026話 攻略キャラ S
2-5.攻略キャラ S
あ、あぶっ、あぶなっ、危なかった。死ぬかと思った。
まさか爆発が起こるなんて、ちっとも思わなかった。怖い、乙女ゲーム怖い。
俺の前には土で出来た焦げた壁と、周りには光の防御膜が張られていた。土の精霊達と光の精霊達がピースサインとか親指でグーサインとかしている。
あ、ありがとぉおお、精霊達よ!俺と君達は一生の親友だ。大事にするよ!っていうか大事にしてね、俺の事!
周りが分からないほどの煙が、風の精霊によって晴れていく。
土の壁は地面に戻っていき、光の防御膜は薄れて消えて行った。
地面に転がる6個の炭の塊。・・・これってさ、アレだよね?もしかしなくてもアレだよね?
うむ、見なかった事にしよう!偶然、この場所には人の形をした木炭が6個あったとかそういう事にしよう、うん。
「大丈夫ですか?」
まだ呆然としている無視男に話しかける。もう殴るとかいいや、今死にかけたし。なんか面相にもなってきた。
「き、君はいったい何者だ?何故そんな咄嗟に魔法が使える?」
いやいや、さっきのは土と光の精霊達のおかげです。・・・なんて言える訳もなく。
「大丈夫そうですね?とりあえず、さっきまでいた洞窟に戻りましょうか」
俺と無視男、それに無表情な男の子を連れて洞窟へ戻るとしよう。
「はい。では改めまして、あなたは誰ですか?」
俺達は無事に洞窟まで戻って来た。
今は椅子に座り、お茶がないので水を飲んでから休憩して質問開始。
え?しつこい?
いやいや、俺にとっては重要な事よ?
だって、俺の隣りで、俺のおやつをバクバク食べ続けているこの男の子。すっげ~嫌な予感がすんだもん。
「・・・ああ、また助けてもらい礼を言う。そして、すまなかった」
男は立ち上がり、頭を下げた。それよりも早く自己紹介してくれませんかね?俺もまだだけど。
「俺の名前は藤堂 シグマ。こっちの大陸だとシグマ=藤堂か。シグマと呼んでくれ。俺が何者かと言うと、怯えるかもしれんが暗殺業を生業にしている者だ」
うん、知ってるッスよ。その格好どう見ても暗殺者だよね、あんた。
「そして、この子の名前は黒曜 スザク。俺の親友の息子だ」
・・・・・だよね。そうだよね。俺の淡い期待なんて、ヒロイン補正力の前では吹けば飛ぶほどのモンなんだよ。
俺の反応で、勘の良い人は気づいただろう。
そう。この『黒曜 スザク』って男の子。あの乙女ゲームの攻略キャラです。