺が頑張らなくても誰か選ばれるだろう。


 それに、ヒロイン役である俺が登場しなければ、悪役令嬢役だったあの子も嫉妬なんかをせずに婚約者である王子様と結ばれるだろう。そして、魔王側になる事も無い。おぉ、万々歳じゃね?素晴らしい。



 とりあえず布類や食器等がほしいので、お金を稼ぎに大量の果実を持ち、リナリクトの町へ戻る事にした。




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